金曜日に公開された『ONODA』は、フランス人のアルチュール・アラリが脚本を書き、監督した映画だ。
津田寛治が演じるルパング島の小野田さんは、精悍で危なさそうでキャラクターとしては魅力的だ。劇場に足を運ぼうと思いながら、小野田さんについての本を以前買っていたのを思いだし本棚から手に取った。
それは『小野田寛郎は29年間、ルバング島で何をしていたのか』と題する本だが、意外な結論に驚く。著者が書いているのは、あくまで推測である。しかし、状況や時代背景を考えると、十分納得がいくものだ。
その具体的な内容はここでは記さないが、これまで小野田さんはどうして29年間もフィリピンのルパング島にいたのかという謎が解けた気がした。
ルバング島は東西10キロ、南北27キロあまりの島だ。29年間をずっと過ごすには小さすぎる。なぜ脱出しなかったのか。
小野田さんは終戦を知らなかったのでずっと任務を続けていた日本兵士の鏡と評価する向きが多いが、彼は戦前は海外勤務をしていた商社マンで英語が理解でき、フィリピンでの任務の前には陸軍中野学校で諜報の訓練を受けたインテリだった。そして、島の密林に暮らしながらも、食糧や物資の調達のためにフィリピン人の民家に忍び込んでいた彼が、29年間ずっと終戦を知らなかったというのは不自然だ。
彼は終戦のことくらい当然知っていたが、ある<任務> のために世間に出てこれなかったというのがこの本の指摘するところ。
「なあんだ、そうか」というのが正直な読後感だった。おかげで映画を観に行く気が萎えてしまった次第。