アッパー・イースト・サイドにあるCafe Carlyleで、スティーブ・タイレルのコンサートがあった。ここはローズウッドホテル・チェーンが経営する名門ホテル・カーライルのなかにある。ウディ・アレンもこのステージで時折演奏している。
彼の「Back to Bacharach」は、ずっと僕のお気に入りのアルバムで、バート・バカラック本人がピアノやアレンジを行っている。どの曲も、何度聞いても飽きない。一度、彼の歌を生で聞いてみたいと思っていたところだった。
リンダ・ロンシュタットやロッド・スチュアート、レイ・チャールズ、スティービー・ワンダー、ダイアナ・ロスなど数多くのアーティストのプロデュースをやって来た人。B. J. トーマスが唄ったバート・バカラックの「雨に濡れても」(映画「明日に向かって撃て」でブッチ・キャシディ役のポール・ニューマンとエッタ・プレース役のキャサリン・ロスが、自転車に乗ってデートをするシーンで使われた)を世に出した。
音楽プロデューサーとして、歌手に歌わせる曲のデモを吹き込んだりしていたところ、音楽仲間に勧められてそのまま自分も歌手デビューした。1999年、50歳でのデビューである。
なめらかな美声ではない。まったく逆で、しわがれた、どちらかというとダミ声である。しかし、彼が歌うジャズの曲は、それが他の多くの歌い手たちが歌ってきたスタンダードであっても、まるでその声であらかじめ歌われるのが決められていたかのように感じる。
隣の席に座っていた男が彼の友人だとかで、コンサートが終わった後に紹介してくれた。ぜひまた東京(東京ブルーノート)公演をしたいと言っていた。記念写真を一緒に撮った。