2022年8月19日

顔写真入りの社説

新聞の社説欄に顔写真が挿入されていた。同紙の一面にもまったく同じ写真(こちらはカラー)が掲載され、それには「高橋治之容疑者」のキャプションがついている。


東京五輪・パラリンピック組織委員会の元理事が、受託収賄罪(7年以下の懲役)で逮捕された件だ。

やっぱりそうだったんだろうなと、大会組織委員会にはまったく縁のない僕ですら想像していた。先の五輪は噂にたがわず、不正な金まみれだったことがほぼ確定したようなものだ。

だとすると、あの年を何年にも跨いだ大騒ぎは我々にとって何だったんだろうと振り返らざるを得ない。もう終わったんだからいいじゃないか、と日本人らしさ全開で済ましてはならない。

オリンピックという誰もが知る世界最大の「お祭り」を利用して巨大なブラックボックスの中で一部の特権的な人間が金と欲を思う存分に啜っていた、その姿に気分が悪くなる。

有象無象のコネと政治力を盾に、まともなビジネスとはほど遠い傍若無人の金の儲け方をしていた広告代理店の存在が、昭和から続く日本の構造的腐敗臭を漂わせている。

そして、大会スポンサーとなった大手紳士服メーカーは、本来は企業のブランド価値を高めたかったのだろうが、前会長の贈賄容疑で世間からの信用は地に落ちた。巨額をかけ、労力をかけ、確かにAOKIという会社名は日本国中に知られることになったが、その結果、売上や利益が今後どうなるかはやがて分かるはずだ。

とまれ、大会後、こうして司直の手が入るまで事が公にならなかったのは、それを「見て見ぬ振りをする」のが周りの官僚やサラリーマンにとって常識になっていたことを示している。

ということは、またどこかで(これまで以上に巧妙に)同様のことがこの国では行われ続けるのだろう。