机の引き出しの中の箱に鍵が入っていた。5本ほど。それらは、実は何の鍵なのか自分でもわからないまま、そこにあった。
分からなくなる前にタグなど何か手がかりを付けておけばよかったのだが、そうしたものはなく、どれも何のための鍵かまったく不明だった。
ずっと処分できなかったのは、それらが自分が忘れている何かの「扉」を開くために必要な鍵かもしれない、という思いがあったから。捨てることで、自分が開くことができなくなる「何か」を手放してしまうのでは、といった小さな怖れがあった。小心者なのである。
今日、それらの鍵を全部捨てた。
万一、その鍵が必要だったということが後にわかったとしても、もういいや、と言う気になれたからで、実にすっきりした気分。
何かを切り離したり捨てていく行為は、ちょっとしたなごり惜しさとともに、それに勝る気持ちよさを与えてくれる。