村上龍が亡くなったことが一週間前に発表された。74歳という早い死。死因は公表されていない。
つねに社会に対峙し、テレビ番組のMCになってからも書くものは流行や時代に抗うものが多く、そのスタンスは変わることがなかった。
そんな彼のことでとりわけ個人的に覚えているのは、1982年に起きた日航機の逆噴射事故についての村上龍のコメントである。
その年の2月、東京湾(羽田空港沖)に日本航空機が墜落した。滑走路に向かって侵入している途中で機長がエンジンを逆噴射させ、機体は機首を急激に下げたまま東京湾に墜落し24人がなくなった。
墜落事故の直後だったか、テレビに片桐という機長が映ったとき、村上龍がその映像に映った男の顔を見てこんなコメントをした。
「彼はこれまで(逆噴射を)ここでやったらどうなるかと想像し、ずっとやってみたくてしかたなかったんだろう。だから今、あんなにすっきりした顔をしている」。報道のカメラに映った片桐機長の一瞬の表情からそうしたことを感じられる直感力に感心した。
すぐれた作家という存在の秘密に触れた気がして、強い印象が残った。