2022年8月20日

自動運転ではダメなわけ

ブライアン・ウィルソン、80歳。ビーチ・ボーイズの創設メンバーで「グッド・バイブレーションズ」「サーフィン U.S.A」「神のみぞ知る」など、そのほとんどのヒット曲を書いている。

映画「ブライアン・ウィルソン(原題 Brain Wilson: Long Promised Road)」は、その彼に密着したドキュメンタリー映画。雑誌「ローリング・ストーン」の元編集者のJ・ファインがインタビュアーとなり、2人はファインが運転するクルマでかつての録音スタジオやアルバムジャケットの写真撮影場所、その他ウィルソンのゆかりの場所を巡りながら会話を交わす。


誰もが聞いたことのあるビーチ・ボーイズのサウンドがどうやって生まれたのか、サーフィンをしたこともないウィルソンがなぜサーフィンをテーマにした曲を書いたのか、などファンならずとも興味を引く話が本人の口からでてくる。

若き天才ウィルソンがアルバム「サーフィン・サファリ」を出したのは、弱冠20歳のとき。ただ、その反面で彼は精神を病み、やがてドラッグに身を浸していく。長い苦闘の時間ののちに復活して音楽活動を再開。今も仲間たちとバンドで活動している。

インタビューのほとんどは、クルマの中でのやりとりだ。いいシチュエーションを考えたなと感心した。クルマのなかという2人だけの閉ざされた空間。2人は対面するのではなく、目の前に現れる光景を並んで眺めながら話をする。

寡黙なブライアンも車窓に流れる西海岸の方々の風景と、カーステレオから流れる自分たちの音楽を次々に聞きながら昔を思い浮かべ、ときに饒舌に、ときに思いに浸りつつ自分たちの音楽づくりについて、バンドの仲間について、亡くなった弟について語る。

最近だと「プアン」でも主人公2人がクルマでタイの方々を巡りながら車内で語り合うシーンが多用されていた。これらの状況、AIによる自動運転なんかじゃ生まれない空間である。