2021年11月28日

財政破綻に向かう日本

なぜ日本の財政破綻が避けられないのか、以下の記事はとても分かりやすくその理由と現在の日本の状況を説明してくれている。

https://toyokeizai.net/articles/-/471734

一方で、元イェール大学教授の浜田宏一など、有力な経済学者に日本はどれだけ国債を発行しても「理論的に」破綻はしないと以前から説く人たちもいる。 浜田はアベノミクスの理論的支柱でもあった人物で、元内閣官房参与だった。

「日本政府は自国通貨を発行しているので破産することはありません」という彼の一貫した主張に強い疑問を持っていた僕には、慶應大学の木幡による先の説明の方が明らかにスジが通っているように思える。

2021年11月26日

目的もなく誰かと会ってずっと喋っている

作曲家の池辺晋一郎さんが、若かりし頃を思い出してこんなことを話していた。

特に目的もなく、誰かと飲んだりしゃべったりする時間からどれほどの人生の滋養がえられるか。その時には、これが自分を太らせてくれるなんて思いもしないんだけど、少なくとも、僕はそういう世界に育てられてきたんです。

自分が若かったころ、つくづく閑だったと思う。特に学生時代は、大学に行っても教室に向かうわけでなく、近くの喫茶店や部室で誰彼ともなく一緒にほんとにダラダラダラダラ話をしていた。

それが何を自分に残したのか、そんなものがあったのかさえ判然としないが、ただそうした中で自分以外の人間とどう話を合わせていくか、意識しているわけではないが相手をどう理解するかなど考えていたのかも知れない。 

今、そんなことをしている若者を見ることはあまりない。昔ながらの居心地のいい喫茶店が減っているのは一因だろう。以前に比べ、空いた時間を潰す手段もたくさんできた。面と向かって本音を話すより、スマホで書き込んだ方が気楽に思えるからというのもあるだろう。

だから激論になって、思わずテーブルをどんと叩いたり、ましてやコップの水を相手の顔にぶっかけるなんてことはあり得ないんだろうね。(まったく自慢じゃないが、ぼくは昔やったことがある)

先日、駅前のレストランを昼食を取っていたとき、隣のテーブルには若い男女4人組がいて(最初は彼らの存在にすら気づかなかった)、それら4人ともが下を向きスマホをいじっていた。まったく会話がない。いまでは珍しい風景ではないけど、つい「お前ら、せっかくなんだから何か話でもしろよ」 と言ってやりたくなった。

色んなものが薄まってきた。淡泊であっさりも悪くはないが、気持が太る機会がますますなくなっているように思う。

2021年11月22日

市場規模予測はどのくらい信頼できるのか

ニュースの中で日常的に見聞きする市場規模予測。

コンサルティング会社のデロイトによると、世界の顔認証関連の市場規模は25年に85億ドル(約1兆円)となり、20年の38億ドルから倍以上になると予想されている。
今日の新聞紙面からだ。読んだ読者は、へぇ〜とその規模の大きさにちょっと驚いたりするんだろう。だけど、まとなビジネスマンなら、本当はこれってまずは疑ってかかった方がいい。

まず、顔認証関連の、って言われても、何がどこまで関連領域なのかまったく不明だ。だから、その数字の信憑性も不明のはず。

先のことなんかよく分からないんだから、新聞記者ももう少しおずおずと、そしていじいじと語ってくれればそういうもんだと思えるのだけど、こうもしれっと言われると、一般の読者はそうなんだろうと勝手に思い込んでしまう。

その数字をはじき出したのが誰なのか表に出るわけでなく、5年や10年後にその推計がどのくらい当たっていたかなんて誰も気にしないと分かっているから、あっけらかんとしたもんだ。 

少なくとも一応はその数字に至った計算式とその前提があるはず。市場予測を発表するコンサル会社は、それを公表すべきだ。そして、メディアはそうした数字を記事に用いるのであれば、読者がそれを確認できるように参照先サイトをQRコードで示すか、ウェブ上でURLを表記すべきだ。

読者に対するそうした配慮がなされないまま、無根拠としか言えないような市場規模予測がニュースでまかり通っているというお話。

2021年11月21日

南の空に


木星、土星、金星がほぼ一列に並んだ。北緯24度。いつもと星の見え方がこんなに違う。

南の海で

透き通るような海。軽石は漂着していない。

2021年11月20日

マスク顔で人を迎えるということ

飛行機に搭乗したのは、昨年の2月以来のことだ。

早朝、羽田空港で全日空機に乗り込んだ。搭乗機の入口で乗客を迎えてくれるCAと軽く挨拶を交わす。これまでも何度となく行ってることだけど、なんか違う印象が残った。何だろう・・・。

予約した席が後方窓口だったので、そこへ向かう途中にも何人かのCAと挨拶をかわす。そこで気がついた。アイコンタクトの時間が以前と比べて長い。加えて、その時の目に力がこもっている。

コロナ感染対策でCAらも全員マスクをしている状況で、彼女たちが自然にそうするようになったのか、あるいは会社の考えからそう指導されているのか知らないが、マスクで半分以上隠れた顔でお客を迎えるための工夫だ。

2021年11月17日

大学内の研究職名の多さに驚いた

来年4月に、大学の教職員証(IDカード)を一斉に新しくするので写真を提出するようにと人事課から連絡があった。 

彼らの説明によると、2022年3月31日時点で以下の職名で仕事を継続する人は、必ず手続きをするようにとしている。それらは、

教授
准教授
講師(専任)
特任教授
教授(テニュアトラック)
准教授(テニュアトラック)
講師(テニュアトラック)
教授(任期付)
准教授(任期付)
講師(任期付)
助教
助手
特任研究教授
上級研究員
主任研究員
次席研究員
研究助手、だそうだ。

こんなに多種な肩書きが大学内にあったなんて、これまで僕は気がつかなかった。このリストを見ると、たとえば教授といっても種類が5つある。

このヒエラルキーのあり方は、役所内の官僚的序列よりも酷かったりして・・・。以前はこうではなかったように思うのだけど、いつからこうなったんだろう。

2021年11月16日

95年間働き続けるエレベーター

所用で午後から日帰りで京都へ行った。

用件を済ませた後、下鴨神社の近くから四条大橋まで鴨川沿いを歩く。今日は寒くも暑くもなく、川沿いの公園では多くの人々がのんびりと読書したり、散歩を楽しんでいた。

橋のたもとにある東華菜館に初めて入った。目当ては、大正15年(1926年)から動いているエレベータ。米オーティス社製で、95年前に船で運ばれてきた。

動き続くように頻繁にメインテナンスを施していると、エレベータボーイならぬエレベータおじさんが言っていたが、オーティスもよく部品を絶やさないでいると感心する。

東華菜館2階から南座を見下ろす

日本脱出おめでとう

皇族のお嬢さんが結婚し、早々に二人でニューヨークへ渡ったとか。

人ごとながら、よかったと思う。

ニューヨークは楽しいよ。彼の方はマンハッタンにあるロースクールに通っていたらしいから、現地での生活の仕方も分かってるだろうしね。

とにかくNYではみんな勝手に、自由に生きている。それが当たり前、それが自然に行われている。どこかの国のように、つまんないことであれこれヘンな口を挟む人はいない。いても、それは一部の特殊なヘンな人たちだから放っておけば済む。

日本を脱出して、今はさぞ清々した気分に違いない。

2021年11月15日

青木雄二の慧眼

あの『ナニワ金融道』で一世を風靡した異色の漫画家、青木雄二が『僕が最後に言い残したかったこと』(小学館)のなかでこんなことを語っているのを見つけた。

僕が思うに、間違いなくマルクスは復活してくる。多分、最初は西ヨーロッパで、その動きが出てくるでしょう。だけど、さっきも言ったように、日本で最初に復活しても不思議ではない。・・・ 非常にゆっくりと少しずつ、社会主義体制への動きが活発になるはずや。僕は多分、エコロジー関係の問題に絡んでマルクス主義の復活が始まるような気がするで。

青木がこれを語ったのは2003年のこと。斎藤幸平『人新生の「資本論」』(集英社)に先立つこと17年だ。

2021年11月13日

ジェニファー・ハドソンがアレサ・フランクリンに乗り移った『リスペクト』

『リスペクト』は、「ソウルの女王」ことアレサ・フランクリンを描いた作品。3年前に亡くなったアレサをジェニファー・ハドソンが演じているが、とにかく歌唱がすごい。

 
『ドリーム・ガールズ』でも見る者、聞く者を魅了したが、彼女の歌はこの映画ではそれ以上だ。実際、アレサの葬儀で彼女はアレサを悼みながら「アメイジング・グレイス」を歌った。

牧師の娘に生まれ、教会でゴスペルとともに育ったアレサが「神」について歌い、語るとき、無神論者のぼくも一瞬、神の存在を信じたくなったほど。声のちから、歌のちからを今一度思い起こさせられた。

マーティン・ルーサー・キング・ジュニアとの交流や、60年代のアメリカの公民権運動のなかで彼が暗殺されたときのことなども紹介されているのは、BLMの流れが米国で定着してきたことの表れか。

劇中、アレサの父親(デトロイトの有力な牧師)をフォレスト・ウィッテイカーが演じていたが、彼がマーティン・ルーサー・キングJr. が殺されたあと、「多く(の黒人牧師)が彼の後がまを狙っている」と言ったのが妙に記憶に残った。

そうした黒人を巡る当時の世相も織り込みながらということなのだろうが、とにかくそうした時代変革の背景もあってか、60年代から70年代には素晴らしい音楽がたくさん作られたのが分かる。

映画のタイトルにもなった「リスペクト」は、元のオーティス・レディング版とはまったく印象が違うアレサ版ともいえるもの。 フリーダム♪ フリーダム♪ とシャウトするアレサのオリジナルの「シンク」。そしてキャロル・キング作の「ナチュラル・ウーマン」など、どれも素晴らしい。

この映画では、強権的だった父親やマネージャーとして彼女を支配し続けた夫など、多くの男たちからの束縛と抑圧から一人の人間として解き放たれたいと願う一人の黒人女性が描かれている。

2021年11月10日

イノベーションから取り残される日本

ひと月半ほど前になるが、国連の専門機関のひとつWIPO(世界知的所有権機関)がグローバル・イノベーション・インデックス2021年版を発表した。以下がその上位10ヵ国だ。

今年もスイスが1位。日本のお隣の韓国は5位に入っている。米国とアジアからランクインした韓国とシンガポールを除いた7ヵ国は、すべて欧州勢だ。中国は12位。日本はその後塵を拝して13位となっている。

https://www.wipo.int/pressroom/ja/articles/2021/article_0008.html

このランキングがどれだけのことを語っているかという点はあるが、どうも日本は「イノベーション、イノベーション」と誰も彼もが叫ぶ割に、肝心のイノベーションが生まれていない。一体、何が問題なんだろう。

明治維新から150年経っても日本人にタキシードが似合わないように、イノベーションも本来的に日本人に似合わないのか。

2021年11月8日

山崎デルス

『文藝春秋』の巻頭随筆に、「漫画家の母を見つめて」と題された文章が掲載されていた。筆者は、漫画家のヤマザキマリの息子だ。仕事はフリーランスカメラマンとなっている。

ヤマザキが、黒澤明が旧ソ連で制作した映画『デルス・ウザーラ』(1975年公開)に感動して息子にデルスと名付けたと読んだことがある。いい名前だ。

その彼が、母であるヤマザキマリと義理の父のベッピの間で両者を眺め、そのなかから忙しさなどにへこたれず仕事に邁進する母への尊敬の思いを書いている。

何と言っても掲載誌が文藝春秋だから、原稿はおそらくヤマザキマリが事前に読んでチェックしたのかどうかなどと妙なことを気にしながら読んだが、素直な文章は母親譲りなんだろう。

苦労人で、そして才能豊かな母親としてブレイディみかこも忘れてはいけない。「ブルー」という単語はどんな感情を意味するか、という国語の先生の質問に間違った答えを書いてしまったあと、ノートの右隅に「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」と落書きした彼女の息子もきっと面白い書き手になると思っている。

2021年11月7日

「リスキリング」て何だ

またぞろ、ヘンなカタカナ言葉を新聞などで目にするようになった。<リスキリング>という言葉だ。技術、技能を表す英語の名詞 skill がもとになっている。

新聞などで「リスキリング(学び直し)」と書かれているが、どうして「学び直し」じゃダメなのか。

その例としてよく紹介されるのが、米アマゾンの事例だ。同社は、2025年までに米アマゾンの従業員10万人に対しリスキリングすると発表した。一人当たり約75万円の教育投資を行うことで、非技術系人材を技術職に移行させる「アマゾン・テクニカル・アカデミー」、IT系エンジニアがAI等の高度スキルを獲得するための「マシン・ラーニング・ユニバーシティ」などを実施するとしている。

米アマゾン一社だけでも750億円の金が動くわけだから、それを目当てにリスキリングの旗を振り始めた有象無象が現れるわけだ。 

日本では、日立製作所が国内グループ企業の全社員約16万人を対象にDX基礎教育を実施すると発表している。

教育関連企業やコンサルティング会社を中心に、「社長さん! リスキリングに乗り遅れてますよ、おたく」といったセールス・トークが方々でなされているのだろうが、何がどうなればリスキリングとやらが「できた」状態になるのか何も語られておらず、さっぱり分からないのが現状だ。

リスキリングを触れ回っている連中は、どうも「オオカミが来た!」と叫び、ナイーブな日本人を惑わしているだけのように見える。

企業にとって大切なことは、そうした流言飛語と見紛う扇動に容易に乗せられないこと。360度の情報を集めて状況を判断し、自分の頭で何をやるべきか考えること。それができない人たちは、またしてもカモにされて終わるだけである。

だいたいが、事情通を気取ってこうしたカタカナ言葉を振り回す連中にろくな奴はいない。

リスキリング(学び直し)に乗せられようとしている経営者は、まずはリシンキング(考え直し)した方がよいと思うよ、ほんと。

2021年11月2日

ますます硬直化する日本

衆院選の結果、465人の当選者が決定した。それら議員の男女比率は、男性82%に対して女性は18%。年代で見ると、70〜80歳台がまだ9%いる一方で、20〜30歳台はわずか5%しかいない。20代で当選した候補は一人だけだった。

そんな今回の選挙結果を受け、経団連の会長(住友化学社長)は自民党の絶対安定と政策の継続を歓迎したとか。日本の経済界は表層ではいろいろ言っても、結局は社会の変革など何も求めていないのが分かる。

東京都職員とプラカード

先週のこと、地下鉄東西線の大手町駅に「行幸地下ワクチン接種会場はこちら」という表示を持って立っている人がいた。40代半ばくらいの男性で、首から都職員のIDカードをぶら下げている。

何だろ?と思い、それってどこにあるんですか?と訪ねると、丸の内側の地下一帯だという。地下鉄大手町駅は八重洲口だから、東京駅の反対側だ。そこに現在大規模接種会場を設置し、いまなら予約なしでワクチン接種を受けられるという。

僕自身は接種済みなので直接の関係はないが、横浜市に住んでいる学生で自治体による接種をまだ受けられていないと言っていた学生のことを思い出した。なぜ彼が予約をまだ取れないのかよく分からないところがあるのだが、いずれにせよ未接種のままでは周囲にも迷惑をかけることになる。

そこで、会場表示のプラカードを持って立っている都職員に、都外の人間でも受けられるのか尋ねたところ、都内在住か、あるいは都内に勤務じゃないとダメだという。じゃあ、都内の大学に通学している学生はどうなのか聞いたら「さあ」と。分からないらしい。

当然、その場で都庁に電話を入れるなりして確認してくれると思ったら、あっさり「ホームページかなにかで調べてください」と言われてしまった。

大勢の市民が行き交うところにプラカード持って立ってるのだから、もともとそのくらいの情報は持っているのが当然だと思うのだけど。

「自分で調べて」と言うのなら、40男が立っている必要はない。東京都職員の給料は高いんだから。学生バイトに任せなさい。