2026-09-14

不可能な公約を訴える県知事候補が支持される理由

今回の沖縄県知事選で、古謝玄太候補が現職の玉城デニー候補を大差で破って当選をきめた。選挙結果は民意の表れととるしかないが、はたして大丈夫だろうか。 

というのは、当選を決めた古謝が主張した「10年で(沖縄)県民所得を2倍にする」という公約の実現可能性を危ぶんでいるからだ。

選挙公報には堂々「手取りを2倍!」「子育て支援を2倍!」「観光消費を2倍!」とある。

 

10年目に一気に2倍(つまり成長率100%)になるなどあり得ないので、毎年成長を続けて複利でプラス100%になると仮定すると、そのために必要な成長率は年7.2%。これを10年間継続する必要がある。

県知事が変わったことでそれが実現されるかというと無理だ。沖縄の過去10年の年平均経済成長率は1%未満なのだ。

参考まで他県を見ても、1950〜70年代の、いわゆる戦後高度経済成長期の時期に10年で所得を2倍に伸ばした都道府県はいくつかあるが、それ以降はどこもない。

しかもより細かく見れば、手取りを2倍にするためには県民所得が2倍に増えただけでは実現できない。増えた所得の多くは企業に蓄積されたり県外の株主の方へ行き、また税金もそれだけ増えるのだから。  

古謝は東大を卒業して総務省に入省した元官僚であり、そうしたことが判らないはずはないし、複利計算ができないとも思われない。なのに平気で不可能な公約を述べて有権者を釣った。

どうせ10年後は、自分はもう知事の椅子には座っていないから平気だ、ということか。だとしたら、誠実さに欠けていないか。

念のために言っておけば、手取り額ではなく県民所得の額を、しかも実質所得ではなく名目所得のレベルで数字を2倍にすることは理論的には可能かもしれない。ただ、そのための唯一の可能性は、超スーパーインフレに持っていくこと。当然その場合、一般県民の生活は崩壊する。

だが今回、沖縄でより多くの有権者(投票者)は古謝を選んだ。 

候補者の公約が実現可能なものかどうかは数字を少し吟味すれば判ることだが、そうした理屈とは関係なく、住民としての「気分」の点で県民は足下の経済的閉塞感に耐えられない状況にあった、ということだろうな。

そうしたものが今回の投票行動に大きく影響していたとしたら、そこに沖縄県が現在抱えている最大の問題があるように思う。