2022年6月13日

男女役員数の均衡化義務の意味

日本の話ではない。まずはEU(欧州連合)を中心とした話をしよう。

EU各加盟国と欧州議会が、それらの地域において上場企業の女性取締役比率を増やすための規制案に合意した。

対象となる企業は、2026年6月末までに社外取締役での女性比率を40%以上にしなければならない。このことは、各国で2年以内に法制化することになっている。

また、社外取に限らず全取締役の枠組みで見ると、男女それぞれの取締役の比率を33%以上にするという方針になった。

男女平等、機会均等の考えのもと、女性が企業の取締役にとどまらず、あらゆる場で責任のあるポジションに就くのは大いに結構だと思う。

だが同時に、こういった単純極まりないクオータ(割り当て)の発想には、大いに疑問がある。

先のEUと欧州議会の合意だが、形式的に数字を作るのは阿呆でもできる。たとえば、社外取締役をすべて女性にする。そうすれば、社外取締役の女性比率40%以上も、また全取締役の女性比率33%以上もクリアできる。だが、それが果たして企業経営にとってプラスになるか。

なぜか。今回、そもそも上場企業に限ってのルール設定をしているのが、それが納得いかない。上場企業と非上場企業でなぜ線引きするのかの説明がなされていない。

また、日本企業の社外取締役に見る女性の状況は、以前から極端なインフレ状態にあると言われている。東証の基準をクリアすることを目的としているため、その多くは取締役の内実を伴わない形式優先との批判はあながち間違いではないだろう。

以前、建設機械メーカーであるコマツの相談役、坂根正弘さんと対談したときのことを思い出した。彼は「取締役に女性をつけるのは、難しいことではないんです。社外取締役は、どこかから探してくればすむ」「だが執行役員に女性をつけるのは、社員の採用から始まって、時間をかけて育成しなければならならず、一朝一夕にはいかない」と話してくれた。まさに正論だと思う。

形式要件を満たすために女性の社外取締役を増やす企業があとを絶たないが、その結果、そうした企業が今後どうなっていくか。

IMDなどの調査結果を見るまでもなく、日本企業の国際的な競争力が急低下してる状況の下で、こんな発想で見せかけのガバナンスを行っていることを「経営」だと思っているマネジメントが実に多い。