2009年10月2日

短時間「制」社員

台所で鍋を磨いていたら、後ろで「タンジカンセイシャイン」という言葉が聞こえた。どこかで聞いた言葉。学生時代のことだから、もう30年近く昔のことだ。僕も「タンジカンセイシャイン」だった。

勤務先は、東京国際電話局、今のKDDIである。月水金の週3日、夜8時から深夜0時まで、新宿のKDDビル(当時)の中で国際電話のオペレータの仕事をやっていた。アルバイトみたいな勤務体系だけど、ちゃんとした正社員で組合にも入れられ、会社の健康保険証ももらっていた。

当時はまだ国際ダイヤル通話がそれほど一般的でなく、KDDのオペレータを経由しての指名通話が一般的だった。宛先は世界各国だったけど、多いのは米国と韓国と台湾あたりだった。3分間の基本料金が3600円という、今では信じられない値段だった。

KDDとしては、一般の正社員に深夜勤務をさせることがコスト高だったのか、大学生をトレーニングし、社員として雇って使っていた訳である。その頃のKDDは、まだ国際電信電話株式会社法に則って運営されている半官半民の企業だった。

夜だけで、しかも毎日行かなくても良かったのは僕ら学生にとっては有り難かった。通常の勤務形態とは異なるから、短時間制社員と呼ばれていた。昨年だったか、KDDIは交換手経由の国際通話サービスを完全に止めたので、もうこうしたかたちで働いている人はいないんだろう。

さきのテレビのビジネス番組の特集は「新しい働き方」で、そこで紹介されていたのは短時間正社員だった。昔は「制」だったが、ここでは「正」だ。つまり、正社員に重きが置かれているわけで、この背景には短時間勤務の労働者、すなわちアルバイト、パート、非正規雇用という考えがある。
 
人の働き方(働かせられ方)から、その時代が見える。