昨年一月、韓国の釜山空港で航空機が炎上した。その原因として、モバイルバッテリーが出火元だった可能性が指摘された。
そうしたこともあってか、国土交通省が旅客機に持ち込めるモバイルバッテリーに規制をかけることにした。持ち込みは一人2個まで、スマホやラップトップへの機内での充電は禁止するという。
確かに発火リスクがあるのなら、しょうがない。僕だって機内で火だるまになったり、機体もろとも墜落はしたくない。
だが規制に先だって政府にはやってほしいことがある。これまで発生したモバイルバッテリーの発火事故について、その原因になった製品のメーカー名とモデルを発表してほしい。
最近ではほとんど聞くことはないが、もし家電製品が何らかの理由で発火する事故があれば、必ずその製品のメーカー名やブランド名が発表され、メディアで広く公表される。
ところが今回の肝心のモバイルバッテリーはどのメーカーのどういった(どのくらいの容量の)ものかなど一切公表されていない。
実は昨日、iPhoneのバッテリーを新しくした。6年ほど前に買った機種で、バッテリーの最大容量が80%を切っていたので交換と相成った。
iPhoneのバッテリー交換は自分ではできないから、業者に頼むことになる。依頼先の候補は3つで、アップルとその正規プロバイダーの店、次にアップル製品の修理を専門としていて各地に店舗展開している専門業者、それと個人かそれに近い形の運営元が営業する修理ブティックである。
近くに2番目のタイプの店があったので、そこでやっちゃおうと持ち込んだのだが、店のお兄ちゃんからバッテリー交換で「問題が発生しても文句言いません」のような書類にサインを求められ、止めた。
結局、アップルからライセンスを受けている正規プロバイダーの店で先の店より7割以上のプレミアムを支払って交換してもらったのであるが、その際、いろいろとスマホのバッテリーについて専門スタッフから教えてもらったおかげでリチウム電池について知識が得られた。
さてそこで、機内への持ち込み制限がかかることになった先のモバイルバッテリーだが、モバイルバッテリーが一様にリスキーな訳ではないと考えている。
スマホの電池もモバイルバッテリーも、どちらもリチウム電池(Li-ion)だ。リチウムイオン電池が発火のおそれがあるなら、ノートPCも機内に持ち込めないことにならないか。だが、そうはなっていない。なぜならその発生確率はゼロではないが、極めて低いから。
リチウム電池の性能(この場合は特に安全性能)を決定する最大の要因は安全確保のための回路がきちんと組み込まれているか、次にリチウム電池のセルの品質だ。
つまり、モバイルバッテリーがもとから危険なのではなく、安全対策を施していない粗悪品が火を噴くのである。
であれば、一律に禁止することは得策ではなく、危険なメーカーやブランドを公表して利用者に注意を促す方が機内持ち込みに限らず安全性を担保する面からメリットが大きい。
ノーブランドの粗悪品に比べて価格は高いが、しっかりしたメーカーが安全対策をちゃんとほどこした設計と機構を組み込んだモバイルバッテリーが現にあるのだから。
発火などの事故を起こした製品のメーカー名をしっかり特定し、それらを公表することが疎かになったままになっている。
旅客機内への持ち込みや使用を一律に禁止する前に、やることをやってほしいものである。




