2021年10月19日

真鍋淑郎さんの発言について

2021年のノーベル物理学賞をプリンストン大学の真鍋淑郎博士が受賞した。

彼は大学院修了後に日本の気象庁に入ろうとしたが採用されず、アメリカの気象局に就職した。その後、アメリカで地球温暖化対策につながる気候変動の予測モデルを開発し、今回、ドイツの研究者とともにノーベル物理学賞を受賞した。

真鍋さんは、受賞後のインタビューで日本に帰りたくないと語った。「日本に戻りたくない理由の一つは、周囲に同調して生きる能力がないからです」と冗談めかしたが、その本音をわれわれは考えなければいけない。

彼は帰りたくない理由として、「日本では人々はいつも他人を邪魔しないように気遣っています。とても調和的な関係を作っています」と述べ、一方アメリカでは「自分のしたいようにできます。他人がどう感じるかにも気にする必要がありません」と比較して語った。

「米国では、他人の気持ちを気にする必要がありません。私も他人の気持ちを傷つけたくはありませんが、私は他の人のことを気にすることが得意ではない。アメリカでの暮らしは素晴らしいと思っています。おそらく、私のような研究者にとっては。好きな研究を何でもできるからです」とし、「私はまわりと協調して生きることができない。それが日本に帰りたくない理由の一つです」と明言した。

90歳になる真鍋さんは、ご自身が米国籍を取られたこともあり、もう日本については諦めているのかもしれない。 

ノーベル賞を受賞した碩学のこの発言の内容だが、その後国内でこのことはほとんど議論されていないように思う。半世紀以上も海外から日本を眺めてきた科学者のこの「観察」をないがしろにすることは、日本全体がガラパゴス化をさらに深めることにつながる。

本当は、彼のこの発言はとても重いはずなんだけど。

真鍋淑郎さん