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2025-08-12

ほんとうの「日本人ファースト」

徒歩5分ほどのところにあるホテルの前からバスに乗れば、羽田空港まで直通で40分。海外路線を扱う第3ターミナルへは空港内をバスが少しぐるぐる回るので時間がかかるが、それでもプラス15分くらい。いずれにせよ自宅を出て1時間もあればたどり着ける。

その利便性から成田空港はほとんど利用しなくなって久しい。そんな羽田空港だが、そこから離陸するフライトの飛行ルートをいつも不思議に思っていた。

飛行機が関東周辺から抜け出すにあたって妙なかたちで旋回していたり、急上昇したり、それは上空の気流などの関係かと思っていたのだけど、実はそうではなかった。

在日米軍の特権的地位を定めた「日米地位協定」によって、米軍横田基地が管制する空域は、日本の飛行機は立ち入ることができないことになっているからだ。 

米軍が航空管制を行っているエリア

そのため、われわれが乗る飛行機もそのエリアを避けて飛ぶ。日本の空なのに。日本という国の主権は日本国にあるはずなのに、おかしな話だ。

「日本人ファースト」を主張する政治家たちは、難民申請者や日本で学ぶ留学生たち、海外からの旅行者を目の敵にする前に、この不平等な協定をなぜ問題視しないのか。

飛行エリアだけじゃない。日本に駐留する米軍兵士の数は6万人、その家族(扶養者)が3.5万人、合計約10万人に日本国内でかずかずの特権が与えられている。こうした、誰が見ても明らかな「アメリカ人ファースト」が日本国内でまかり通っている。 

政治家が知らないはずがない(知らなかったら勉強してくれ)。

これは一つの例。何とかしてみろよ、参政党。

ちなみに、羽田から飛び立ったJL123便が御巣鷹山に墜落してから今日で40年。

2025-08-11

ハルシネーションを楽しんでいたのだが

Chat GPT-5がリリースされたということで、chatgpt.comにアクセスしてみたら

GPT-5 のご紹介

という文字が画面に現れた。そして「ChatGPT のモデルに思考能力が組み込まれ、これまでで最もスマートで、速く、便利になりました。いつでも最適な回答が得られます」とある。
 
ネット上の評では、5になってさらに深い思考に基づいた回答が得られるようになり、ハルシネーションの程度を抑えられるようになった、と書かれている。
 
技術的なことはよく分からないし興味もさほどないが、なるほど使ってみて思うのは、こちらの質問の意図を推測してその答えを探しているような感じがすることである。進化シテルーという実感だ。
 
4oや4.5と比べて推論能力や文脈理解力が上がっていると説明されると、なるほどそうかもと思ってしまうし、ハルシネーションも減少したように感じるのだ。
 
ハルシネーションとは、人工知能によって生成された、虚偽または誤解を招く情報を事実かのように提示する応答のこと。
 
実は、それを結構楽しんでいたところがあった。例えば生成AIにある人物について訊ねてみると、内容はそれなりにまとまっているのだが、顔写真がまったくの別人だったりして笑えた。
 
ハルシネーションの可能性があるから、もっともらしく(自信満々に)画面に現れる内容でも常に少し引いた目で読んでいた。
 
またハルシネーションがあるから、学生が書いたものなどを読んでもすぐにそれ(AI)と気がつくという意味で「便利」だった。 
 
生成AIというのは、こちらが知らない森羅万象の情報や知識を屈指して、推論を働かせながらもっともらしい文章を自信満々に書いて寄こしてくるが、肝心なところを勘違いして嘘をついてる<とっぽい野郎>だったのが、間違うことのない<クールないけ好かない奴>になっていくとしたら、少し残念だ。 
 
生成AIはもっともらしく見せていて、その実、間違うことがあるから人間が介在している。これが間違うことなどないスーパーな存在になったら、人間はそこにどう介在すればいいのか。
 
その時には、われわれは自分のアタマで考えたり判断する必要がなくなっているのだろう。15年後くらいには、世の中の半分ほどの人たちはAIに従属するようになっているかもしれない。
 
AGIやASIという言葉を目にする機会も増えた。それぞれ汎用人工知能(人工汎用知能が正しいと思うが)と人工超知能と言われているもので、ChatGPT-5でもまだAGIに至っていないし、ASIはその遙か先の存在らしい。
 
そうそう、あまり急がないで、ゆっくり進化していって欲しい。
 
誰か地球を止めてくれ、僕はゆっくり眠りたい・・・ 

2025-08-10

どうした、青木

ジャーナリストの青木理がTBS「サンデーモーニング」に出演した際に、約10カ月ぶりにテレビの番組に出演したと語った。

昨年の9月に配信されたYouTube番組での発言をきっかけに、地上波テレビ番組の出演を自粛していたらしい。

彼はYouTube上の番組で津田大介と対談した際、津田から「人々はなぜ自民党に入れ続けるのか?」という講演を予定していることを告げられるとこう言った。「よくこんなテーマで・・・。ひとことで終わりそうじゃない? 『劣等民族』だからって」と。

すると、それに対してSNS上で批判が相次いだ。青木はその後、その発言について謝罪、撤回し、さらに地上波テレビ番組への出演を当面、自粛する考えを表明していたというのだ。

彼が言った「劣等民族」の民族というのは国民を意味してのことだろう。用語センスがいいとは思わないが、この発言の何が問題なのか。特定の誰かを貶めているわけではなく、ただひとつの考えを示しているだけだ。

そもそもこうした発言に目くじら立てる方がどうかしている。青木はそれが分かっていながらネット上でのそうした顔のない批判にひるんでしまった。ジャーナリストとして情けない。

彼がそのとき「謝罪」したのは、一体、誰に向けて謝罪したのか。私たち1億2千万人の国民に向けてか。そうではないとすると、SNS上で批判してきた顔なしたちに対して「スンマセンでした」と素直に頭を垂れたということになる。 

ジャーナリストの矜恃というものはないのかネ。ジャーナリストならジャーナリストらしく、しゃんと背筋を伸ばせよ。日本を遠く離れたガザでは今もジャーナリストたちが命をかけ、地獄を目の当たりにしながら日々の惨状をレポートし続けている。そうした事を知らないはずはないだろう。 
https://www.nytimes.com/video/world/middleeast/100000010333360/israel-gaza-journalists-killed.html

それにしてもラジオ番組には毎週出ていながら、なぜ地上波テレビは別なのか。そこもまったく理解できない。

数少ないまともな日本人ジャーナリストの一人だと思っていたのだが、ガッカリしてしまった。 

2025-08-09

言葉にならぬガザの現状

今年の4月時点、すでにガザへの爆撃による被害は「広島へ投下された原爆6発分」と専門家によって分析されている。言葉を失う。

2025-08-04

日本の企業にもAI役員が登場

キリンホールディングスが、経営戦略会議にAIが生成した仮想役員を導入するという。

過去の議事録や外部情報を基に、マーケティングや法務など各分野を専門とする12の「人格」が論点提示や情報提供を担うのだとか。 

その目的は経験や直感だけによらず、客観データを基にした迅速な経営判断を手助けするためだとしており、その発想はなかなか結構である。

それらAI役員は、マイクロソフトやグーグルが提供するモデルを基盤にキリンHDが独自に開発したもので、過去10年間分の取締役会と経営戦略会議の議事録を記憶させたという、

なかなか面白い試みで、これまでになかった戦略が出てくるかもしれない。ただ一つ気になるのは、なぜ過去の取締役会や経営戦略会議の議事録をAI役員に取り込んだのか。

果たしてそうすることが、より高度な戦略立案や意思決定への示唆に役に立つのか。むしろ逆効果にならないか。

これまでの経営者たちによる議論や意思決定プロセス、組織内の習慣性癖といったものは一切教えず、純粋に客観的な市場データや顧客に関するデータ、財務データなどから取るべき最適な戦略の策定や意思決定案を考えさせるべきではないのかね。

個人も組織も、間違った思考パターンで猛烈に学習し続けることほど危険なことはない。

私が以前、ある上場企業から社外取締役の就任を依頼されたとき、まず最初にやったことは、その会社の会議室にこもって過去10年間分の取締役会議事録にすべて目を通すことだった。

その目的は、そこに記されている「過去」を理解した上でそれをフォローするのではなく、逆にその会社の経営上の癖を知ることで、そうしたものに自分が組みせずに取締役として適切な意思決定をするためだった。

今回のキリンHDのAI役員たちも、過去の取締役会や経営戦略会議の議事録の内容をそのような狙いで理解し、今後の新たな方向性作りに生かしてくれると良いのだろうが、果たしてそこまでAIが気を利かせてくれるものなのかどうか、私には定かでない。

現在キリンHDには12名の取締役(こちらは人間の)がいるけど、その数は5年後には半分に減っているのだろう。

ところで、「人格」を与えられる12のAIは会議の場で何と呼ばれるのだろう。まさかキリン1号、キリン2号・・・とか。「南極1号」か!

2025-08-01

本から遠くへ離れてしまった日本の子どもたち

全国学力テストと呼ばれる全国学力・学習状況調査の2025年度の結果が公表された。調査対象は国内の小学6年生と中学3年生の全員で、国語、算数・数学、理科の科目について実施されたものである。

それによると、各教科で記述式の問題の正答率が過去の調査時より低く、自らの考えを根拠を示して書く力に課題があることが浮き彫りとなったとされている。

またこの調査と同時に行われた、小学6年生と中学3年生の読書実態についてのアンケート調査では、小学6年生の3割近く、中学3年生の4割以上がまったく本を読まない(読書時間ゼロ)と回答していて、その割合は前回、前々回より増加している。


理由は複数考えられるが、そのひとつは子どもたちが本の代わりにスマホを手にして、多くの時間をそれに費やしていることがあると考えられる。 

ヨーロッパやオーストラリアを中心に、子どものSNSへのアクセスを規制する法制度が成立する動きが出てきた。規制対象となる年齢は国によって多少異なるが、だいたい16歳未満が多い。

オーストラリアでは16歳未満のYouTubeのアカウント作成も禁止されることになり、動画をアップしたりコメントを書いたり、また一部の動画閲覧ができなくなる。 

こうした規制の考え方は正しいと思っている。まともな大人は、国を問わずこうした考え方をするものだ。これからの問題は、どのように実効性のある規制を実現するかだが、技術を用いたスマートな方法論が早急に確立されることを期待する。もちろん、日本でも同様に子どもたちのSNS規制が望まれる。

SNSへの「浸かりっきり」がイジメや暴力的行為を助長しているのは明らかだし、これ以上日本の子どもたちの学力が落ち続けないうちに、国が早めに手を打つ必要性が明らかになっている。 

2025-07-31

880トンの道程へ1グラム

東京電力福島第一原子力発電所の爆発後処理は、あの3.11から14年以上過ぎてもまだデブリの取り出しが始まっていない。

国の専門機関「原子力損害賠償・廃炉等支援機構」は、2030年代初頭と見ていた取り出し開始時期が2037年以降になると明らかにした。

よく読むと、開始できるまでにこれから12年から15年かかるから、ということ。つまり、開始できる時期が2037年〜2040年頃だと言っているわけさ。

だが、こんな説明は眉唾だと言っておく。

なぜなら、現時点で実際に取り出しに成功したのは1グラム(正確には0.9グラム)。一方、取り除かなければならない原発内のデブリの量は880トン(1〜3号機)と推定されている。

あるペースで既に取り出し作業が続けられているのならば、「このペースで取り出し作業が行われれば・・・」という話にもなろうが、まだどうやって取り組んでいいのかすら分からない状態。

そもそも、このデブリは高放射線、高温、その形状も位置も不明で、取り出し作業は世界でも前例がない超難関作業と言われている。だから周囲のあらゆるもの、人はもちろん、水の処理や環境にも細心の注意と配慮が求められる。 

さらには、取り出した880トンもの高放射線デブリをどこに保管するのか、どこでどうやって最終処分するのか、まだ何も決まっていない。保管場所すら決定できないのに、取り出しに一所懸命になってどうするのか。 

これが現状だ。12年〜15年経てば取り出し作業を開始できると言われても、その根拠が見えない状態でそんな話を信用できるわけがない。

責任者の定年が12年後に控えているから、というのがこの数字の背景にあるんじゃないかと疑いたくもなる。 

2025-07-29

ここでも不可解なグーグルの検閲行為

つい先日、グーグルがネット空間上で行っている不可思議な操作についてここに書いたが、似た話はやはりあるもので、GoogleMapでもほぼ同様なことが行われていた。

今回はオープンしたばかりのテーマパークという話題の対象だったので、世間に知られるようになった。


https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2507/28/news100.html 

2025-07-28

ここでも〇〇ファースト

今度の日曜日に横浜市長選の選挙がある。先日の参院選と合わせてやってくれたらよかったのだが、まあしかたない。

前回の横浜市長選時は、山下埠頭(みなとみらい地区)にカジノを含むIRを誘致するという当時の林文子市長に対する信任選挙の意味あいが強く争点が分かりやすかったが、今回はそうしたものが何もない。

4年前のその選挙ではカジノ推進派の市長は落選。そして外資系カジノ企業は大阪市に標的をシフトした。

今回の立候補者は現職を含めて6名。ただでさえ国政選挙と違って情報が限られているので配布された選挙公報に目を通してみた。

6名中2名が、〇〇ファーストを謳っている。二番煎じだ。いや、三番煎じか。講道館柔道二段だという女性は<横浜市民ファースト>を掲げ、「市民の命を守る」と訴える。元甲子園給仕、いや球児の男性は<横浜市民第一主義!>を標榜し、「市長報酬カット」をトップの抱負に掲げる。

なんだかなあ・・・盛り上がらない

2025-07-12

ジェノサイドで儲ける世界的企業

未だに止まないイスラエルによるパレスチナへの攻撃。そのなかには病院や学校、子どもまで標的にした明らかに国際法に違反した攻撃が多い。食料の配給場所に集まった住民に向けてのイスラエル兵士による発砲まで行われている。

国連のフランチェスカ・アルバネーゼ特別報告者が、イスラエルによるパレスチナへの攻撃を可能にしている各種技術や情報の提供元を報告書で明らかにした。

2025年7月1日付の報告書「From economy of occupation to economy of genocide(占領の経済からジェノサイドの経済へ)」である。

そのなかで名指しされている主な企業の名前をあげる。多くは米国の企業だ。

🌑 軍需・防衛関連:
    Lockheed Martin
    Boeing
    General Dynamics
    Leonardo
    Oshkosh Corporation

🌑 重機・建設機器:
    Caterpillar

🌑 テクノロジー&クラウド:
    Microsoft
    Alphabet Inc.(Google)
    Amazon
    IBM
    Palantir Technologies
    HD Hyundai

🌑 航空宇宙・部品:
    Israel Aerospace Industries (IAI) 

🌑 金融・資産運用:
    Allianz(PIMCO)
    Barclays
    BlackRock
    BNP Paribas
    Pimco
    Vanguard

🌑 ロジスティクス:
    Maersk

🌑 コンサルティング:
    Boston Consulting Group

🌑 エネルギー:
    Chevron

🌑 航空・誘導兵器関連:
    Honeywell

米国の主要な軍需・防衛企業が登場するのは予想どおりだが、アマゾンやグーグル、マイクロソフトまでもかと・・・。ボストンなんたらというコンサル会社の名前も見える。報告書の中、日本企業ではファナックの名前が挙げられている。

https://www.theguardian.com/world/2025/jul/03/global-firms-profiting-israel-genocide-gaza-united-nations-rapporteur

https://www.reuters.com/business/aerospace-defense/lucrative-business-deals-help-sustain-israels-gaza-campaign-un-expert-says-2025-07-01/

https://www.bbc.com/news/articles/cx2039xpv87o

https://www.nytimes.com/2025/07/10/us/politics/gaza-francesca-albanese-sanctions.html?searchResultPosition=1

2025-07-11

あなたはどこまで「ファースト」か

今回の参院選で気になる動きの一つが「日本人ファースト」といった排外的な考えを前面に打ち出した党の台頭と、それを支援しようとする有権者たちである。

どの政党を支持するかは、それぞれの有権者の自由。ただ、「日本人ファースト」という考えを支持している人たちには、自分が「ファースト」として本当に処遇される側にいられると思っているのか問うてみたい。

「オレたち」と「アイツら」を二分することで人々の帰属意識をくすぐり、集団の傘の元へ引き寄せるやりかたは為政者による人心をつかむための常套手段である。

万が一、そうした考えに沿って日本にいる外国人を排斥したあと、何が起こるか考えた方がいいと思う。きっと次に起こるのは「エリート・ファースト」「富裕層ファースト」「既得権者ファースト」、つまるところは「権力者側の身内ファースト」だ。

「日本人ファースト」を政策とする政治家がやりたいことは、決して日本人すべて(1億2千万人の人口)をファーストな存在として取り扱うことでなく(そもそも不可能)、対立の構図をつくり人々を煽ることで自分たちに目を向けさせたいだけ。

外国人排斥に気持ちよさを感じるような人たちは、「日本人ファースト」で自分がファーストな扱いを受けられると思って歓迎しているのだろうが、次はそうした連中に向かってブーメランの先は向かっていく。 

2025-07-06

「なんでそうなるの」

今朝の日経新聞、その一面トップ記事に首を傾げた。

企業の経営計画を取り上げ、「数年単位の中期より10年以上の長期目線で経営に取り組む企業の方が、 利益の伸び率が大きいことが分かった」と書くのだがーー。

記事の書き手は、根拠として2024年にあずさ監査法人が行ったという調査をあげている。その調査結果では日本企業を将来の計画への時間軸の長さで区分けし、1年、3年、6年と答えた企業より10年以上としている企業の方が業績(過去5年間の営業利益の平均伸び率)が良かった(前者が18%、後者が52%)と述べている。示されているのは相関関係である。

だが記事は、10年あるいはそれ以上の長期的目標を設定する方が企業は高い業績をあげられると結論づける。目標を中期ではなく長期的に持つことによって、長期的な人材教育や投資が可能になるからだと説明しているが、理屈が通っていない。 

これって、因果関係の説明が逆転してるのではないか。データの範囲内で解釈を試みるなら、幸いにして過去5年間の業績(営業利益の伸び率)が好調だったからこそ、長期的な目標設定をすることが可能な経営状態にあるというのが実態ではないのか。

そしてそれほど儲かっていない企業は、まずは3カ年程度の収益目標をたて、それをどうきちんと実現させるかに注力せざるを得ないのが実状だろう。

そもそも、それこそ10年以上前から10年超の長期計画を目標にしてきた企業と、従来の中期を目標にしてきた双方の企業群の業績を10年間遡って比較してみなければ記事が言っていることは証明できないはず。だが、そうした検証は行っていない。

記事を書いた人物は、経営者には長期的な視点こそが重要であり、長期的に人材教育を施し長期的な視点で将来へ投資する企業こそが成功する、と言いたいようだ。彼(女)はファクトではなく、自分がそう思う(思いたい)ことを書いている。そして、最近では中期経営計画は廃止する企業が出始めているとしている。

しかしそれは、未来を確実に予見できればの話。今後10年先に市場がどうなっているか、顧客がどこにいるか、主要な競争相手がどこか、さらには世界経済はどうなっているかなど、そうした種々のことが明確に分かっていれば超長期目標でやればよい。

だが、常識的に考えればそれはムリ。もしできるのなら、どうやって予見するのか教えて欲しい。超能力でもあるのか、あるいはAIが教えてくれるとでもいうのか。 

書き手の思い込みと誤った推論をもとにした典型的な記事である。

2025-06-21

問題の本質は、マスクでなくマスキング(隠蔽)にある

安倍政権が2020年に全国に配布した「アベノマスク」に関し、業者との契約過程が不明だとしてそれを明らかにするよう神戸学院大の上脇教授が求めた裁判が、原告側勝訴で確定した。

業者との契約過程を記した文書の不開示決定の大半が取り消され、国に賠償金の支払いを命じた大阪地裁の判決に対して国は期限までに控訴しなかった。

地裁の判決はというと、マスクを調達する業者との記録が文書1枚、電子メール1通すら作成されないまま事業が行われたとは考えがたいとしたものだった。

今後、われわれが注意を向けるべき点は、彼らが「ない」と言っていたはずのどんな文書が出てくるかということにまして、原告側の開示要求に対して国が一貫して「記録は一切ない」と突き放したウソの回答をしていたことにある。

裁判に訴えた原告だけではない、すべての国民をなめていないか。 

日本全国の5,600万世帯へ配布するマスクの調達と発送を、コロナ時において業者と文書1枚、メール1通かわさないで(すべてを口頭だけで!)手続きするなど、小学生が考えてもオカシイのはあきらか。

そうなんだけど、国側はこともあろうか裁判の場でもそう言い放った。なぜか。その理由は簡単で、役人はこれまでも市民からの問合せに対して「そうした記録はない」と突き放して、それで済ませていたからである。

それが彼らの常套手段であり、突き放された市民側は「記録はない」と言われて引き下がるしかなかったから。いくら「それはおかしい。あるはずだ」と主張しても、役人側が「ないものはない」と譲らなければ、市民側はそれ以上は手の出しようがないからである。

これが役人の手口。強弁を続けてしらばっくれれば、やがて相手が引っ込むと思っている。だが、裁判ではそうはいかなかった。当たり前だけどね。 

役人にとっての常識が、いかに市民にとって非常識かが浮き彫りになったひとつの例だ。

だいたい、市民からの情報公開請求に対して役所がさっさと応えればすむものであって、裁判で争うようなものじゃないと思うんだが。 

2025-06-08

同質性メンバーが生む集団思考が招く失敗

東京電力の旧経営陣で、今回株主らから裁判で責任を問われた被告について調べたら、実に似通った4人組だった。

元会長・勝俣恒久(故人)
元社長・清水正孝
元副社長・武黒一郎
元副社長・武藤栄

これら4人はいずれも年配の日本人男性。東電への入社は4人のうち3人(勝俣、清水、武黒)が1960年代、1人が70年代前半。概ね同世代である。出身校は4人のうち3人(勝俣、武黒、武藤)が東京大学、1人が慶応大学。それぞれが上記の役職に就いたのは3人(勝俣、清水、武黒)が2008年、1人が2010年。4人とも新卒入社で東電一筋のキャリア。

これだけでも、彼らが極めてホモソーシャルな集団であることが分かる。そうした同質性の高いグループは、一般的に米国の社会心理学者 A・ジャニスがいうところの集団思考に陥りやすい。そして、集団思考という思考停止の結果、組織は失敗する。

ホモソーシャルなだけではない。4人の中には明確な上下関係(入社年度)があり、そのなかで各自が保身のために生きていた。 

そのような集団では合理的かつ独自の判断は求められない。既存の秩序とルールを決して乱さないこと、全体の流れから逸れないこと、そのために「変化」を起こさないことが最良の生存戦略になる。

目は組織の内部にしか向いておらず、自分たちの事業が兼ね備えているはずのリスク、たとえそれが人々の命にかかわることであっても「本気で」考えることなど及びもつかない現状維持バイアスで脳みその大半が埋め尽くされたサラリーマン経営者たち。 

このことは当時の東電だけではなく、多くの日本の大企業が今も同じである。 

2025-06-07

原発を東京に

東電旧経営陣の責任を問う株主代表訴訟の判決で、東京高裁はかつての経営者4人に対し13兆円強の賠償を命じた東京地裁の1審判決を完全に翻し、無実とした。 

ポイントは、津波を予見できたか否かの判断であり、その元となった国が行った地震予測の長期評価をどう扱うかだった。

東日本大震災の9年前に国の機関が公表した地震予測「長期評価」では、三陸沖から房総に至る地域でマグニチュード8.2級の大地震が発生する可能性があると言及されていた。

そして、地震が起こった場合、福島第1原発は最16メートルの高さの津波に襲われると東電は計算していた。実際に東日本大震災が起こる3年前、2008年のことだ。

しかし、東電の当時の経営者らは対応策を施さなかった。なぜか? 「そんなもん、めったなことじゃ起こるはずない」という希望的観測だ。あるいは「自分が在任中に起こらなきゃ構わない」といった経営者の考えがなかったと言えるか。

国の機関による地震予測に対応する対策を東電がとっていれば、最悪の事態は防げたのが今になれば残念でならない。

結果、2011年に大地震と大津波が発生し、冷却水を取るために海岸沿いに設置された福島の原発が爆発したのである。

事故の発生リスクを知っていながら策をとらなかった。これは明らかに経営ミスであり、それゆえに1審の東京地裁はその責任を認めた。

ところが、東京高裁は一転無実とした。地震発生の長期評価の信頼性が不十分だと結論づけたからである。裁判官は科学者でもないのに。

地震発生について、その規模やタイミングを完璧に予測することはできない。当時も今も、おそらく将来的にもそうだろう。

だが、それは当時のトップレベルの専門家がまとめた見解だった。無視していいことにはならない。無視するのであれば、そもそも国の機関によるそうした報告書自体がまったく無意味ということだ。

高裁の木納敏和裁判長は、評価委員会の結果を信頼できないものであって、対応を取らなかった東電の経営者が言った「巨大津波は想定外だった」という言い訳を丸呑みしたわけだ。

ちなみに、東電の勝俣は原発事故の7年前、東電の地域住民モニターだった町議の女性から「原発の非常用発電機を地上に移して欲しい。大津波に襲われるから」と訴えられたとき、「コストがかかりすぎるから無理」と回答していた。津波が想定外だった、なんての噓っぱちで、金がかかるからやんないとはっきり明言していたじゃないか。 

リスクといっても、もしそれが発生した場合、企業の売上が減少するとかの話ではない。万一それが発生した場合、多くの人命が失われ、その地域も国全体も長年にわたって被災し続けることは分かっていたはずだ。にもかかわらず、4人の経営者はリスクを看過した。 

世界を震撼させた東電福島第1原発の爆発事故からまだ14年しかたっていないのに、国は「原発回帰」に舵を切った。今回の東京高裁の判決は、まさにそれを忖度し支持するものである。 


そもそも、原子力発電がかかえるリスクを電力会社の経営者が知らないはずはない。だからこそ、原発は電力需要が最大の東京ではなく地方の福島や新潟、大阪ではなく福井や石川に置かれている。

私たちも原発のリスクを過小評価しすぎ。たとえそのことを分かっていても、すぐ忘れるし。理性的に考え続けるのはたいへんなのだ。 

2025-05-28

政治や行政にたかる心根は日本人共通か

関西のあるテレビ局が緊急調査と称して神戸・元町で県民100人に「兵庫県知事は辞任すべきかどうか」についてインタビューした。

結果は「続投すべき」が37人で「辞任すべき」が63人だった。調査結果と言っても統計的な意味はない。

だから、こんな意見もあるのか、といった参考程度にしかすべきではなのだが、その中にちょっと気になったものがあった。

20代だという兵庫県立大学の卒業生が、「(斎藤知事は)続投すべきで、僕らの世代からしたら若者への支援が充実していると感じる。自分らが直で受けた授業料の無償化が大きかったので、特に辞任っていう意見はない」とコメントしていた。

僕はこれを聞いて、実に厭な気持ちになった。

授業料を無償化してくれたことを理由に斎藤は辞任する必要はないと言っているが、これって国からの補助金を受け取っている農家がそれを理由に自民党の議員を支持するのと何ら変わらない。

政治にたかる心根は地方の高齢者だけでなく、20代の若者も同じなのだと改めて知った。

2025-05-27

事実か、認識か

内部告発をした元県民局長(昨年7月に自殺)の私的情報を元総務部長を通じて外部へ漏洩させた指示は、斎藤兵庫県知事(および元副知事)による可能性が高いと結論づけた調査報告書を第三者委員会が発表した。

それに対して、当事者の鉄面皮斎藤は「私としては、あらためて漏洩に関する指示はしていないという認識に変わりない」と語った。


どこまでもずる賢いなあ〜と感心する。「指示はしていない」と明言するのではなく、「指示はしていないという認識」についてしか語らない。

「指示はしていない」と言い切ったら、あとでウソがばれたときに言い訳ができない。だから、斎藤はあくまで「事実」ではなく「認識」にこだわり続ける。

つまり、これは「指示をした」という事実があることを含んでいるととれるのだが。

その時が来たら、この御仁、今度は「認識は事実に及ばず」とでも言い始めるのだろうか。 

◉ 認識(にんしき):人間が何かを知覚し、理解し、判断する心の動き。つまり「主観的な理解」
◉ 事実(じじつ):人間の認識とは無関係に実際に起きている現象や状態。つまり「客観的な現実」

今回、漏洩させたと証言を変えた元総務部長は「職責として正当業務を行ったに過ぎない」と述べているが、それもまた納得できるものではない。

彼の言の変遷は事態の流れを読んで計算した結果なのだろうが、個人のプライバシーに関わる情報の漏洩はどうやっても違法なわけで、私は上(知事)から言われたからやっただけです、では済まされない。

上から言われようが、やっちゃいけないことはしなきゃいい。

この総務部長は自分が停職処分に処せられたことに対し、「審査請求及び執行停止の申し立てを行い、正当性を主張したい」ともコメントしたという。正当性という言葉に首をかしげる。

元部長さん、そうした手続きも結構だが、まずは社会の常識を頭にたたき込むことだ。

兵庫県庁から退職する職員が増えているとの報道があった。一般的に、県庁職員や市役所職員ほど定年まで辞めることがないサラリーマンはいないのだから、こうした状況はよくよくのことなんだろう。

上が逆ロールモデルばかりの組織では、そこにいては自分も腐っていってしまうと考えるのは無理もない。つくづく残念な組織である。

2025-05-24

DXのお手本

「誰がどこからいくらもらっているかが分からないと、是非も評価できない」と、議論の前提を提供することを目的に、一人の民間人が政治家の収支報告書のデータベースを構築した。https://political-finance-database.com/

政治家の名前を入れるだけで、受け取った企業献金の支払い元や金額などが分かる。企業名からの検索もできるし、寿司とか商品券といったキーワード検索も可能。一覧表で見ることができる。

クリックで拡大
 
現状、国の対応はどうなっているか。報告書自体はネットで公開されてはいるが、紙をPDFにしてあるだけなので一覧性がない。これは調べる方からすると手間がかかり過ぎて致命的。

また、議員による報告書の提出先は、総務省と都道府県の選管に分かれているため、それぞれのサイトから探さなければならない。しかも、議員が複数の政治団体を持っている場合(そうしたケースが多い)、関係の団体名を調べるのだけでも大変である。

つまり形式的には政治家は報告書を提出し、それはサイト上で見ることはできるが、それらは利用価値が低く(というか、それを狙ったものとしか思えなくて)機能しているとは言いがたい。

それらへの不満や強い改善要求をもとに昨年末の政治資金規正法改正で、国もやっと2027年から報告書のデータベース化をすることが決まった。ただし、データベース化に取りかかるのが27年中だとすると、国民がそれを使えるのはもっと先ということになる。

今回、西田さんという人がデータベースを作成した。これならジャーナリストや研究者などはもちろん、一般の人たちも簡単に政治資金収支の内容を知ることができる。政治の議論が高まり、監視の目が強まると同時に本来あるべき政治に少しでも近づいていけるかもしれない。

以前ほど耳にすることはなくなったが、DX(デジタル・トランスフォーメーション)という言葉が盛んにささやかれた時期が合った。デジタルならではの特性を利用して効率性を急速に高めたり、問題解決に進むための考えだ。

DXというのであれば、これこそがそのお手本だ。

ただ、データベース構築に当たっては、もとのデータが紙(PDF)なのでそれを専用のOCRで読み込んで作成している。国や自治体は、さっさと議員の報告書の提出を紙ではなく、デジタルによるものにすべきだ。

なぜ今も政治家に紙で提出させているのか。デジタル庁は足下のそうした状況を当然知っていながら、見て見ぬふりをしてきた。政治家のご都合主義。

2025-05-21

「コメを買ったことがない」 じゃあ、何を買ったことがあるのか

江藤拓農林水産大臣が政治資金パーティーでの演説のなかで「(私は)コメを買ったことがない。支援者がくれる。売るほどある」と調子放いて、結果、更迭された。

このおっさん、頭の悪さは一流だが、それにしても65歳になるまでどういう生き方をしてきたのだろう。

首相官邸のホームページに彼の紹介が載っていた。なんといっても大臣だからね。

おっさん、24歳で大学を卒業し、それから2年半後、衆議院議員である父親の秘書になっている。その間、なにをしてたんだろう。

今回の農水大臣の交替を、れいわ新選組の山本太郎が「マヌケな大臣が辞任しても、次のマヌケが大臣になるだけ」とコメントしていたがそうなった。

コメントと言えば、国民民主党の玉木ンタマ代表は、石破総理の脳薄い、いや農水大臣交代の決定を「判断が遅い印象は否めない」と評したが、おととい記者団に答えた話とずいぶん違う。

そのときは江藤大臣の進退問題に関して問われ、「辞めるような話ではない」と玉金玉は語っていた。

どっちやねん。

確固たる自説を持たず、その時その時で周りを見て言うことを変える嘘くささとご都合主義がこの男の本性のようだ。

2025-05-07

人を不用意に脅迫者呼ばわりしてはいけない

毎月、「かながわ県のたより」と題する県からの月報が配布される。普段そうしたものを読むことなどないのだが、GW中に古新聞をかたづけるついでにめくってみたらある記事が目に付いた。


その号の特集は「STOP! カスハラ!!  かながわ宣言」。カスハラ(カスタマーハラスメント)はいけない、止めようという趣旨だが、目を通していて、あれっ!と思ったのは、そこで紹介されていたカスハラの事例だ。

さて、これのどこが<脅迫>なのだろう? わざわざ赤字で印刷されているところが<脅迫>にあたる、つまりカスハラだと指摘しているのだろうか。

何を「インターネットで流す」と言っているのかがはっきりしなければ、判断はつかない。その日の電車が遅延したこと、そのため接続先の最終便に間に合わなくてタクシーを使ったこと、その後、タクシー代を電鉄会社に請求したが「負担できない」と相手の会社から言われたこと。

これらは事実であり、そのことを誰に話そうが、ネットで書こうが問題はない。プライバシーの侵害や中傷誹謗ではない。もちろん<脅迫>などと言われる筋合いはない。

「ネットに流す」と言われるだけでビビり、そのことを「脅迫」と受け取り、「カスハラ」だと騒ぐのは馬鹿げてる。

そうしたビビり企業は、何かやましいことがあるからと見られてしまうものだ。 

もしネット上の内容が事実に反していればそれを指摘し、毅然と訂正を求めればいい。内容が中傷や誹謗であれば法的措置を執る。それらは面倒だけど、いまの社会的環境の下では避けられないコストだ。

「社長もよく知ってるぞ」というこの客の発言を<脅迫>だと断じるのもどうなのか。この場合、電鉄会社が自分たちの判断が適切だと思うのであれば、そのことを会社の社長であろうが誰であろうが伝えられたって構わないだろうに。

全般的に言って、顧客からのこうした要求をスグに<脅迫>とか、<カスハラ>と決めつけたがる精神構造の方が大いに問題だ。このようなやり方で客を安易に<脅迫者>と呼ぶのは、人権上の問題すらある。

これでは、顧客と企業の良好な関係性構築など望むべくもない。

タクシー代の支払いは拒否されてしかるべきだが、電車の遅延による乗客の損害(タクシー代など)は免責されていることをきちんと説明はしたのだろうか(鉄道事業法だか鉄道営業法に定められているはず)。「タクシー代は負担できない」とただ繰り返すだけでは相手は納得せず、顧客対応としては明らかにお粗末だ。

同紙(かながわ県のたより)で県知事の黒岩裕治氏(あのバナナ黒岩だ)が、県庁内の4割がカスハラの被害にあっていると書いていた。それ、誰がどうやってそれを測定したのか? 職員が「被害を受けた」というケースを個々に調べて客観的に判断したのか。しちゃいないだろう、アンケートへの回答数をもとに言っているだけに違いない。

意図的かどうか分からないが、同紙はカスハラを特集テーマにしていながら、カスハラの定義が紙面のどこにも示されていない。

ネットで調べたたら、神奈川県は県庁サイト上でカスハラを次のように定義していた。それは、「県民等からの言動のうち、業務の性質その他の事情に照らして社会通念上許容される範囲を超えたものであって、職員の就業環境が害されるもの」。
https://www.pref.kanagawa.jp/docs/bd4/20250319.html

きわめて抽象度が高い。

参考まで東京都と厚労省のカスハラ定義を見てみる。

東京都の定義

「カスタマーハラスメントとは、①顧客等から就業者に対し、② その業務に関して行われる著しい迷惑行為であって、③就業環境を害するものをいう」

これら①から③までのすべての要素をみたすものがカスタマーハラスメント(東京都カスタマー・ハラスメント防止条例)(令和6年発令)

②について:
著しい迷惑行為とは、「暴行、脅迫その他の違法な行為又は正当な理由がない過度な要求、暴言その他の不当な行為をいう」と規定している。
③について:
「就業環境を害する」とは、顧客等による著しい迷惑行為により、人格又は尊厳を侵害されるなど、就業者が身体的又は精神的に苦痛を与えられ、就業環境が不快なものと なったため、就業者が業務を遂行する上で看過できない程度の支障が生じることをいう。 

具体例として挙げられているカスハラ行為例:
    ・暴言・暴力・威嚇行為
    ・土下座の強要や人格否定的な発言
    ・長時間の拘束や同内容の繰り返し要求
    ・社会通念を逸脱した過剰なサービス要求
    ・SNS等での誹謗中傷による従業員の精神的圧迫

厚労省の定義

厚生労働省は、「カスタマーハラスメントを明確に定義することはできません」としたうえで「顧客からのクレーム・言動のうち、当該クレーム・言動の要求の内容の妥当性に照らして、当該要求を実現するための手段・態様が態様が社会通念上不相当なものであって、当該手段・態様により、労働者の就業環境が害されるもの」がカスタマーハラスメントと考えられるとしている。

いずれの定義に照らし合わせても、神奈川県庁が指摘した先の乗客の例は、脅迫やカスハラには該当しないことが分かる。

神奈川県の知事室は、県内442万世帯にこうした問題のある記事を掲載した「県のたより」を配布し、県民を「牽制」しているつもりなのだろうが、これは大いなる税金のムダ使いとしか思えない。

そういえば、こんなことがあった。2023年10月、東京23区のある区で区立小学校の改築計画を巡って区役所が地域住民に対して説明会を開いた。その際、住民からの質問や要望が途切れることなく出て、会議がずいぶん長引いた。後日、そのことを区の幹部が「カスハラ」とほのめかす発言をした。

役所は、とにかく「自分たちが迷惑」と感じたことはカスハラにしてしまいたいようだ。