2020年9月17日

徐々に、徐々に、なんだろうけど

関西へ取材を兼ねて出張してきた。

まだまだ新幹線で移動する人が少ないので、そのメリットを生かしての移動である。Go To 何とかを使ったわけではないが、それでも宿泊料は驚くほど安い。ホテルが気の毒になるくらいだ。

夕食後、京都市内の四条通りを歩いたところ、まだ9時前だというのに人の流れがとても少ない。


スターバックスもこの通り閑散としている。

2020年9月13日

大坂なおみがUSオープンで優勝

素晴らしい試合だった。コロナ禍で観客がいないなか、また Black lives matter の声が社会で高まるなか「自分はアスリートである前にひとりの黒人女性です」と語り、7回の試合ではそれぞれ、ジョージ・フロイド氏ら警官によって命を奪われた犠牲者の名前を白く抜いた黒地のマスクを披露した。

もちろんそうしたメッセージの確かさと力強さだけでなく、肝心の毎回のプレーも目を見張るものだった。

何年か前は、大坂といえばゲームの最中に精神的に不安定になり、コーチがまるで子どもをなだめるかのように話しかけているシーンがたびたび見られた。彼女は、まだ10代だったはず。

おそらく当時は(今もそうかもしれないが)、周囲の大人たちの駒として動かされていた苛立ちや不安が強かったのだろうと想像する。

まだ22歳だが、外から見ていても本当に成長したのが分かる。

「ニュースからの情報ばかりにならないようにして、自分の考えをつくるように心がけている」
https://www.afpbb.com/articles/-/3304344




2020年9月10日

日本企業は、ここでもまた失敗する

「日本企業が「ジョブ型」の雇用制度の導入に動き出した」で始まる新聞記事を目にした。
「ジョブ型」には括弧が付けられている。強調のしるしだ。こうやってメディアは自分たちの新たなネタを作っていく。
ここでいうジョブ型雇用は、考え方として目新しいものでも何でもない。旧来の日本型の雇用形態とされてきた新卒の一括採用、終身雇用、年功序列とは異なる企業と個人との関係のことだ。ほとんどの外資系企業は、何十年前からそれが当たり前だ。
記事の中にこんな一節があった。
全社員のジョブ型雇用への移行を目指す富士通。総務部門はジョブディスクリプション(職務記述書)と呼ばれる文書の作成に追われている。
これを読んで、残念だが富士通は彼らの考えてるジョブ型への移行は間違いなく失敗するだろうと思った。
それはなぜか? 理由は簡単だ。まず、総務部門がやる仕事ではないのだよ。次に、全社員のジョブディスクリプションをいきなり整える必要性がどこにあるのか?
それぞれのポジションにおける必要な職務内容は、その上司であるマネージャーやディレクターしか分からない。例えば、同じ企業のマーケティング・マネジャーでも、担当する事業(ビジネスユニット)によって求められるジョブ・ディスクリプションは個々に違う。
そうしたことを総務部門が事務的に作文したからといって、ほとんど意味をなさない。
また全社員のジョブ・ディスクリプションを一気に整えようと考えるのも間違っている。採用や評価の方法を変えず、一括で新入社員として採用した人たちの各配属セクションにおけるジョブ・ディスクリプションを作ったからといって何になるのだ。
ピントがずれている。

2020年9月4日

大学はいつまで閉じこもるのか

武漢型肺炎の感染拡大防止を目的に、いまだに大学の封鎖が解けない。
今は夏休みだが、休みが明けた後の秋学期も我々のところは基本的にオンラインで授業をやってくれと言われている。
一つには感染拡大初期に、京都産業大学で感染者クラスターが発生したことが原因だ。メディアで広く報道され、一説では大学に多くの非難が殺到したらしい(大学にどうしろと言うのだろう?)。
また、そのことで京都産業大学の学生を就職説明会や採用面接から意図的に外すという企業があったらしい。大学でそうした感染者が出たからといって全ての学生が感染してるわけではない。そうした企業の姿勢は、明らかな差別行為である。
感染者が出たことで大学が世間にさらされるのなら、それを理由に学生の採用を差別した企業ははっきりその名を社会に公表されてしかるべきだろう。
ところで、感染者に占める死亡者の割合をみると、年代別に大きな違いがあることが分かる。
https://www.mhlw.go.jp/content/10906000/000647797.pdf

70代以上は6%だが、10代や20代は統計データ上は0.0%だ。これは割合では感染者1000人中1人もいないことを示している。

一方、気をつけなきゃいけないのは60代、70代だ。つまり、大学が三密とやらを避けることで感染拡大防止を謳うのは学生のためではなく、そこに勤務する年配の教授らへの感染リスクを避けるのが目的じゃないのかね。
幼稚園や小学校、中学校、高校がすでに生徒たちに登校させているにもかかわらず、大学は一体いつまでこんなヘタレを続けるのだろう。何か起こった時に問われる責任を負いたくないと考えているだけとしか思えない。
現に.実験や実習をともなう授業は従来どおり大学内ですでに再開されているではないか。実験や実習科目はいいのに、講義科目はダメという理屈が分からない。理系の学生たちは文系の学生に比べて免疫力に優れているので感染しない、感染しても重症化しないという秘密のデータでもあるのだろうか。

2020年9月2日

印税の小切手から日本の銀行について考える

外国から郵便物が届いた。開けてみると、ポンド建ての小切手が入っていた。
英国の出版社(Routledge)から出した本の印税の支払いである。金額は大したことがないが、突然やってきた臨時収入には少しうれしくなる。
問題はその小切手をどう国内で換金、現金化するかだ。とりあえず自分が口座を持つ都市銀行に電話してみた。三菱なんとか銀行と三井なんたら銀行だ。
だがどちらも外貨建ての小切手は、今は取り扱ってないらしい。本店に持っていったら何とかしてくれそうか一応尋ねてみたが、本店でも取り扱ってないという。

じゃあこうした小切手はどうやって現金化したらいいのが聞いてみたが、どちらの銀行も「他行の事はわかりません。ご自分でお調べください」とつれない。

間違ってても構わないから、あなたの銀行員としての知識で何か顧客にアドバイスできることはないのかと少しだけ食らいついたが「間違ったことをお伝えすると、お客様にご迷惑をおかけすることになりますから」と型通りの返答。それしかできないのであれば、人間よりAIの方がまし。
ところでネットで見たら、2018年あたりから日本の銀行は外貨小切手を受け付けなくなっている。マネー・ロンダリング防止が目的らしい。ということは、金融庁からの指示なのだろう。僕の場合、マネー・ロンダリングもへったくれもない小遣い程度の金額なのに、なんだか不条理だ。
どうしたらいいか途方に暮れる。小切手を見ると、金額の上のところに発行元としてBNP Paribas London と書いてあるので、試しにBNPパリバ銀行の東京支店に電話してみた。
だがその東京支社は法人相手のビジネスをやってるだけで、個人客との取引は何もしておらずどうしていいかわからないらしい。ここでも何かアドバイスはないのかと尋ねてみたのだが、そうしたら「発行元の当行ロンドン支店に連絡してみてはいかがでしょう」と言われた。
一瞬言葉につまったが、ひょっとしてそれもありかな〜と思って、じゃあ貴行のロンドン支店の連絡先を教えて欲しいと尋ねたら、わからないからご自分で調べてくださいと言われた。あちゃー。
銀行ってのは、まったくどいつもこいつもって感じだナ。今度外国に行った時に換金するしかないのかなと思いつつ、BNPパリバの人が「通常、小切手の有効期間は6ヵ月です」と言っていたの思い出してちょっと暗い気分になった。

2020年9月1日

ヤマザキマリとブレイディみかこ

いま、書いたものがすこぶる面白いと思う書き手が2人いる。ヤマザキマリとブレイディみかこである。2人とも日本を飛び出して外国で彼の地のパートナーと暮らし、家族や周りの人たちと生活をするなかで書いている。ヤマザキの場合は、描いているというべきか。
1967年生まれのヤマザキマリは絵画を学ぶためにイタリアに渡った。1965年生まれのブレイディみかこは、ブリティッシュ・ロックに憧れて英国に向かった。ともに自由な精神を持ち、それぞれ絵画や音楽にとどまらない幅広い興味関心の域を持っている。
観察が鋭く、少なくとも一般的な日本人とはちょっと違う独特なものの見方や考え方を持つ彼女らの柔軟な発想にはっとさせられる。2人とも決してエリート的な教育を受けているわけではないが、その豊かで柔軟な知性は素晴らしい。
彼女らの他にも日本を出て、外国の地で日本や日本人について書いてる人はたくさんいる。 多くは行った先の社会にしっかり浸り、その国(例えば米国やドイツ)は本当にすばらしい、それに引き替え日本という国はどうして…といった論調で今自分が暮らす国を手放しで礼賛するか、あるいは逆に外国に来て日本のことをあらためて見直し、日本って国はなんてホントに素晴らしいんでしょう、とばかり日本を盲目的に礼賛しつつ、自分が暮らす国に厳しい批判の目を向けるかのどちらか。
そのどちらも、外国の地で暮らしてる日本人の心情を思うと理解できなくもないが、そうしたものの見方は多くが片手落ちである。
それに対してヤマザキマリもブレイディみかこも、とてもバランス感覚に優れ、相対的にかつ広い視点から物事を見てる点に感心させられる。そうした彼女らの先輩とも言うべき存在が塩野七生かもしれない。
異文化の中で日本と外国の両者の違いを柔らかな目で見て、そして表現力豊かにそこでのできごとや感じたことを書くことができるのは、なぜみんな女性なんだろう。