近畿財務局の元職員だった赤木俊夫さんか自らの命を絶ったのは、2018年3月だった。
妻の雅子さんは、その死の理由を知りたいという思いで、ずっと財務省に関連文書の公開を求めてきた。例の森友学園への安倍元首相による国有地の格安払い下げについての件だ。
赤木俊夫さんは、土地売却に関しての関連文書14件について上司から「改ざん」を指示された。不正行為に悩み、そのことに端を発して彼はうつ病を発症し自死した。
その不正を指示した当時の佐川宣寿という財務省理財局長は、国有地の売却について森友学園側との価格交渉を否定、さらに記録は「廃棄されている」と国会の場で答弁した。
ちょっと待てよ。そうした記録は財務省の所有物ではない。役所の文書はすべて、われわれ国民のものなのだよ。勝手なことをするなよ(まあ実際は破棄せず残っていたのだが)。
雅子さんが求めてきた文書公開に対して、国は開示はしないと決定した。国のその決定について、当然彼女はそれを取り消すように求めていた。そして今回、赤木さんの公開せよとの訴えを認めた大阪高裁の判決にたいして、国は上告を断念した。
石破総理がそれを決めた。
強い使命感、責任感を持って仕事に当たった方が自ら命を絶たれたことは本当に重い。判決を真摯に受けとめるべきだと考えた。
と取材で語ったらしい。
英断のように評価する向きもあるが、ぼくはまったくそうは思わない。英断どころか、こんな当たり前の決定をなぜ今まで出来なかったのか。情けないこと極まりない。
これ以上世間からの風当たりが強くなったらたまらん、との不人気首相の思いがあった。
加藤財務大臣は、検察にいったん提出した文書は財務省に戻ってきていると語った。佐川は国会の場で文書は廃棄されているとしゃあしゃあと答弁したが、大臣はそれらの存在を認めたのである。
赤木さんだけではない、国民全員を財務省の元官僚は愚弄したことになる。佐川のような男がその後、国税庁長官に任命されていたと知れば知るほど、確定申告のための煩わしい書類作成がバカバカしくなる。
前置きが長くなったが、今回書きたいのは別の点にある。
先に引用した石破総理の発言「強い使命感、責任感を持って仕事に当たった方が自ら命を・・・」だ。その通りだが、赤木さんの自殺という悲しい出来事は、彼が自分の公僕としての本来あるべ職務を理解し、かつしっかりした責任感をもっていた人物だったからこそでもある。
つまり、安倍やその妻、また文書中に記された政治家たちを忖度した佐川が書類14件の改ざんを指示された職員がもし赤木さんでなかったら、「改ざん文書」の存在すら世間が知ることはなかった。
上司から言われたことをただ黙って「処理」しているだけの職員の仕事(仕業)は、これまでも、またこれからも一切おもてに出て来ない。彼らに都合のいいように改ざんされていようが、いまいが。
そして、それが役所内の文書のほぼ全部だ。赤木さんの死がそれを教えてくれている。
今後のことを見据えれば、いま私たちが考えなければいけないのはそこにある。