2014年6月9日

CSRと情報公開とユニクロ(ファースト・リテイリング)の企業体質

いまではもうずいぶん昔になってしまったが、2000年を迎える少し前、ユニクロのフリースジャケットが国内で爆発的に売れた。製品は軽くて保温性に富み、値段も手軽だった。

2001年にファーストリテイリングは、年に2回だったと思うがフリースの回収を店頭で始めた。これはなかなか賢い選択だった。

圧倒的な量で世間に広まったフリース・ジャケット。ポリエステルで出来ているその衣料をゴミとして廃棄するのは環境への負荷になり、それに対しての環境保護団体の動きが気になっていた。

それに先手を打つように、環境への負荷を減らすためとしてリサイクルを行ったのである。回収された商品は、当初は燃料となったり工事用のシートなどに加工されていた。

その頃は、イトーヨーカドーなど大手のスーパーチェーンでも同様のフリースジャケットが数多く販売されていたが、ユニクロが回収するのはあくまでも自社のものだけ。リサイクルのために古くなった商品を持って店頭に訪れてくれる客は、彼らにとっては大変いいお客さまである。

古いユニクロ商品をリサイクルのためにカウンターのスタッフに手渡した多くの客は、そこで何か買い物をしていったことだろう。

その後、同社のリサイクル・プログラムは、対象が全品に拡がり、時期も通年になった。回収された商品はリサイクル以外に、アフリカの難民の人らに送られるようにもなった。たいへん結構なことである。

ところで、同社のサイトを見ていて、リサイクル商品の回収数のグラフが気になった。2013年度の回収数がそれまでのトレンドより大きくかけ離れていて、前年の2012年に比べると2倍以上の数値になっている(下記の上図)。

気になって、その数値(1217万枚)の中身を同社広報室に問い合わせてみた。要領を得ないやり取りに繰り返し付き合わされた後、最終的に同社の広報室が僕に示した回答は「単純な計算ミスです」だった。

今回の指摘をきっかけに、同社が訂正した2013年度の数字は802万枚で、つまり415万枚も「計算ミス」していたことになる(下図)。
http://www.fastretailing.com/jp/csr/environment/recycle.html
http://www.fastretailing.com/eng/csr/environment/recycle.html

彼らに連絡する前に掲載されていたグラフ

連絡後、いつの間にか訂正された同サイト上のグラフ


CSR活動を積極的に行うことは好ましいと思っている。いまではこうした企業サイトにその活動内容や実績を載せるだけでなく、年次報告書以外にCSR報告書を作成してステークホルダーやメディアに配布している企業も多い。

「単純な計算ミス」を責めるつもりはないが、外部から指摘があるまでこれほどの数値の大きな変動について疑問を抱かなかった同社のCSR部門や広報部門は鈍い。自社サイト上の棒グラフを見れば誰でも「あれっ」と普通感じるはず。

数字を確かめるための連絡をした時は、こちらの身元や質問をする理由を何度も何度も何度もユニクロは聞いてきた。そして最後に、彼らは「計算ミスです」と素っ気なく返答した。

その後確認したら、彼らは自社サイト上の数字と表(上図)をさっさと修正していた。普通だったら「ご指摘ありがとうございました」の一言もあってしかるべきだと思うんだけれど、このダンマリの姿勢はどうなのかね。

同社のサイト上には、以前の表示(数字)が間違っていたという「訂正のお知らせ」などは一切ない。それは、自分たちにマズいことはさっさと書き換えて知らん顔していれば済むと考えているから。この企業の体質がよく出ている。

たまたま僕は、彼らが修正する前のグラフをスクリーンショットで保存していた。これは永遠に残る。英語のサイトだけだけど、内容はもとの日本語サイトと同じだ。

こうした可能性があることすら想像しなかったFR社担当者のお粗末さを笑う。製品はよくできてるんだけどね。