2022年6月10日

気仙沼で漁師になった彼女

好きな声というのがあって、僕にとってのそうした声の持ち主の一人が松たか子だ。それが理由で、彼女がナレーションをしているNHK BSプレミアムの『新日本風土記』を見る。

今日のその番組だが、テーマは「気仙沼」。番組の冒頭で、いきなり知り合いの娘さんが画面に現れた。

実は、新聞のラテ欄で「気仙沼で都会から移住し漁師になった女性」という番組説明を見たとき、ひょっとしたら・・・、とは思っていたのだけど。

彼女は横浜生まれの横浜育ちのはずだ。大学卒業後は青年海外協力隊の隊員として何年間かアフリカのマラウイで活動をしていたと聞いていた。それだけで、突然「私、漁師になる」と言い出したとしても、なんとなく納得できそうな感じがする。

僕は彼女に直接会ったことはないのだが、彼女のお母さんにお世話になったことがあり、その子が震災復興のボランティアとして宮城でいろんな活動をしているとか、数年前から漁師になりたくて気仙沼の船頭のもとに通っていると話には聞いていた。

テレビに映る彼女は、華奢な見かけではあるがとても逞しく見えた。網やロープを日々扱う彼女の手がアップで映る。若い彼女の手は、カサカサで荒れ放題だ。爪のところから血が滲んでいる。彼女はそれを喜んでいるわけではないが、ちょっとした勲章のように感じている節も窺える。

番組終了後、彼女の母親に「NHKの番組、見ましたよ」とメールしたら、「日焼けがどうの、美白がどうのとおしゃれにばかり気をつけていた高校生時代とは全く違ってますね。なんだか母の私にも手の届かないところまで行ってくれたようで嬉しいです」と返信があった。

思いもしなかった夢を追いかける娘が心配で仕方ない一方で、親元から遠く離れ、親たちの想像を超えた逞しさで自分の生き方を突き進む娘に、大きな希望を感じているように僕には思えた。

そんな彼女には、赤の他人ながらとにかく元気で、思いっきりやってほしいと願っている。