88歳になるリドリー・スコットの最新作。2012年に刊行されたピーター・ヘラーのヒット小説が原作である。原題は、 The Dog Stars。
舞台は近未来(映画の中ではちらっと2035年の米国であることが語られていた)。地球規模のパンデミックで人類のほとんどが死滅し、生き残ったごく少数の人間が「何か」を求めて生きていく物語だ。
主人公は、最愛の妻を疫病で亡くし、今はかつて2人で飼っていた犬(ジャスパー)と一緒だ。もとはメカニックの仕事をしており、1956年型のセスナを飛ばし、自分の手で機械を直したり操作することができる。
廃れた小さな空港の格納庫に住み、やけに銃の腕が立つ元軍人のバディともに暮らす、彼は、次々襲いかかってくる生き残りのクズ人間(映画の中ではroach(ゴキブリ)と総称されている)を仲間とライフルで返り討ちにする。
人間がほとんど滅んでしまい、街には野犬となった犬がうろつくだけで、人間の活動は消え去ってしまった。そんな世の中で各所各所に生き残った人間がお互いをうかがいながら生きているという、どうしようもない殺伐とした世界 ーディストピアー だ。
ジャスパーもなくした主人公は、かつての静かだが満ち足りていた家族の思い出だけを頼りに生きるようになるが、なぜ自分が生きているのか(生き残ったのか)を考えるようになる。彼が生きているのは、今では一杯のコーヒーが何よりもありがたい世界なのである。
主人公は途中で出会った女性と親しくなり、夜空を一緒に眺め、星座にまつわる話をする。悠久の時の中で、自分たち人間のはかない命と一生の意味を頭に思い描くわけか。
原題のThe Dog Starsは、主人公が見上げる夜空に彼が見つけたジャスパーの星座のことなんだろう。
アクション・エンターテイメントでもあるが、リドリー・スコットらしい深遠なテーマを感じさせる一作。