2014年8月9日

生命保険の原点にかえって

今朝の「木村達也 ビジネスの森」のゲストは、ライフネット生命保険株式会社の会長兼CEOの出口治明さん。


日本を代表する生保マンである出口さんから、生命保険について多彩な話を教えていただいた。

ネット専業の生保会社と伝統的な(外交員による販売の)生保会社の違いを、200円の自販機の缶ビールと居酒屋で飲む500円のビールの違いと表現する。ビールはビール、中身は同じ。だから原価もほぼ同じ。だけど、提供のされ方が違うから顧客が支払う金額は違う。「ビールを飲みたい、だけどお金はあまりない人たちは自動販売機でビールを買うでしょう」と。

出口さんは、ライフネット生命を若い子育て世代を応援するために作ったと明言する。日本では若い世代が一番お金を持っていなからだ。


その思想は、250年前にロンドンで初めて生命保険ができたのと同じ。その原点に返って、生命保険を考えて作った。日本でまったく新しい生命保険会社ができたのは、なんと74年ぶり。国の膨大な規制をクリアして創業した苦労が想像される。


米国では生命保険は銀行の窓口での販売が一般的。欧州は代理店経由での販売。だから、ネット専業の生命保険会社は、ライフネット生命が世界で最初である。自動車保険や火災保険といった契約単位が1年、2年という短期の商品にくらべて生命保険は10年とかあるいは終身保険のようにスパンがはるかに長いため、その経営基盤を確実するのに時間がかかるためである。

まさにパイオニアである。その心意気を応援したい。 

今朝の一曲に選んだのは、CCRのプラウド・メアリー。


2014年8月2日

酒は背筋を伸ばして呑みたい

今朝の番組ゲストは、先週に引き続き「獺祭」の旭酒造社長・桜井博志さん。


今週は、酒を何でどう呑むかについて話を聞いた。桜井さんによると、磁器よりも陶器、さらにワイングラスが優れているとか。酒の温度をそのまま感じるためには、唇にあたるところは薄い方がよい。

パリに出す店では、有田焼作家の14代今泉今右衛門さんに獺祭オリジナルの杯を造ってもらっている。そうしたこだわりが桜井さんらしい。

店で日本酒を頼むと、小振りのグラスをマスのなかに入れて持って来て、客の前でそこに酒を注ぎこぼすというのをよくやれられる。グラスいっぱいに注がれた酒を客は持ち上げるわけにはいかず、背中を丸めてまずは少しすすり呑むようになる。

こうした飲み方が好きな人もいるのだろうが、僕は嫌いだ。だから、グラスの入ったマスを持ってこられると、マスなしで大ぶりのグラスに同じ量だけ入れて持って来てくれと頼む。最近では、行きつけの店はいちいち言わなくても僕には他の客とは違ったグラスを出してくれるようになった。

桜井さんもそうした大の男が背中を丸めて、グラスに注ぎこぼされた酒をすする姿がみみっちくて嫌いらしい。だから、その意味でも今のところはワイングラスがいちばん相応しいと考えている。

今日の選曲は、リンダ・ロンシュタットの「シンプル・マン、シンプル・ドリーム」。彼女のアルバム「シンプル・ドリームス」からの一曲。



2014年8月1日

花火と雨音

富士山のふもと。湖畔で今日花火大会が行われている。
小雨の中、かすかな雨音と花火の音が聞こえる。



2014年7月30日

頭を白紙にすることも大切

大学院で9月修了予定者のための口述試験があった。僕の担当の学生でこのタイミングで修了するメンバーはおらず、他の学生の修士論文の審査を片手分ほど副査として行った。全員が英語コースで学ぶ留学生である。

ビジネススクールの学生ということもあって、その内容や研究アプローチは固定的でなく、きわめてオーソドックスな学術研究タイプの修士論文から、事例研究やら企業への提案書のようなものもある。

ある学生の書いたものは、ある特定の企業に関するビジネスレポートとビジネスプロポーザルの中間のようなものだったのだけど、内容的に明らかに必要と思えるパート(章)が欠けていた。

口頭試験ではそれを指摘し、なぜ書かれるべきだったその章を書かなかったのか問うたところ、もの凄く強い口調でその企業は位置づけがユニークだからそれは必要無いと返ってきてちょっと驚いた。

すべての企業はそれぞれユニークであり、それが理由にはならないと説明したのだが、ユニークだとかスペシャルという返答で、結局、回答らしいものは返ってこなかった。

気になったのは、その学生の挑んでくるような返答の仕方。何が何でも自分がやった研究を守るんだというある種の闘争心のようなものを感じた。

2時間半ほどですべての審査を終え、会場を出た時に目に入ったのは、会場の部屋の前に据えられた"Room for Oral Defense" という文字。僕は学生ではないので想像するしかないが、これがOral Examinationだったら彼らの気持ちの持ち様は違っていたんじゃないだろうか、なんてことを感じつつ、トルストイのある言葉を思い出していたのである。
どんなに愚鈍な相手であっても、頭を白紙にして聞いてもらえるものなら、この上なく難しい問題を説明することはできる。しかし、どんなに聡明な相手であっても、その相手の頭の中に、すでに一片の疑問もなく事を知り尽くしているという固定観念が宿ってきた場合、この上なく素朴な事柄すら伝えることはできない 
口述試験では、こうすればもっと良くなるよ、というのがわれわれ審査する側の質問の通常の意図なのだが、どうも相手の留学生はそうは思ってくれなかったらしい。せっかくの自分の研究にケチをつけられたと感じたのか、あるいは "defense"という言葉から何が何でも「防衛」しなければいけないと信じていたのか。

2014年7月26日

日本酒には、大きな可能性がある

今朝の「木村達也 ビジネスの森」は、純米大吟醸酒で一躍全国的なブランドになった獺祭(だっさい)を醸造する旭酒造社長の桜井博志さんをゲストにお招きし、お話をうかがった。


旭酒造では、以前は獺祭以外にもいくつかブランドを持っていたが、いま扱っている銘柄はこれだけ。山田錦米だけをつかい、原料を磨き込んだ純米大吟醸一本に絞り込んでいる。

どのくらいあるのか知らないが、日本国内には数えられないほどの日本酒銘柄があるはず。消費者に覚えてもらい、継続的に店頭で購入してもらう、あるいは飲食店で注文してもらうためにはまず名前とその味の特徴を覚えてもらわなければならない。ブランド・マーケティングの基本である。

たとえば大関株式会社の「大関」というように、社名と主要製品ブランド名が一致するものもあるが、そうではない方が多い。さらに、多くの酒蔵は複数のブランドを持っているのが一般的である。

消費者が店頭で酒の銘柄を選ぶ際の情報は多岐にわたっている。つまり、会社名と製品名に加え、純米だ、吟醸だ、絞りたてだ、辛口だ、、、という感じでその種類、製法、性格などもラベルに製品名のように記載されたものを「解読」させられることになる。

桜井さんのところは、まずは獺祭という1つのブランドに絞り込んだところが分かりやすい。これは、顧客視点から考えればすぐに分かるとおり、シンプルでありながら大切なポイント。

その酒を桜井さんのところでは、通年を通じて仕込む(四季醸造という)。しかも杜氏は使わず、社員たちがデータとマニュアルをもとに、科学的に行う。地酒でありながら、大量に製造する(それでも生産が間に合わない)。

海外にも早くから進出している。そのひとつの理由は、地元の岩国ですら四番目だったからこそ、大きな市場を目指して東京へ、そして世界への進出を考えた。

さらには、この40年以上にわたって毎年販売量が減少している国内の日本酒市場にとどまっていられず(40年間で市場規模は3分の1になった)、世界に目を向けるようになった。

日本食が世界的なブームという波にも、いまは上手に乗っている感じである。

今日の番組に挿入した曲は、英国のブルース・ロックバンドの先駈けともいえるフリーのサード・アルバムに収められている「オール・ライト・ナウ」。この曲が発表されたのは1970年で、当時、バンドのメンバーの平均年齢は20歳。それでいて重厚かつ奔放な演奏と気迫のこもったボーカルは、恐るべきものだった。


2014年7月22日

しっぽ村のくろべえ

わんこの里親、探しています。 福島県の北保健所からしっぽ村に移ってきて2ヶ月ほどの雄犬です。彼は清川しっぽ村では「くろべえ」と呼ばれています。歳は4歳から6歳くらい。中型犬(小柄)です。



すごく元気で疲れ知らず。散歩ではドンドン歩きます。四本とも足の先が白くなっている。白いソックスを履いているみたい。連絡先は、http://ameblo.jp/ananan223/

2014年7月19日

トイレは狭いが、世界へ拡がる広大な空間である

今朝の「木村達也 ビジネスの森」(FM79.5 NACK5)は、先週に続いてTOTO相談役木瀬照雄さんをゲストにお招きした。


TOTOはトイレだけでなく浴室、洗面所、台所といったものも扱っているのだけど、どうしてもついついトイレ(ウォシュレット)の話が中心になってしまう。

中国は所得の伸びに伴い成長著しい。また新築住宅が多いのが追い風になっている。ハイエンドの製品を中心に売上を伸ばしている。人口の1割が利用してくれるようになっても、日本の人口にあたる市場だ。

米国はなかなか難しいとのこと。文化風習の要因が強いらしい。欧米の石とコンクリート造りの建物は、設置するための工事が日本のように容易ではないことも影響している。

ウォシュレット(温水洗浄便座)の源流が米国の医療器具にあったというはなしは初めてうかがった。

トイレにもいろんなお国柄がある。

今日の番組挿入曲は、ジョニ・ミッチェルの「チェルシー・モーニング」。彼女の2作目のアルバム『Clouds』(日本語アルバムタイトルは『青春の光と影』)に入っている。彼女のオープンチューニングによる独特のギターのサウンドが特徴的だ。


2014年7月13日

観蓮会

今朝は朝から雨模様である。こうした日はどう過ごそうかと考えていたら、家人が「季節だから蓮を見に行ったら」と。そこで花園駅の近くにある法金剛院へ出かけてみたら、昨日から観蓮会が始まったばかり。

池一杯に蓮が拡がり、ピンクの大きな花を咲かせていた。




その後、妙心寺を抜けて龍安寺へ。さらに、仁和寺にも足を伸ばした。小雨日和でそのぶん人も少なく、静かな散策を楽しむことができた。





2014年7月12日

京都・祇園祭

祇園祭のクライマックスが近づいている。今日は、鉾建てと曳き初めが行われた。

僕も四条通の月鉾を曳かせてもらった。




トイレから人の暮らしを考える

今朝の「木村達也 ビジネスの森」は、TOTO相談役の木瀬照雄さんをゲストにお迎えした。


TOTOといえばトイレ、ウォシュレットを連想するが、彼らが扱っている領域は浴室、洗面所、台所など水回り全般に及ぶ。それらはどれも、僕たちの暮らしに欠かせない。だからこそTOTOは、健常者だけでなく身障者をはじめ誰もが快適に使えるようにするための研究と開発を続けている。

TOTOのUD(ユニバーサルデザイン)研究所はこの夏ぜひ訪ねてみたい。

今日の挿入曲は、グレン・キャンベルの「ウィチタ・ラインマン」。ジミー・ウェッブ作。グレン・キャンベルは、古き良きアメリカらしいシンガー。ニール・ダイヤモンドと並んで昔から僕の大好きなアメリカン・ミュージシャンである。
http://tatsukimura.blogspot.jp/2012/10/blog-post_13.html


2014年7月6日

入谷朝顔市はじまる

今日から下町の入谷で朝顔市が始まった。I夫妻と茅場町駅で落ち合い、日比谷線の入谷駅へ。改札を抜け、地上へ出ればそこはもう朝顔市の会場。

言問い通りが車両通行止めになり、根岸一丁目の交差点に向かって左側にはずらーと朝顔を売る店が並んでいる。反対側には、たこ焼きや焼きとうもろこしを売る屋台が。

この市では朝顔の値段はどの店でも同じ。4色の朝顔が植えられたあんどん造りなどが二千円で、琉球朝顔が三千円。琉球朝顔は宿根で、そのままで毎年咲くらしい。それぞれ一鉢ずつ購入。






鬼子母神もお参りしたかったが、長蛇の列に諦めて、浅草方面へ行くことに。浅草寺手前の浅草花やしきに立ち寄る。

実は中に入るのは初めて。ひとり千円の入園料を払って園内に。江戸時代末期にでき、すでに160年の歴史をもつ由緒ある遊園地である。あっという間に園内を一周できる狭さが微笑ましい。



暑気払いを期待し、お化け屋敷へ。このお化け屋敷、以前は建物の1階部分にあったのが、改装して2階になったとか。改装オープンが2011年3月11日の大震災の日、オープン当日にできたビルのヒビが残っていると係のお兄さんが教えてくれた。

会場の出口近くで飛び出てきた「お化け」

お化け屋敷というと、アルバイトの学生たちが張り切っておどろかせてくれるものとばかり思っていたのだけど、今ではほとんどが機械化されていた。

2014年7月1日

プレゼン巧者には注意?

帰りの車中、雑誌に掲載されていたコピーライターの仲畑貴志とアートディレクターの箭内道彦の対談を興味深く読んだ。「オレ、プレゼンでしゃべるの嫌いなのよ。すっごく下手で、気恥ずかしくなるの、しゃべるとき。で、照れて、暴言を吐く」中畑は言う
おかしいよ。ターゲットがこうだからとか世の中がこうだからとか、神の視座からのように、なんだかんだ言うんだけど、ちょっと引いてみたら、すげえ滑稽な感じがする。

だってプレゼンのうまいへたがあっちゃいけないと思わない? プレゼンのうまい人の表現が、効果がある表現ではないだろ? 新聞広告の15段の横に企画書は置けないんだから。
プレゼン(ここでは表現テクニック)が上手くて企画が通ることはよくない・・・肝心なのは企画内容そのものなのだというのが彼が言いたいことだ。

日本でもっとも「プレゼンテーション」に馴染みが深い業界は、仲畑や箭内がいる広告業界だろう。そこでは、広告というコミュニケーションに関する仕事を、他の広告会社と競って提案で勝ち取っていくことが日常だ。

そうした業界のなかに長くいる仲畑にとっては、「プレゼンだけうまくやりやがって」というシーンがこれまであまたあったに違いない。はったり、あるいは見かけ倒しと言い換えることができる。

プレゼンで選ぶか、プレゼン抜きの企画書(ドキュメント)だけで選ぶか、なかなか難しいところだ。提案の受け手にとっては、プレゼンしてもらった方が情報量は多くなるので、普通に考えるとより適切な意思決定ができるはず。しかし、企画内容ではなく、その場の雰囲気やプレゼンのテクニックに惑わされることも考えられる。

要は、受け手の判断能力なのだ。まったくウブな担当者はプレゼン抜きで企画書のみで判断した方がいいかもしれない。また、十二分に経験もある優れた担当者には別の意味でプレゼンは不要であり、企画書だけで(企画書の出来がちゃんとしていればだが)判断が下せる。で、そのどちらでもない中間的な人たちにとっては、プレゼンテーションが必要になってくる。

新入りのような全くの初心者が大きなプロジェクトの意思決定を任される機会はまずないので、そうすると対象は中間層かベテランかということになるが、仲畑が示唆しているのはベテランが少ないという企業の現実の一面である。

2014年6月30日

日本酒のバーへ

先日、新聞に日本酒「獺祭」の経営者である桜井氏のことが紹介されていた。


この山口県岩国の酒蔵は都内の京橋にバーを持っているらしい。そこで、夕方4時開店の一番客として訪ねてみた。

ここで扱っている銘柄はすべて獺祭だが、原料米(山田錦)の磨き度合いによって5割、3割9分、2割3分、さらにもっと磨いたものとスパークリングがある。


獺祭という日本酒はすっきりしていて、たいへん飲みやすい。これなら和食はもちろん、白ワインが合う料理ならどのような料理にも合わせることができる。

まずは5〜10銘柄の日本酒を選び、それらを先兵に「日本酒」を世界に拡げ売っていくことを考えてみてはどうか。いまこそ、日本酒のマーケティングが求められている。

2014年6月29日

しっぽ村のコテツ

清川しっぽ村へ。お陰様で、先日紹介した、真っ黒なワンコ(サスケ)の里親が決まりました! こうした場合のネットの拡散力のおかげかなと驚いてます。今日は、3 週間ほど前にそのサスケと一緒に草むらで雨に打たれていたところを保護されたコテツ(と呼ばれている牡犬)と散歩。彼は、サスケとはおそらく兄弟。


2014年6月28日

「ここには何もない、があります」

今朝のNACK5「木村達也 ビジネスの森」にお招きしたのは、千葉県の房総を走るいすみ鉄道の社長、鳥塚亮さん。


彼は5年前に社長公募に応募して、ローカル線の経営者になった。いすみ鉄道は、駅数14、路線長26.8キロ、日本の典型的なローカル線である。沿線には全国的に有名な名所旧跡があるわけではない。内陸部を走るので、太平洋の風景が眺められるわけではない。

けれど、そこにはのどかな日本の里山の風景がいまも残っている。それを無理をせずに、分かってくれる人たちにだけ訴えかけている。

「ここにはなにもありません」というポスターを駅や電車に貼ったらしい。以前、都会から来た観光客が駅で「せっかく来たのに、ここには何もないじゃないか」と怒っているのを目にしたという。すみませんと頭を下げているのは、ボランティアで鉄道を支援してくれている地元の方々だった。

それを見て、これじゃあいけないと思ったのがきっかけだったとか。地元の方が、地元のあるがままの姿を観光客に否定されたり、なじられたりすることの間違いを起こしてはいけないと思われたのだろう。

そこで、彼が考えたのが、「ここには何もない、があります」という逆転のポジショニングである。すばらしい!

9割の人が無視しても、1割の人が興味を持ってくれればいい、そしてそのまた1割が年に1度きてくれればいいと。自分たちの身の丈を知っているのである。「いすみ鉄道なんて、たいした鉄道ではありませんから」と、はばかることなく公言する。しかし、それがファンを引きつけ、長くじっくりと愛される秘訣。戦略的なのである。

事実を曲げたり、あるいは針小棒大に語って集客に成功しても、そんなものはすぐにばれるものです。一時でも客さえ集まればいいというのは、よい経営ではないことを鳥塚さんはよく分かってらっしゃる。



彼が以前つとめていた航空会社(ブリティッシュ・エアウェイズ)は、僕の昔の職場でもある。彼は成田空港で運行部長として、僕は都内でマーケティングの仕事をしていたのだけど、番組の打合せ時には共通の知り合いの話で大いに盛り上がった。

今回、番組に先だってBA時代の友人に連絡を取ろうとして分かったのは、以前、東京で行っていた日本路線のマーケティングはいまはロンドン・ベースで行われるようになり、日比谷にあった予約センターは香港に移ったということ。日本国内の高い人件費や共同運航便を飛ばす他の航空会社(日本航空)との関係からの判断のようだ。

LCCに代表される価格の安い航空会社の台頭に、伝統的な航空会社は対応に苦慮していることがうかがえる。構造的な問題であり、今後も変化がつづくのだろう。

下は鳥塚さんのブログ。面白い。
http://isumi.rail.shop-pro.jp/ 

今日の挿入曲は、ドゥービー・ブラザーズのロングトレイン・ラニング。トム・ジョンストンが作詞作曲した曲で、彼らのサード・アルバムに収められている。学生時代から聞いていて、忘れられない曲のひとつ。



2014年6月14日

清川しっぽ村

午後から、神奈川県愛甲郡にある「清川しっぽ村」を訪ねた。清川しっぽ村というのは、東日本大震災等によって飼い主を失った犬と猫をあずかり、里親を探しつつ面倒を見ている一般社団法人である。http://ameblo.jp/ananan223/entry-11826656617.html

場所は、東名の厚木ICから30分くらいの自然豊かな山ふところである。いま住んでいる町の最寄り駅でボランティアの人がときおり募金活動をしていて、彼らと話を何度かするうちに一度現地で詳しい話を聞きたくなったのだ。

途中、高速の事故渋滞につかまり、予定より1時間ほど遅れて現地に着いた。スタッフの方たちは夕方の犬の散歩の準備で大忙し。ここに現在身請けもとのない犬が13匹、猫が21匹保護されている。

それならばと、僕も一匹お手伝いがてら散歩に連れていかせてもらった。どの位のコース(時間)をいつも行っているのか尋ねたら、施設の裏にある山につながる路を上り30分、下り20分ほど歩いてきて欲しいとのこと。なかなか本格的である。結局、1時間ほどサスケという名の黒いわんこと散歩をして一汗かいた。

散歩途中のサスケ

犬の朝夕の散歩はもちろんだが、ここでは犬と猫の健康にとても気遣った世話がなされている。餌や水の食器を洗う時は、食器用洗剤できちんと洗ったのち、消毒液につけ、そして乾燥機で乾燥させていた。間違いなく、我が家の食器より清潔である。

食事の量は、一匹ずつ体重に合わせて計量された食事が与えられている。夕方の散歩後、どの犬もご飯を待ちかね、それぞれのところに餌を運んでやるとあっという間にペロリと平らげる。もっとたくさんやればとも思ったが、犬も人間同様にむだに肥満になるのは病気のもとだから。

犬小屋や犬舎などは、とても清潔に保たれている。病気になってから獣医にかかり治療してもらうのではなく、そもそも病気にかからないようにとの対応が施されていた。

福島で保護された牝犬のマロン

犬たちは天気の良い昼間は庭の犬小屋でそれぞれのんびり過ごし、夕食後はエアコンが効いた犬舎に移され夜を過ごす。実は最初、相手は犬と猫なのに甘やかしすぎではないかと思った。しかし、これも犬猫の体調管理と彼らにストレスを極力かけないための方法なのだろう。

また、ここに連れてこられた時点で、どの犬も猫もそれなりにたいへんな目にあっているはずで、それを考えると甘やかしてもらう資格があるのかもしれない。

リーダーシップについて対談

今朝の「木村達也 ビジネスの森」(NACK5 土曜日朝8:15から)は、元スターバックスコーヒー・ジャパンCEOの岩田松雄さんにゲストとしてきていただき、組織においてリーダーがどう生まれてくるかについて、岩田さんご自身のこれまでの経験と経歴をもとに話をしてもらった。

彼が強調されていることのひとつは、リーダーは役割であって必ずしもポジションではないということ。そして、その役割には必ず責任が伴っているということである。確かにマネジャーはポジション(役職)だが、リーダーは必ずしもそうではない。


今朝の曲は、Manic Street PreachersのA Design for Life。

2014年6月13日

グーグル発 マーケティングにできること

いつものゼミは、毎回ふたりづつ、それぞれが行う修士論文に向けてのプレゼンを中心に進めているのだけど、今日のゼミはゲストの講演とそれを受けてのフリーディスカッションを行った。

お招きしたのは、グーグルのマーケティング統括部長・根来香里さんだ。コミュニケーションの領域を中心に、グーグルのマーケティング活動についてうかがった。

また彼女らが3/11後に立ち上げた東北被災地支援プロジェクトなどについても紹介してもらった。

お話の中で印象的だったことのひとつは、社員を採用する時の基準としてグーグルの精神を理解して共有できるかどうかという点がとても重要だということ。同じような匂いを発しているかどうかに、敏感に反応するらしい。



2014年6月9日

ユニクロ(ファースト・リテイリング)の企業体質

いまではもうずいぶん昔になってしまったが、2000年を迎える少し前、ユニクロのフリース・ジャケットが国内で爆発的に売れていた。製品は軽くて保温性に富み、値段も手軽だった。

2001年にファースト・リテイリング社は、年に2回だったと思うがフリースの回収を店頭で始めた。これはなかなか賢い選択だった。

圧倒的な量で世間に広まったフリース・ジャケット。ポリエステルで出来ているその衣料をゴミとして廃棄するのは環境への負荷になり、それに対しての環境保護団体の動きが気になっていた。

それに先手を打つように、環境への負荷を減らすためとしてリサイクルを行ったのである。回収された商品は、当初は燃料となったり工事用のシートなどに加工されていた。

その頃は、イトーヨーカドーなど大手のスーパーチェーンでもプライベート・ブランドのフリース・ジャケットが数多く販売されていたが、ユニクロが店頭で回収するのはあくまでも自社のものだけ。リサイクルのために古くなった商品を持って店頭に訪れてくれる客は、彼らにとっては大変いいお客さまである。

古いユニクロ商品をリサイクルのためにカウンターのスタッフに手渡した多くの客は、そこで何か買い物をしていったことだろう。

その後、同社のリサイクル・プログラムは、対象が全品に拡がり、時期も通年になった。回収された商品はリサイクル以外に、アフリカの難民の人らに送られるようにもなった。このことは、たいへん結構なことである。

ところで、同社のサイトを見ていて、リサイクル商品の回収数のグラフが気になった。2013年度の回収数がそれまでのトレンドより大きくかけ離れていて、前年の2012年に比べると2倍以上の数値になっている(下記の上の棒グラフ)。

気になって、その数値(1217万枚)の中身を同社広報室に問い合わせてみた。要領を得ないやり取りに繰り返し付き合わされた後、最終的に同社の広報室が僕に示した回答は「単純な計算ミスです」だった。

僕の指摘をきっかけに、同社がサイト上で訂正した2013年度の数字は802万枚で、つまり415万枚も「計算ミス」していたことになる(下の棒グラフ)。
http://www.fastretailing.com/jp/csr/environment/recycle.html
http://www.fastretailing.com/eng/csr/environment/recycle.html

■ 彼らに連絡する前にファースト・リテイリングのサイト上に掲載されていた回収数のグラフ

■ 連絡後、いつの間にか訂正された回収数のグラフ


「単純な計算ミス」を責めるつもりはないが、外部から指摘があるまでこれほどの数値の大きな変動について疑問を抱かなかった同社の広報部門は鈍い。グラフを見れば誰でも「あれっ?」と感じるはず。

僕が連絡をした時は、こちらの身元や質問の意図を何度も何度もファースト・リテイリング側は聞いてきた。そして最後に、彼らは「計算ミスです」と素っ気なく返答した。それはこちらがもし報道機関だったら、もう少しまともな回答を寄こしたということだろう。

その後、彼らのサイトを確認したら、数字とグラフがいつの間にか変更されていた。

常識で考えると、「ご指摘ありがとうございました」の一言もあってしかるべきだと思うんだけれど、このダンマリの姿勢はどうなのかね。

同社のサイト上には、以前の表示(数字)が間違っていたという「訂正のお知らせ」などは一切ない。それは、自分たちにマズいことはさっさと書き換えて知らん顔すれば済むと考えているから。企業体質がよく出ている。印刷物と違ってネットは便利だねえ〜。

たまたま僕は、彼らが修正する前のグラフをスクリーンショットで保存していた。英語のサイトだけだけど、内容はもとの日本語サイトと同じだ。

こうした可能性があることすら想像しなかったファースト・リテイリング社担当者のお粗末さを笑う。フリースの製品はよくできてるんだけどね。

2014年6月5日

授業のち、打ち上げ

昨日は「マーケティング」クラスの最終日。

毎週水曜日は午後7時から3時間の授業があって、その後も学生たちの質問に答えたり、なんだかんだと用事を済ませていると大学を出るのは夜の10時半をまわる。

その時間を過ぎるといつも使っている西門が閉鎖されてしまうので、北門の通用口からグランド坂下に出て、すこし遠回りするかたちで早稲田通りに出る。そして帰宅は、いつも深夜0時頃だ。

昨日の最終授業は90分の予定だったので早く帰れるかと思ってたら、学生たちの打ち上げに誘われた。場所は大学近くの変な店。授業の打ち上げのために貸し切っていたらしい。

会には受講生のほぼ4分の3の学生が参加し、「やっと終わったぞ」とばかり、のびのびとした感じでグラスを重ねていた。

こうした場で、グラス片手に学生たちと話をするのはいい。大学の教室で授業の続きで話しているのと違って、彼らのプライベートな側面が垣間見えて、思わず話が弾む。

会の終わりに、残っていたメンバーでマーケティングのMを手文字で描いた記念写真を撮った。全7回のレポートを頑張ったヤツも、サボったヤツもみんなこういう時はいい顔をしている。


やっぱり帰宅は、午前0時過ぎだった。

2014年6月1日

警察の知能犯課にお世話になる

土曜の夜、阿呆な詐欺メールが届く。電話番号宛のショートメッセージだ。165万円のシャネルの商品を僕が買ったらしい

内容はもちろん、日本語も幼稚だ。発信人は、日本人以外だろう。人をバカにしたメールに、発信者を調べてもらおうと地元の警察に通報した。で、そのメールを転送しようと思ったら、それはできないと。警察のネットワークは、外部からアクセスできないようになっているらしい。

「こちら(警察署)へいらっしゃれませんか?」と電話口で訊ねられ、じゃあ行くかと麦わら帽子をかぶり出かけた。

応対に出てきたのは、まだ30歳くらいの若い警察官。知能犯課の所属だという。警察に知能犯課という部署があることを初めて知る。

彼は何枚も僕のスマホの画面に映ったメールをデジカメで撮影した後、基本的な対応の仕方を教えてくれた。

フィッシング詐欺やこうした詐欺メールの発信元は、そのかなりの部分が外国である。多くの場合、北米のサーバーをいくつも経由して発信元が分からないようにしてあるが、なんとか辿ってみると最終のサーバーは中国にあるというケースが圧倒的らしい。

問題は、サーバーが国内ではない場合、現状では日本の警察は手が出せないことだ。実に腹立たしい。

参考までと、URLを検索窓に入れるだけでサーバーの設置場所やプロバイダを確認できる以下のサイトを教えてくれた。ネットショップなどの場合、日本のサイトを装いつつサーバーが日本国内にないものは、ほぼインチキである。

IPひろば
aguse
cman

2014年5月31日

TEDxTokyoのライブビューイング@横浜

TEDxTokyoが渋谷のヒカリエで開催された。朝10時から夕方6時までの長いイベントである。

渋谷会場への参加はとっくに締め切られていたのだけど、横浜にある富士ゼロックスR&Dスクエアで社員とその家族、友人を対象にしたライブビューイングをやるという誘いを受けて出かけた。


日産ビルの隣にある富士ゼロックスの建物は、開放感と自然光に溢れたすばらしい環境だった。

ビッグデータとは何か

今朝の「ビジネスの森」は、統計学者の西内啓さんにゲストに来ていただき、主にビッグデータについて話を聞いた。彼は『統計学が最強の学問である』の著者である。
http://tatsukimura.blogspot.jp/2013/04/blog-post_14.html


言葉だけが先走りしているように思われてならないビッグデータ。企業の人と話していると、顧客データベースや販売履歴があれば、ビッグデータの分析で何か将来のヒントが自然と解き明かされると勘違いの向きが多い。

たいした仮説も持たず、ただデータを高い金を払って分析させても実際にビジネスの役に立つ結果が得られるわけではない。大量のデータがあるだけで将来の指針が得られるのであれば、めでたいことに経営者は組織に不要になる。

ションベルガー&キクエは『ビッグデータの正体』のなかで、著者たちはビッグデータとは何ぞやという問いに、"from some to all" すなわち、「部分計測から全体計測へ」と言い表している。

この変化が何を意味するのかというと、それは因果関係の追求から相関関係の追求への変化であるといえる。それは、なぜそうなのかという理由が分からないまま、実際はこうだからという現象にだけ着目する方向に進むことを示している。

確かに、蓄積された膨大なデータによって、「オレンジジュースとアスピリンの組み合わせがガンを治す(ガンが治った患者の多くはオレンジジュースとアスピリンを摂取していた)」ことが確実にいえるのであれば、それはなぜかというと問いはまずは置いておいても、その事実の方が重要になる。

これを敷衍していうならば、そこでは「答えさえ分かれば、理由は不要」ということだ。アマゾンが利用者に対して行っているレコメンデーションではその理由などは誰からも問われないからよいだろうが、保険会社がこれまでの診療記録をもとに今後の保険料の算定を行ったりする場合には、納得のいく説明ができないことになる。

いずれにせよ、ビッグデータは打出の小槌などではない。企業であれば、明確なビジネス上の目的を持って分析に望まなければ、労多くして得るものは少ないままに失望の海に沈む。

2014年5月28日

ブルー・ジャスミン

「ブルー・ジャスミン」は、ウディ・アレンが監督をした最新作である。主な舞台は、サンフランシスコ。回想シーンにニューヨークでの様子がたびたび挟み込まれる。

ニューヨークを舞台に映画人としてのキャリアをスタートしたウディ・アレンが、その後ヨーロッパのいくつかの都市を舞台に映画を作り、そして西海岸にたどり着いた。


ジャスミンは、ケイト・ブランシェットが演じる主人公の名前。本名のジャネットが「平凡すぎる」からとジャスミンにその名を変えたニューヨークのセレブリティで、アメリカの大実業家の妻という役柄。それが、夫のビジネスが根っからのいかさまだったため破綻。結局すべてを失いサンフランシスコの妹の家に転がり込む羽目になる。

タイトルのブルーは「憂鬱」といった意味だが、状況は憂鬱どころではない。ジャスミンの精神は徐々に、そして確実に壊れていく。ブロークン・ジャスミンだ。その様子は救いようがない。ウディ・アレンの眼差しも醒めていて、彼女を救済しようとなどと考えていない。辛い映画である。

般若顔を時折見せる主人公のブランシェットが、実にうまい(アカデミー賞主演女優賞を獲った)。彼女なしでは作品は成り立たなかったし、興行的にも成立しなかったと思う。

お話は、テネシー・ウイリアムズの「欲望という名の電車」を連想させる。作りがよく似ている。実際、ケイト・ブランシェットは、母国オーストラリアの舞台でブランチの役をかつて演じてたことがある。

60年前のニューオリンズを舞台にした話をベースに、なぜウディ・アレンがいまサンフランシスコとニューヨークを舞台に物語を書いたのか。

彼は昔から女性に対して厳しいというか、心を赦していない感じがしていた。ジョークで女を笑わせようとするが、あくまでも女性は彼にとって立ち向かう対象だった。

心底女をやっつける映画を作りたかったのかもしれない。しかも興業として成り立つ一般的な作品として。そのためには誰もが知るテネシー・ウィリアムズの戯曲に併走しながら、米国の2大都市を舞台に、ケイト・ブランシェットというこれ以上考えられない配役を決めたというわけだろう。まぎれもない、アレンの職人技である。

2014年5月27日

炎上マーケティング

昨日の新聞で、ある若い社会学者が書いた文章のなかに「炎上マーケティング」という言葉があった。

炎上マーケティングとは、「わざと非難されるような極端な発言をして注目を集め、議論を喚起することで結果的に話題の中心になったり、自分のことを宣伝したりする」ことらしい。

漫画『美味しんぼ』で福島を訪ねた主人公が鼻血を出すという、放射線被害を連想させる描写が「売り上げ目当ての炎上マーケティングだったのではないかとの指摘もある」と書いているが、それはまずないだろう。連載を始めたばかりの漫画ならともかく、30年以上の連載実績を持つこの漫画がそうしたことで今さら話題性をひこうと画策する理由はない。

いずれにせよ、本来、売らんがために話題を振りまくこと狙っただけの活動を「マーケティング」とは呼ばない。

つねづね思っていたことではあるが、「マーケティング」はほとほと融通無碍な概念として捉えられている。その証拠に、一見、どんな言葉だってマーケティングの前につけることができる。ほとんど無限の接頭辞が「マーケティング」には可能であり、それらしく聞こえてしまうから始末が悪い。

「炎上マーケティング」でマーケティングが意味するところは「売り込む手法」である。もちろん、マーケティングは一方的な売り込みではないし、その点でステマなどと呼ばれているステルス・マーケティングといった考え方もマーケティングではない。

 

2014年5月26日

やらせレビュー

5月22日号の週刊文春で紹介されていた記事だが、飲食店を紹介しているサイト「食べログ」の評価点数について疑問を持った記者がいた。ある店の評価で、口コミの評価は5.0、5.0、4.0、4.0と高い評価が並んでいるにもかかわらず、なぜか総合評価は3.1となっている。

そこで、彼はサイトを運営するカカクコムにその疑問を投げかけた。すると、総合点は利用者がつけた評価を単純に足しあげて平均したものではなく、特定のレビュアーが高い評価を付けないと総合評価が上がらない仕掛けが施されていると。そして、「低得点に甘んじているという飲食店様においては、まだ点数への影響力が高い複数のレビュアー様が高得点をつけられていないという状況ではないかと考えられます」と彼が受けた説明が続く。

ということは、先の店の評価については「影響力の高いレビュアー」による評価が悪かったからということになる。

店の関係者やサクラによるヨイショ評価を避けるために、一般利用者の評価ウェイトを低くし、信頼のおける良質なレビュアーの評価が総合点に大きく影響するようにしているということなら、なるほど納得がいく説明ではある。

しかし、その記事によれば、複数の飲食店経営者が次のような証言をしているという。「毎週1回は代理店から『食べログに広告を出せば、影響力の大きいレビュアーが来店する可能性が高くなりますよ』と営業電話がかかってくる」

これは何を意味するのか。広告をサイトに出してくれたら、影響力が大きい(つまりサイト上での店の評価を左右する)レビュアーを送りこみますよ、そして総合評価が上がりますよ、ということ。つまりその場合、味やサービスには関係無く、ということであろう。

一見、「みんなの声がもとになってるんだよー」という、いい人の顔を見せていながら、自分たちの都合に合わせて裏側で操作しているのが気持ちわるい。

他にもこうした一般の利用者から分からないところで恣意的な仕組みがなされているものは多い。ただ、多くの利用者がそうしたことを気付かないまま情報操作されている事実について、僕たちはもっとよく考える必要がある。

若い人たちにとっては、こうしたことは「当たり前のこと」であって特別気にするような問題じゃないのかもしれない。学生たちからは「別にいいじゃん」とか笑われることかもしれないが、僕はこの件に疑問を持ち、そしてその疑問を解こうとアクションを取った記者におおいに共感する。

そんなことを考えてたら、今日の読売新聞の読者投稿欄に洋食店を経営する神戸の方が、以下のような投稿をされてたのを目にした。


新聞にしろ雑誌にしろ、広告か記事かの区分けについて注意しなければ混同してしまいがちだ。インフォマーシャルというinformationとcommercialをくっつけた造語も一般的になっている。

日本では、それらはマスメディアでは「PR」や「お知らせ」と表記されることが多い。それが消費者にとって十分な配慮かどうかの議論はあるが、報道機関ではないネットではそもそも事実と広告を区分けしようとする考えすら希薄である。

2014年5月22日

初夏のコンサート

サントリーホール主催のコンサートでテノールのまた従兄弟が歌うというので、大学の仕事をそそくさと片付け、夕方ひさびさに六本木へ出かけた。今日、彼は日本フィルハーモニー交響楽団をバックに4曲+アンコール曲を歌った。

また従兄弟といっても親子ほど年が違うのだが、サントリーホールの大ホールで朗々と歌う姿は大したものだ。身内びいきかもしれないが、日本を代表するテノールになると信じている。

2014年5月19日

自分でメソッドをつくり出す知性

初診だったので、遅くともお昼にはすべて終わるように早めに出かけたつもりだった。

1時間半ほど待たされて、まずは内科で診察。その後、血液検査、尿検査、レントゲン撮影を受ける。呼吸器科の医師による診察。吸入薬による治療。診断。点滴による治療。診断。肺機能検査。診断。

会計を済ませ、処方箋を手に病院を出たのは午後5時過ぎだった。もちろん昼食抜きで、その時は目が回りそうだった。

目の前にぶら下がった点滴薬

点滴を受けたのは生まれて初めてのこと。ベッドに寝ているだけで他にすることがなく実に退屈だったので、ちょうど持ってたキンドル・ペーパーホワイト(電子書籍リーダー)を針が刺さってない方の手で操作しながら岡田斗司夫『オタクの息子に悩んでます 朝日新聞「悩みのるつぼ」より』を読む。

実に面白かった。新聞に寄せられた人生相談に彼が答えるのだが、愛と工夫に満ちている。よくあるような、頭よさげで、もっともらしく、それでいて相談者の想いにまったく沿っていない大人の回答ではなく、相手の気持ちの底を掘り下げて掘り下げて、真に解決をしなければならない問題と現実的な解決法を示してやっている。

そこに行き着くための彼の方法論は独自だ。それらは学術的な裏付けはないが、とても分かりやすく、実際的で腑に落ちるものである。本か何かで読んで身につけた有効な方法論を適切な用途で用いて問題解決をするのも賢いが、自分で目的にあった独自の方法論を編み出すのが岡田は得意だ。しかもそれらが役に立つ。彼はある種の天才である。

2014年5月16日

地方の良さも相対的なのである

先日、本を読んで以来、一度じかに話をうかがいたいと思っていた『里山資本主義』著者の藻谷浩介さんとラジオの番組で対談をした。 

番組は、この土曜日朝8時15分からFM 79.5 Nack5「ビジネスの森」で放送予定だ。
http://www.nack5.co.jp/program_1262.shtml?date=2014-05-17
http://tatsukimura.blogspot.jp/2014/02/blog-post_16.html

彼は、日本の地方にある数々の里山の豊かさを力説する。中国地方の地方都市で生まれ育ち、東京の大学に通い、卒業後は都内で仕事をし、海外の大学院でも学んだという経歴は僕と同じ。

里山の良さと言っても、日本の若い人たちにはあまり実感がないだろう。彼らが、そうした場所で生まれ育っていても、また都会で生まれ育っていても。

僕自身、日本の地方の良さを本当の意味で感じ始めたのはそれほど昔ではないように思う。自分の年齢と、それなりに国内外の方々を見てきて初めてそれらのすばらしさや恵まれた環境に気付かされたといっていい。

絶対的な価値なんてそれほどあるもんじゃなくて、たいていのことは色んな比較の上で僕たちは評価を下している。

2014年5月11日

SNLが見られなくなってしまった

アメリカNBCが制作している長寿番組にSaturday Night Live(SNL)がある。ジャンルでいえばコメディなのだが、強烈な風刺が効いていてアメリカのリベラルな連中(特にNYを中心とする東海岸)の笑いの感度がよく分かる番組だ。http://www.nbc.com/saturday-night-live


日本ではHuluで見ることができたのだけど、日本での放映は終わりになるらしい。理由は、この4月にHuluの日本での事業権を日本テレビが買ったことがきっかけだろう。シーズン38をもって5月18日で日本からのSNLのすべての視聴ができなくなる。

Huluに毎月1000円ほどの料金を払っていた理由がなくなるので、解約することにした。もちろんラインアップには、他にも映画やテレビ番組があるにはあるが、どうも僕にはつまらないものばかり。

米国の人気番組は放映権料が高いから継続しなかったのかもしれないが、そこは営業努力で加入者を増やすなどして他にはない優れたコンテンツを提供していかなければ、きっとじり貧になるんじゃないだろうか。

今日からNHK総合テレビで、ダウントン・アビーが放映される。米HBOによる大ヒット作品である。番組の内容もNHK的だ。一方、SNLはといえば、番組内容から日本の地上波はちょっときつい。

システム上の抜け道を使った視聴サービスを提供しているところもあるようだが、どこか合法的に番組を提供してくれるところがないだろうか。Amazonがインスタントビデオで流してくれると簡単でいい。


2014年5月3日

優れたサービスデザインとしてのラウンド・アバウト

映画「The World's End」に、英国最古のラウンド・アバウトが出てきた。
http://www.bbc.com/news/uk-england-beds-bucks-herts-22246576
 
世界最古のラウンド・アバウトは英国のものではないらしいが、英国をクルマで走っていると、とりわけ地方都市や郊外のあちらこちらでラウンド・アバウトに出くわす。

ラウンド・アバウトでは道路が空なのに信号が赤だというだけで止まっている、というようなケースは発生しない。また、完全に一時停止せずに環道に入るチャンスが多いので走行に遅れが少なくなるし、環境への負荷も減る。

誰のアイデアか知らないが、実によくできた設計である。十字の交差点と違って信号機の設置の必要がないのがいい。日本では停電などの折、警察官が交差点に出て手旗で交通整理するが、もともとそうした必要はない。

交差点を「点」と考えるのでなく、植栽などを施した島(丸い面)にしてその周りを流れに沿って緩やかに回ろうと考えた発想がポイントである。実に優れたサービスデザインの例だといえる。

一般的なラウンド・アバウト


2014年5月2日

酔っぱらいとエイリアン

昨夜、レイトショーで観た「The World's End」は、予想外の映画だった。まったく予備知識をもたず、中年のお男たちが登場するノスタルジー&コメディー映画くらいに思って出かけたところ、映画は途中で妙なSFチックな展開に。監督も役者たちも知らなかったので、そうした展開は想像すらしなかった。

この映画、高校時代の悪友たちが当時育った町で再会し、高校卒業時になしえなかった町内の12のパブをすべて飲み倒すというストーリーが縦糸としてある。その最後の目的地(パブ)の名前がThe World's End。これ、アーサー王伝説で、アーサー王たちがサクソン人を相手に戦ったとされる12の戦いをモチーフにしている。

現代のネットワーク社会や画一化された企業サービス(典型例としてスターバックスがしつこく取り上げられている)への批判を横糸として織り込みながら、酔っぱらいたちがエイリアンたちを粉砕するというスラップスティックである。

下敷きにしているアーサー王伝説にしろ、インターネットやスターバックスに代表されるアメリカ型の経済モデルへの辛口の批評にしろ、いかにも英国の映画らしい。

http://wn.com/the_world%27s_end