昨年日本で公開された「アンゼルム 傷ついた世界の芸術家」は、戦後ドイツを代表する芸術家であるアンゼルム・キーファーを主人公とした、ヴィム・ヴェンダース監督によるドキュメンタリー映画だった。
1945年生まれ、今年80歳になるこの芸術家を、僕はその時まで知らなかった。
この映画を観て一番印象に残っているのは、パリの郊外にあるという彼のアトリエ。まるでジャンボ・ジェット機の格納庫を思わせるような巨大な空間におびただしい数の作品が収納されいて、キーファーがそのなかを自転車で悠然と動き回るシーンがおもしろかった。
ヴィム・ヴェンダースが製作した映画ということもあり、以降、キーファーにも興味を持っていたところ、京都の二条城で彼の展覧会が開催されていることを知った。
会場に足を踏み入れて、まず最初に目に飛び込んできたのは、彼の代表作の一つである、例の「翼」。
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二条城の空間に不思議とマッチしている |
ほぼ想像していた通りの大きさに嬉しくなる。今回、展覧会に足を運んだのは彼の作品の実際の大きさとそれぞれの作品の質感を確かめたかったから。
だが、それ以外の作品はといえば、個々のものはそれぞれ興味深かったのだけど、残念ながら展示作品の点数が限られていて、その少ない点数を「二条城」という別の作品で補っている展覧会という感じだ。
ところで建物の中には靴を脱いで上がるわけだが、展示作品を見ていた連れが会場スタッフに声を掛けられた。
ストッキングと裸足はダメで、スリッパを履いてもらうことになっていると言う。彼女がチケットを購入したホームページの注意書きにはそうした文言はなかったと返したら、先ほどチケット窓口でそう伝えてあるはずだと言う。
チケット窓口に並んだのは僕だから、ストッキングのことなんか言われても当然ながら知った事じゃない。右から左だ。
これは、建物のなかでは帽子を取ってくれ、というような事とは違う。ストッキングがダメなら靴下を履いてくるように事前にサイトで注意を促しておくべきだが、そうしたことがなされてなかった。
結局、建物からいったん出て、外に設えられた売店でスリッパを買わされることになった。これはやり方が間違っている。万が一、ストッキングの女性に対してスリッパを履くことを求めるのであれば運営側が用意したものをそこで差し出すべき。主催者の極めてお粗末な運営をうかがわせた。
展覧会のあとは、キーファーの作品からふと連想した銀閣寺を訪ねた。断続的に雨が降り続いていたが、そのためか思ったほどの人はおらず、広い境内をゆっくり回ることができたのが良かった。
雨に濡れた緑のなかの観音殿(銀閣) |