2026-03-08
『話す力』『聞く力』『叱られる力』についての話
2026-03-03
自分自身の〇〇を持つ
ヴィオラ奏者・今井信子さんへのインタビュー記事を読む機会があった。
ヴィオラは日本ではバイオリンに比べて注目度の低い楽器だが、甘くふくよかな響きを聞かせてくれる弦楽器だ。その音域は人の声に近く、聴く人の心に響く音色である。
彼女はオーケストラに属さず、ソリストとして長年活躍してきた。もともとバイオリンを弾いていたが、音大時代に演奏旅行で訪ねた音楽祭(ボストンのタングルウッド)でヴィオラのソロを聴いて虜になり、バイオリンから転向したらしい。
当時の日本ではこの人といった指導者がいなかったため渡米。エール大学の大学院で学び始めたが1年で辞めてNYのジュリアード音楽院に入り直した。
その後イリノイ州の弦楽四重奏団で経験を積み、その後は欧州へ拠点を移す。そうやって、道場破りのような武者修行を行いながらヴィオラ奏者の腕を磨いてきたという。
今は自宅からネットで簡単に楽譜をダウンロードできるし、ストリーミング・サービスで聴きたい音源にいくらでもふれることができる。だが当時は、楽譜も音源も簡単には手に入らなかった時代。
そうした不便な時代を、彼女は最高だったという。
すべて自分で見つけていかなければならなかった。自分で譜面を探して、音源に頼らずに演奏をつくり上げていく。その作業は何よりも楽しかった。不便だったけれど、最高でしたね。
それは彼女にとって、想像力を働かせながら自分の音を探し求めることだった。
誰かの音源を聴くのは簡単です。でもそればかりだと、真似をするだけになってしまいますから。
ヴィオラ奏者として、今井さんはつねに自分の音を持とうとしてきた。
いまは誰もが真似することだけ上手になっている時代だ。だが音楽家でなくとも、その気持ちがあれば誰でも自分の発想を持つ、自分の表現を持つ、自分の言葉を持つことはできる。
AIにそうした大事な作業を奪われないようにしないと、と思う。
2026-02-21
顧客にとって便利なのはどっち
たまたま2つのクレジットカードの有効期限がそれぞれ近づき、切り替え用のカードが手元に送られて来た。一つは日本の銀行から、もう一つはアメリカの銀行。
これまでもそうだったが、日本のM銀行からはある日突然に「簡易書留」が来た。郵便局からの配達があった日は留守だったので、不在連絡票をもとに後日の再配達を依頼。で、指定日は受け取りのサインをするために自宅で待つことに。
ほぼ同じタイミングで、citibank(米国)から、まもなく新しいカードを発送する、発送元が記されてない真っ白の封筒で送付する、とのメールが来た。また数日後には、カードを本日発送したとのメールが来た。
翌週、その通りの封筒が届いた。入っていたカードはそのままではクレジットカードして使えない状態で。つまり、ただのプラスチックのカード。
アクティベーション(有効化)用のURLにアクセスするか、QRコードをスマホで読み込んでカード番号、ユーザーID、パスワード、口座番号を打ち込む。そうすることでクレジットカードとして使えるようになる。
これなら普通郵便でそのまま届くから、自宅で受け取りのサインをする必要はなく、セキュリティも確保されている。
有効化の手続きは2、3分ですむ。しかも、現行のカードはまだ1か月以上使えるのだから、自分の都合がいい時にやればいいだけ。
なぜ日本の銀行は受取人サインが必要とされる書留の郵便で送ってくるのだろう。それは一体誰のため?
このあたりが企業のサービス思想の違いである。
顧客の利便性の点で、どちらのやり方が優れているかは明らかだ。もし客の側が書留送付を好んでいるから、というのを理由にするなら、カード送付前にどちらを選ぶかユーザーに尋ねて選択してもらえばよい。
それだけでも顧客の満足度は確実にあがるはずなんだけどね。どうしてそれが分からないんだろう。
2026-02-20
報奨金付きの通報制度をどう見るか
茨城県は2022年から2024年の3年連続で不法就労者数が全国で最多だった。
だからどうした、と思うのだが、行政の長はそう考えないらしい。県知事はそれを不名誉と考えたのだろう。そしてその不名誉の座を返上するための対策として、不法就労の外国人に関する情報を市民から募ることで積極的な摘発につなげることを決めた。
その目的で4月に創設するのが通報者に賞金を与える「通報報奨金制度」であり、担当部署である県の外国人適正雇用推進室の職員によると、既に制度のスキームはほぼでき上がっているという。
予算が絡むことなので、議会の承認はどうなっているのか訊ねたら、今月下旬か来月あたまの議会にかけ、そのまま通ると考えているとの回答。そのとき口にはしなかったが、なるほど茨城県は自民王国だからな、と思ってしまった。
摘発された外国人労働者は、国外退去を国から命じられるかもしれない。それについてどう思うのか訊くと、少し言葉をためらった後、自分たちは通報をもとに不法労働者かどうか確認し、その後警察に身柄を渡すだけだと。
この制度、通報者に金が支払われる点が気になる。つい先日の衆院選でも、内容の正否やイデオロギーにまったく関係なく、ただ広告費目当てのアクセス数稼ぎのための切り取り動画が世の中に蔓延したことを思い出す。
小遣い稼ぎでそうしたことを平気でやる連中は、今度は外国人と見れば、彼らがどのような人物なのか確認もせず、報奨金目当てで通報するかもしれない。
またそうでなくてもこのような制度ができることで、人々は自分の周りにいる外国人に対して彼らをひょっとしたら不法就労者ではないかという目で見るようになり、日本人と外国の人たちとの間の亀裂がさらに大きくなっていくことが危惧される。
茨城県内の不法就労者は農業分野を中心にした労働者が多いという。その根本のところが何なのかを考え、問題を解決することの方が重要なのではないか。
不法就労者を雇用している農業分野の雇用主たちは、ただ安い労働力が使えるという理由でそうした外国人を雇ってるのかもしれないが、一方で農業を営んでいく上での働き手そのものが逼迫し、彼らで埋めなければ立ち行かなくなっている現状があるのかもしれない。
その場合、農業分野に従事する不法就労者と呼ばれる労働者をただそこから排除するのが適正な措置なのかどうか疑問がある。
そもそも不法就労に従事する外国人は、入国管理局によって入管難民法違反とされ退去強制手続き等が取られた人たちである。だから、まともに働こうにも働けないのだ。糊口を凌ぐためにはそれが不法と知りながらも、働ける口があるならばそれに頼るしかなくなる。
茨城県の大井川知事による今回の決定は、昨今の移民排斥に向かう政治の流れに乗ったものだろうが、本来は人権の問題も含め、これから日本がどうやって国内にいる外国の人たちと関係を築いていくのかを考えることが先のように思われてならない。
