2021年1月11日

それでも諸手を挙げて、EV車が好ましいと言えるか

先月、日本政府は2030年代半ばに日本国内の新車販売のすべてを電気自動車にするという方針を打ち出した。つまり、あと15年ほどで国内では「ガソリン車販売ゼロ」にもっていくと言っている。

50年までに二酸化炭素(CO2)など温室効果ガスの排出を実質ゼロとする政府目標の実現に向けての発想だが、相変わらず深くものを考えず、ただ米国・欧州・中国の動きを見て自分らも何かやっとかなきゃならないからという感じだ。

今回の北陸の大雪は、豪雪と呼ぶにふさわしい。新潟県上越市では、7日以降の総降雪量が1.8メートルに達した。1500台の車が立ち往生し多数の負傷者を出した2018年の「福井豪雪」に匹敵するという。陸上自衛隊が出動して車両を牽引したり、食料や携帯トイレを配布するなどの活動を続けている。 

路上で車が進まないまま中に閉じ込められた人たちは不安だろう。車はエネルギーがなければ動かないだけでなく、暖房も効かないし、スマホも充電できないのだから。

特にこうしたとき、電気自動車の利用者はいっそう心配だろう。排気熱を車内に送ることで車内を暖めることができるガソリン車に比べ、暖房のためのエネルギー効率が悪い。バッテリーが切れたら、車が動かないだけでなく暖房もすべて切れ、生死に関わることになる。

ガソリンなら携行タンクで持ち運びできるし、救助隊から手渡しで配布を受けることもできるが、電気自動車は充電スタンドが設置されている場所まで自走するか、充電車両に来てもらわなければアウトだ。 

このような豪雪に見舞われるのは、日本のごく一部の話ではない。北陸、東北、北海道をはじめ、気象条件次第でこうした大雪災害に遭うのは日本の常識だ。

日本の車がオールEVになりガソリン車が駆逐されたとき、どのようなことが起こるのだろう。自分たちの足下を見れば、「ガソリン車販売ゼロ」など軽々に世界向けて謳う必要性がないことは分かるはずなのだが。

そもそも、ガソリン車か電気自動車かという選択肢が疑問だ。先日、近くの幹線道を走行する車を観察した。昼間の10分、片車線だけであるが通行車両数とその車の乗客が一人(つまり運転者のみ)の台数をチェックした。

通行した車両が251台、そのうち乗車ひとりの車両(バスやトラックを除く)は192台(76.5%)。つまり4台に3台は、運転するドライバーひとりしか乗っていない。

1人で移動するのなら今のような乗用車はやめるようにできないか。公共交通機関を利用するか、自転車やモーターバイクを使うか、相乗りするか。

自動車メーカーには、今のクルマが当たり前だと考えるのではなく、一人用の省エネに優れた新しい発想の移動用機器を早く開発してほしい。

動力源がガソリンか電気かという2者択一の問題を解く前の、われわれが解決すべき課題だ。