ノーベル経済学賞候補と言われた森嶋通夫さんは、日本と英国を行き来しながら日本の行く末について考察していた。
その彼は、1999年に著した「なぜ日本は没落するのか」で50年後、つまり2050年頃の日本について「国際的発言力のない没落した国に落ちぶれている」と予言した。
なぜ50年後を彼は予言できたのか。あるいは、予言できると考えたのか。おそらく彼は、その当時の学生たち、二十歳前後の若者を見て50年後の日本の行く末を予言したのだ。
日本では政治の世界においても経済の世界においてもリーダー的ポジションにいるのは60代後半から70代のオッサンが中心であり、50年後にどうなっているか、彼は当時の教育の場の状況とそこにいる若者らを見て予測したのである。
日本の戦後の学校教育は知識偏重で「価値判断を行う能力」「論理的思考で意思決定を行う能力」の涵養を疎かにしていて、そして50年後にはそれらの教育を受けた人間が政官財の指導者になっているはずだから日本は没落する、と考えた。
森嶋の基本的な認識は、現在の日本人は堕落したという点にある。それを断定的に述べることはここではできないが、政治はもとより経済においても、日本は没落した三流国家に成り下がってしまったのは事実だ。
彼が云う50年待たず、わずかその半分以下で到達してしまった。森嶋は、国が栄えるかどうかはその国民性にあるとしている。想像力に欠けた硬直化した発想と、右へ倣えの意思決定を範とする日本という国のスタイルがその典型である。