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2019年6月25日

人々の未来を作る図書館

岩波ホールで上映中の映画「ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス」をやっと観ることができた。都内ではここだけの上映であり、劇場は全席満席だった。

ドキュメンタリーを得意とするフレデリック・ワイズマンの手によるNYPL(New York Public Library)を余すところなく紹介した映画だ。


NYPLは、マンハッタンの40丁目から42丁目にかけて位置している。タイムズスクエアとグランドセントラル駅のほぼ中間あたり。Public(公共)library となっているが、公立の図書館とはちょっと違う。市からの財政支援も受けているが、それと併せて民間からの寄付で運営されている独立法人だ。

図書館の裏は、ブライアント・パーク。これが公園としてまた素晴らしい。夏には芝生の上で映画の上映会なんか開かれていて、在外研究でコロンビア大学に在籍しているときにはよく出かけた。

https://tatsukimura.blogspot.com/2012/07/bryant-park-summer-film-festival.html
https://tatsukimura.blogspot.com/2012/11/blog-post_14.html

NYPLは88の分館を含む全92館の図書館のネットワーク。とにかく日本の図書館では考えられないような「サービス」の数々を実現している。日本のように本を所蔵し、貸し出すだけではない。地域の人たちの学びの場であり、コミュニティの場であり、子供たちの学習の場であり、新しい仕事を探し人生を築いていくための場所。アメリカの民主主義をどこよりも体現している場所といっていいかもしれない。

1911年に竣工されたダウンタウンにある本館の閲覧室は、厳粛な雰囲気を漂わせているが、基本的にはこの図書館はとても市民に対して敷居の低い図書館で、だれもが本当に気軽に日常的に使えるように考えられている。

この映画の中で誰かが言っていた。「図書館は、本についてのものではありません。図書館は本を所蔵するところではありません。図書館は、人についてのものです。人が知識を得るために本が整えられているのです」。簡明にして至言だ。

この図書館を使うためだけにでも、またNYに住んでみたいと思った。

ただ映画は3時間26分と長く、途中で10分の休憩が入る。ひとつひとつの挿話が冗長と感じられるものが多く、少し疲れたのが残念。



2013年3月10日

The Armory Show 2013

毎年3月に開催されるアーモリーショーは、ニューヨーク最大のアート・フェアである。

間近に迫った日本への引っ越し準備の合間を縫って、開催場所のハドソン川沿いの会場である桟橋へ。人気ブログ「ニューヨークの遊び方」(http://nyliberty.exblog.jp/)を書いているりばてぃさんに誘われて出かけてきた。
http://www.thearmoryshow.com/

「ピカソからポロックまで」の通り、モダンとコンテンポラリーに渡る多彩なコレクションが展示されている。出展は世界中の著名なギャラリーで、そこで作品の販売が行われる。日本からも Galerie Sho などが出展していた。


ウォーホル
奈良美智の「Doggy Radio」。喉の下を撫でてやると音量が変化するしかけ 

2013年3月4日

自転車を鉄道に載せて運ぶ

NYでの在外研究期間を終えて日本へ帰国する日が近づいて来た。急いで身の回りのものを片付けなければならない。

日本に持って帰るもの、当地で処分するもの、誰かに譲るもの。このなかで一番手間がかかるのが、誰かに譲るものだ。

今朝は、自転車をクイーンズ地区に住む友人のところに朝食をご馳走になりがてら持っていった。朝5時に起床。5時半に地下鉄に乗り込む。日曜日の早朝ということで車両は空いていて、周りに気兼ねすることなく自転車を運び込める。

ミッドタウンのペン・ステーション(Penn Station)でロングアイランド鉄道(LIRR)に乗り換える。

地下鉄は自転車の持ち込みは無料だけど、鉄道は持ち込み料が5ドルかかる。しかも、一つの車両に積み込みが許されているのは1台だけ。自転車を持った先客がいると、他の可能な車両を探さなければならない。それを懸念して、今朝は思い切って早起きして乗り込んだのだけど、こちらも車内はがら空きだった。

LIRRの車両に載せたバイク

学生時代、サイクリング・クラブに入っていた友人が、日本では鉄道で自転車を運ぶ時は分解した上で輪行袋という専用の袋に入れなければ車両に持ち込めないと言っていた。その後も日本では電車に自転車をそのまま持ち込んでいる人を見たことはないから、そうした規則は今も生きているんだろう、きっと。

ニューヨークに住んでいるからといって、決して何でもかんでも米国の方がいいと思っているわけではない。しかし、基本の発想の部分で日米が大きくことなっていることを、この1年間で痛感させられた。

米国には、基本のところで国民がやりたいと思うことが最大限認められる社会が理想だという基本理念がある。一方で、日本は最初から何でもやっちゃいけないことばかりで、その後どこまで許してやるかを役人が裁量で決めていく社会になっている。だから秩序が守られていて社会は安定しているけど・・・新しいことが生まれない。

謂わば、米国は国民のために作られた自由型社会で、日本は役人のために作られた規制型社会。これは思考のパースペクティブの点で、空を自由に飛ぶ鳥と地面をもぐって進むモグラくらいの違いがある。

この数十年間を見て、日本でアメリカのようにイノベーションが(結果として)生まれない理由は、これでかなりの部分が説明できる。

日本人がイノベーティブではないということではない。ましてやDNAの問題ではない。人を取り巻く世の中の環境が問題なのである。

その証拠に、日本が太平洋戦争で敗戦し、それまでの軍国主義がアメリカ式の民主主義に移行し始め、財閥が解体され、それまでの権威者たちが肩書きを剥ぎ取られ、新しい秩序が生まれつつあった混沌の時代には、後のソニーやホンダが生まれている。

どうも我々は、食うや食わずの状況に追いやられて初めて、根本的なところの力が出てくるようだ。

2013年2月21日

グッゲンハイム美術館でのGutai(具体)展

久しぶりにグッゲンハイム美術館へ行ってみた。本当の目当ては、そのすぐ近くにあるクーパーヒューイット国立デザイン美術館だったのだけど、行ってみたらそこは改装中で閉館されていて・・・。

 
グッゲンハイムでは、特別展として Gutai: Splendid Playground が開催されていた。
http://www.guggenheim.org/new-york/exhibitions/on-view/gutai-splendid-playground

1952年から1974年まで芦屋や大阪を中心として活動していた前衛美術集団である具体美術協会の活動内容を取り上げたものである。ここで紹介されている作家で元々知っていたのは元永定正だけだったけど、この集団の奇想天外な発想と思い切りのいい表現にはついうれしくなり、作品を見てて何度も声を出して笑ってしまった。

偶然かどうか知らないが、時を同じくしてニューヨークにある世界的な2つの現代美術を主に扱うミュージアムが、戦後ほとんど同じ時期に活動した関東と関西のアバンギャルド集団をテーマに特別展を開催している。
http://tatsukimura.blogspot.com/2013/02/tokyo-19551970-new-avant-garde.html

帰りしなに寄ったミュージアム・ショップで現代美術家、堀尾貞治の作品集「Sadaharu Horio」(Vervoordt Foundation)を見つけた。50ドルしたが、迷わず買って帰る。これも今日の収穫。

美術館内のトイレ(3階と4階)


2013年2月20日

ユニット WORLD ORDER

日本の知り合いが「こんなのあるよ」と、須藤元気の WORLD ORDER in New York のYouTubeサイトを教えてくれた。

その際、「ニューヨークの街で見かけた?」とか聞かれたけど、、、、ねえ。



いま日本では、子どもたちが学校であの歩き方をみんなで真似してんじゃないかなあ。

WORLD ORDER "2012" のプロモーションビデオは、メキシコシティが舞台になっている。


今年の1月に訪ねたテオティワカン遺跡や宿泊したホテル周辺の風景が出てきて懐かしい。
http://tatsukimura.blogspot.com/2013/01/blog-post_7.html


2013年2月10日

体はアタマ

昨晩からの雪が積もりに積もった朝だった。このところ、米国北東部は雪に見舞われることが多い。

路肩で雪をかぶったまま放置された車

今日の午後、国連ビルの近くにあるジャパン・ソサエティで劇作家の平田オリザによるワークショップがあった。興味半分で出かけた。参加者用のチケットはすでに売り切れなので、僕が手にしているのは見学者用のチケットだ。

初めて集まった集団をどうやって一つにまとめるか、メンバー間に共感を生み出すか、自然なコミュニケーションが行き渡るようにするか。自分を他者(たち)との関係性の中でどう表現するかというコミュニケーション(デザイン)の構築を目的にした練習が多かった。彼が用いている手法は、大学でも応用できそうな感じだ。

何年か前、劇団「第三舞台」が行うワークショップに参加したことがある。そちらは、役者がどう脚本を読み、役作りをするかを狙いにしたものだった。

僕たち大学人がやっている仕事は、あまり身体を使わない。しかし、知性というのは頭から生まれてくるだけではなく、体からも生まれてくると思っている。正しくは体がなんとなく発見し、頭がやがてそれに気づき言語化する、という感じだ。そう、体はアタマなのだ。僕が旅をする目的のひとつは、そのもう一つのアタマに考えるきっかけを与えてやることだと考えている。

2013年2月7日

Tokyo 1955–1970: A New Avant-Garde

MoMA(ニューヨーク近代美術館)の最上階、特設会場で Tokyo 1955–1970: A New Avant-Gardeと題したエキシビションが開催されている。

日本が戦後から復興、再生を目指し馬車馬のようにかけ始めていた時代、熱気が溢れかつ混沌とした世の中でさまざまなアートのうねりが誕生していった。静かな今では、その勢いは創造もつかないほどだ。アートが時代に一撃を加え続けた15年である。

いろんな運動に赤瀬川原平が登場する。今さらながら、彼のアーティストとしての影響力の大きさを感じる。
http://www.moma.org/visit/calendar/exhibitions/1242


 
2階にThe Yoshiko and Akio Morita Media Galleryと名づけられたギャラリーがあることを今日まで知らなかった。ここで現在、Performing Histories (1) という展示会が行われていた。

作品<<作品と私>>

2013年1月28日

Geechee Dan、72歳

彼は、いつもニューヨークの地下鉄42丁目駅(タイムズスクエア)のプラットフォームで歌っている。

駅のホームで歌うのは、もっぱら古いR&Bの曲。その心を打つ歌声に、通りすがりの多くの客が足を止めて聞き惚れる。昔は歌手としてハーレムのコットンクラブなどでも歌っていたらしい。

商売道具のアンプとスピーカーをカートに積んで週に7日、ハーレムからやって来る。BGMは、今ではなつかしいソニーのディスクマンから鳴らしている。

少ない日でもチップは150ドルくらいになるらしい。(YouTubeのタイトルはホームレスとなっているが、彼はホームレスではない)

日本の地下鉄にもしこうしたおじさんがいると、みんなびっくりするだろうなあ。

だけど、その見事な歌声にみんなが肝をつぶす前に、駅員たちから追い払わらわれてしまうのだろうけど。

2013年1月27日

セントラルパークが凍った



セントラルパークにある"The Lake"と呼ばれる池(湖)が完全に凍り付いていた。で、多くの人がその上を歩いて渡っていた。僕も渡ってやろうと池に降りて真ん中に向かって歩き始めたら、後ろから大声で "Off the ice!(氷から降りなさい)" と警官に注意された。

池全面が凍ってはいるが氷の厚みは6センチほどで、その下の水は対流しているので割れるかもしれないらしい。昔は自然のスケートリンクとして使われていたと教えてくれた。温暖化のせいで、今はもうそうはいかないらしい。

2013年1月23日

NYの寒さ

夜の9時頃までコロンビア大学の図書館で作業し、帰りの支度をして建物を出たところで凍り付いてしまった。ビル風のせいもあるのだろうが、ハドソン川方面から吹いてくる寒風に鼻と耳がちぎれそうになる。

手袋とマフラーはしていたが、それだけではだめだ。防寒用の帽子がなければやってられない。今日は、日中の最高気温がマイナス5度。天気予報によれば、明日は最高気温がマイナス7度、最低気温がマイナス13度だそうだ。

以前NYに住んでいたことがあるHとYから、日本を出る前に「ニューヨークじゃマイナス20度くらいになる日も珍しくないから気を付けてね」と言われたのを思い出した。

2013年1月2日

Kindle Paperwhite

12月31日に、アマゾン・ドットコムからキンドル・ペーパーホワイトがニューヨークのアパートに届いた。キンドル・ファイヤーHDとどちらにしようかと考えた末、主要用途とバッテリーの持ちを考えてペーパーホワイトにした。初代のキンドルに次いで、これが2台目である。

日本国内で販売されている同機の3G接続対応モデルは日本国内のみの対応なのに対し、米国内で販売されているモデルは世界中で3Gが無料で使える。その違いなのか米国内モデルの方が値段が高かったが、海外でも使える方がよいと思いこちらにした。


まず、アマゾンのキンドルサイトで、日本に置いてきた初代キンドルのライブラリーとデータを同期する。とてもスムーズで、あっという間に終わる。

本体は軽く、持ちやすく、そしてEインクは読みやすい。ベッドに寝転がったり、トイレで読んだり、お風呂に浸かりながら使ってみたが、いい感じだ。ただし、電源スイッチは下ではなく上の方に付けた方がよかった。

日本のアマゾンのサイトで、W・アイザックソンの『スティーブ・ジョブズ』をダウンロードしてみた。こちらもあっという間である。

但し、キンドル版の書籍の値段がスゴク高い! 2分冊で、それぞれが1,995円、両方で3,990円。日本語版のハードカバー書と同じ値段だ。ソフトカバー書なら、一冊1,050円である。原著は分冊になってはおらず、価格はハードカバーで18.8ドルしかしない。

日本のアマゾンのサイトでは、わざわざ価格のところに「出版社によって設定された価格です」と表示してある。


講談社のような影響力の大きな出版社は、いまもって顧客の事より書店に対する配慮が欠かせないのか。それとも、版元(Simon & Schuster)との取り決めでもあるのだろうか。アマゾンへのコミッション以外はほとんど限界費用がかからないのだから、もっと安くしてもらいたいものだ。

2012年12月14日

12-12-12: The Concert for Sandy Relief

昨晩、マジソン・スクエア・ガーデンでハリケーン・サンディの被災者のための募金を目的とした、12-12-12: The Concert for Sandy Reliefという名のコンサートが開催された。


7時半にブルース・スプリングスティーン&Eストリートバンドの演奏で開幕され、ジョン・ボンジョビ、ビリー・ジョエル、ローリング・ストーンズ、エリック・クラプトン、ザ・フー、ピンクフロイドのロジャー・ウォーターズ、コールドプレイのクリス・マーティン、とりはポール・マッカートニー、そしてアリシア・キーという顔ぶれ。

New York Times紙の記事から

ミック・ジャガーはコンサート前の取材に「こんなに大勢の年配の英国人ミュージシャンを集めたコンサートはなかったよ。もしロンドンが台風に襲われたら、君らは助けに来てくれなくちゃね」と冗談交じりに答えている。

コンサートが終わったのは、午前1時20分頃。6時間近く続いた長いコンサートだった。僕はテレビで見ていたが(チケットはプレミアムがつき、すごい高額になっていた)、会場に集まった観客も大変だったろう。あと、マンハッタン内のいくつかの映画館が映像を生で流した。入館料は無料にしていた。

このコンサートは、米国内だけで37局、世界中で200局ほどのテレビ局で放映された。(日本ではどうだったのだろう?) 視聴者は全世界で約20億人と見積もられている。当日の会場入場のチケット代だけで30億円の収入(募金)があった。放映中ずっと画面には募金への呼びかけが流れていた。最終的にどれくらいの募金が集まるか・・・。

ポール

2012年12月11日

オープン・ランチセミナー『選択の科学』

今日、コロンビア・ビジネススクールでシーナ・アイエンガー教授を招いてのランチセミナーがあった。テーマは、Global Leadership Challenge for Japanese Companies。

彼女は90年代の半ば、京都大学で動機づけについて研究していた時期があり、日本についてもそれなりによく知っている感じだった。

彼女が2年前に出版したThe Art of Choosing は『選択の科学』の邦題で文藝春秋から翻訳が出ているし、またNHKの番組によっても彼女は日本人によく知られている。そのせいか、教室はほぼ一杯に埋まり、その約7割は日本人だった。

米国人の参加者は、以前日本で勤務をしていたことがあるビジネスマンなどが多かったが、彼女の研究分野についてはほとんどしらないまま、セミナーのテーマにひかれてやってきた連中が多かった。質疑応答で、今度の衆院選の結果がどうなるかなど彼女に聞いても答えられるわけがないのに。

ところで、先々週の金曜日、早朝のコロンビア大学のキャンパスで彼女とすれちがった。金曜日には補講や特別なプログラムを除き、授業は組まれていない。だから、その朝のキャンパスは人出が少なく、とても静かだった。

白杖を頼りにする彼女は、まるで周りの空気を振るわせないよう注意しているかのようにとても静かに歩いていた。その朝はかなり寒かったせいか、彼女はフード付きのコートですっぽりと頭を覆っていた。注意しないと彼女だと誰にも分からないかのように。だからその時は気がつかなかったのだけど、今日見ると、彼女の耳がとても大きいことに気がついた。(なぜか最近、耳が大きい人が気になる)

セミナーで彼女の話を聞いていて感じたのは、とても聡明で、ユーモアがあり、そして何よりも正直な人だと云うこと。知らないことは、知らないと言う。分からないことは、分からないと返答する。飾らないのである。飾っても仕方ないことを経験的によく知っているのだろう。

彼女の先の本の中に、自分が光を失ったときのことにふれて、「失明に立ち向かうことで、わたしは強い精神力を身につけたに違いない(それとも持ち前の精神力のおかげで、うまく立ち向かうことができたのだろうか?)」というくだりがある。

彼女が、質問に対して "I don't know." と、少し困ったような感じで、しかしはっきりと答えるのを聞いていてその言葉を思い出した。


2012年12月8日

真夜中のカーボーイ

リンカーンセンター内の劇場で『真夜中のカーボーイ』を観る機会があった。

公開されたのは1969年。40年以上むかし。60年代終わりから70年代にかけて作られたアメリカン・ニューシネマと呼ばれる作品の一つで、学生時代に高田馬場にある早稲田松竹で観たのが最初だったと記憶している。

監督のジョン・シュレジンジャーが英国人だということは、今日まで知らなかった。てっきり米国人と勝手に思い込んでいた。そう考えてみると、どこか Englishman in New York の視点で描かれているような気がしてくる。

ニューヨークを舞台にしていながらエンパイヤステート・ビルのショットやセントラクパークを映した場面などは登場しない。マンハッタンを上から見下ろした空撮など一つもない。ニューヨークという街に対する共感の度合いが低いのである。

ゲイの中年男性や売春婦、マリワナパーティなどの風俗も描かれているが、英国人であるシュレジンジャーがその当時のニューヨーク、あるいはアメリカに見たのは、社会の底辺で喘ぐ下層階層と中産階級の対比だったのではないかと思った。自由の国アメリカは、英国と変わらぬ階層社会だったわけだ。

この映画のなかでもっとも気持ち悪かったのは、ラストの場面で主人公の2人がマイアミ行きのバスの中で乗り合わせる、他のアメリカ人乗客たちである。異端者に向ける冷ややかで醒めた視線が、映画が撮影された当時のアメリカの一般的な「世間」なのかどうか分からないけど、シュレジンジャーにはそう写ったのだろう。


2012年11月26日

サックスの壁面ディスプレイ

五番街にある老舗百貨店、サックス・フィフスアベニューの正面側の壁面一面にクリスマス・シーズンらしい映像が映し出されていた。友人と夕食のレストランに向かう途中、思わず見上げてしまった。


2012年11月24日

クリスマス・シーズンの始まり

僕は、朝9時までに大学に到着するようアパートを出ることにしているのだけど、ロビーで今朝出かけしなに見た感謝祭の飾り付けが、夕方帰ってきたらクリスマス・ツリーに変わっていた。


ニューヨークの街は、これからクリスマス一色になる。

2012年11月23日

Thanksgiving Dayのパレード

11月第四木曜日は、米国の感謝祭の日で国民の休日である。ニューヨークでは、百貨店のメーシーズがスポンサーとなった巨大なバルーンを中心としたパレードが多くの人を集めた。

この日は、朝早くからパレードの会場となったセントラルパーク・ウエストとブロードウェイは身動きができないほどの人で賑わいを見せる。

僕はまず、59丁目のコロンバスサークルへ地下鉄で出かけてみたが、地上への出口の多くは閉鎖されている。なんとか人をかき分けながら地上に出るが、規制が引かれていて近くへ行くことができない。そこで、また地下鉄に潜り、今度はパレードの終点である34丁目へ。ここでもまた、すごい人出。

パレード終点の34丁目周辺の賑わい
セガのキャラクター、Sonic the Hedgehog
The Pillsbury Doughboy
出番を待つ大カメ?

2012年11月22日

ボブ・ディランのコンサート

今年9月にオープンしたブルックリンのBarclays Centerで、ボブ・ディランとマーク・ノップラーのコンサートがあった。この巨大な建物は、コンサート仕様で1万9千人を収容できる。中は、日本武道館をある一方向に引き伸ばしたような感じである。

開演前の館内の様子。


コンサートは当初午後8時開演の予定だったのだけど、一週間ほど前に7時半に変更になったという連絡がメールと電話であった。

マーク・ノップラーの演奏で幕が開き、休憩を挟んでボブ・ディランのコンサートに。その間、ディランが観客に話をしたのは、エンディング間近にバンド・メンバーの紹介をした時だけ。それ以外は、何も話さなかった。何曲かステージ中央で歌った以外は、上手側のピアノに向かったまま淡々と歌い続けた。

肉眼では米粒ほどの大きさのディランの顔を、オペラグラスで眺めていた。これほど広い会場だと、多くのコンサートはステージの両脇か上にスクリーンを設置して、ステージ上の手持ちカメラが捉えたアーティストのアップ映像を映し出すのだが、そうした趣向はなし。ディランなら、「俺はミック(ジャガー)とは違う」と言うのかもしれない。

コンサートが終了したのは午後11時過ぎ。帰宅した時には、日付けが変わっていた。

それにしても、ロックミュージシャンは息が長い。ボブ・ディランは71歳である。ニール・ヤングとピート・タウンゼントは67歳、スティーブン・タイラーは64歳、そしてミック・ジャガーは69歳でキース・リチャーズも12月で69歳になる。いずれも老いてますます、ではないが、ロックの精神をそのままに、年輪を重ねた他に真似のできない味を醸し出していることに敬服。

2012年11月14日

冬の風物詩

今月初めの頃から、ニューヨーク市立図書館裏のブライアントパークがスケートリンクに変わった。滑走料は無料。靴を10ドルで借りれば、誰でも滑ることができる。


NYの書店では犬もすっかり自由だ

午後、調査の打合せでグラマシー(おおよそ南北は18丁目から21丁目のあいだ、東西は3番街とパークアベニューのあいだ)と呼ばれているエリアへ。そのあと、ユニオン・スクエアの本屋、バーンズ&ノーブルを覗いた。

店の2階へ上がると、売場のインフォメーション・カウンターのすぐ前にいきなりゴールデン・レトリーバーが一匹、ドンと寝っ転がっていた。

実に気持ちよさそうに寝ている。飼い主は・・・たぶん、店内のどこかにいるのだろう。

時折、犬好きの客が寄ってきてからだを撫でると、眠たそうな目を少しだけ開けて振り返り、また眠りに入る。

店員も含めて誰もがそのまま放ったらかしにしてやっているのがいい。