ローリング・ストーンズのチャーリー・ワッツが、8月24日に亡くなった。80歳。彼は50年以上にわたってストーンズの音楽を支えてきた。
ブルース・スプリングスティーンによれば、「ミックの声とキースのギター、それらに引けを取ることなくチャーリーのスネア・ドラムこそがストーンズの音だった」。ロックバンドのドラマーは、華やかで重要なポジションだ。その音量もそうだし、ステージでは視覚的にも目立つ。曲の全体を通じてドラムは音を奏で、バンド全体を支える。だからか、髪を振り乱し、暴れ回って演奏するロック・ドラマーはたくさんいる。
チャーリーは違った。淡々とやる。かっちりと仕事をする。だからこそ、その前でミックもキースも自由にやれた。
チャーリーのドラミングの特徴に、リズムをわずかに後ろにずらす奏法がある。それがバンド全体の独特のリズム感やうねる感覚を作り出した。ソフトウェアのプログラムではできない、チャーリーのものだった。
バンドは不思議な生き物のようなものである。単なるパーツ(メンバー)の寄せ集めではない。
フレディ・マーキュリーが亡くなった後、フリーやバッド・カンパニーで活躍したポール・ロジャーズがクイーンのボーカリストとして一時参加したが、やはり「違った」。
ポール・ロジャーズが稀代のスーパー・ロック・ボーカリストであることは疑う余地がない。(僕も大好き)。だが、違ったのだ。
同様に、チャーリーなきストーンズは、もう転がり続けることはないだろう。
Amazonには、今から30年前に僕が日本に紹介した、フィリップ・ノーマンによるストーンズの本『ローリング・ストーンズ―その栄光と軌跡』(原題 The Life and Good Times of The Rolling Stones)がまだ売られていた。懐かしい。