地元・横浜市の市長がパワハラの責任を取って職を辞することを発表した。そのため、10月には市長選挙が行われることになった。
今回の出来事についてはメディアの報道でいきさつを知ることになったが、どうも釈然としない点がある。
ひとつは、いつもながら言葉が勝手に一人歩きしている点で、「パワハラ」が今回のキーワードなのだが、その吟味が弱いように感じる。
メディアが報道しているような山中市長の行為を認めるわけではない。ただ、彼が日々やり取りしていたのは、大組織である横浜市役所の局長や部長という幹部職員である。みんな組織経験の長い「大人たち」のはず。
それが、市長が叱責するときに机を叩いたとか、提出した書類を投げて返したとか、ポンコツと言われたらとか、そんな子供じみたことでパワハラなんて言うなよ。指鉄砲を向けられたからといって、そんなことで精神的に傷つくなよ。ポンコツと言われて侮辱されたというのであれば、言い返してやればいい。
すべて器の問題。
それを反映するように、第三者調査報告書ではどの幹部が、なぜ、どういった文脈で「ポンコツ」とか「頭が悪い」とか言われたかは明らかにされてない。そこを知りたい。そこが分からなければ論評が難しいはずだから。
ふたつ目は、長期にわたって行われてきたとされる市長の一連の行為を、なぜ誰も止められなかったのかという疑問である。
下記はAIがまとめた、今回の出来事の概要。
2023年の6月にはすでに問題が発生していたとされる。少なくともそれから3年間も市庁舎のなかで続いていたのは、普通の組織だったらありえない気がする。
副市長や局長が、市庁舎内での出来事として何も知らなかったはずはない。にもかかわらず、根本的な対応が取られていなかった。とりわけ、副市長の責任は重いと思う。
第三者委員会も地方自治法167条をもとに、副市長を「市長を補佐して職員の事務を監督する最高補助機関」と位置づけ、市長本人によるパワハラを防止・是正する重大なガバナンス上の役割を負うとしている。実際、副市長は市役所内での統括コンプライアンス責任者の職責を負っているのである。
組織内で対策を取るべきだった副市長や局長が、何年にもわたって対応を怠った。自分に対する人事権を握られていたことに恐怖を感じたためか。だとすると、つまりは保身。
そうした彼らにとっては、市長に立ち向かうことではなく、黙ってやり過ごすことが合理的な行動だった。そのことで、組織的沈黙と呼ばれる状況が蔓延したということだろう。
結果、別の問題が発生していた。第三者委員会の調査によって分かったことだが、職員たちの声として、市長の行為が局長への精神的な負荷となり、それが増幅されて部長、またその部下へと降りてくるという趣旨の証言が寄せられている。
経営心理学の分野で言う「虐待的監督の下方伝播」が起こっていたのである。
今回の横浜市役所の組織としての失敗の流れを整理すると、次のようになる。
① 市長が圧倒的な人事権を持つ
↓
② 反対した者が異動などの対象になるとの認識が生じる
↓
③ 副市長、局長、部長などの幹部が市長を諫めることを放棄する
↓
④ 市長への悪い情報・反対意見が上がらなくなる
↓
⑤ 市長自身は自分のマネジメントの問題を認識しないままになる
↓
⑥ 幹部は市長の要求圧力を部下に向けて転嫁し、順に下へ伝播する
↓
⑦ 組織全体の心理的安全性が低下する
↓
⑧ 内部通報も行われなくなる
↓
⑨ 問題は解決されず、さらに長期化する
↓
⑩ 組織内では問題の解決が不能で、最後に人事部長が外部に向けて会見を行い告発。社会が知ることとなった。
最悪である。
市長も悪いが、副市長など幹部職員の責任も問われるべきだ。そこが報道ではすっかり抜け落ちている。僕が釈然としなかったのはそこだ。
メディアはフォーカスを絞って分かりやすく伝えた方がニュース価値が上がると思っているのかもしれないが、問題を単純化しすぎてはいけない。全体が分からないまま、終わらせてしまうから。




















