先日、このブログで「日本製コロナワクチンは、どこへ行った?」という記事を書いたが、日本で新型コロナワクチンの開発が遅れているのは、開発元の製薬会社だけが原因ではないようだ。
ワクチン開発を進めていた塩野義製薬、第一三共、KMバイオロジクス(明治ホールディングス)の各社は、いずれも開発計画を見直し、延長した。またアンジェス社は、従来型ワクチンの開発自体を中止した。
その理由は、承認申請ができなくなったから。というのは、コロナ禍という未曽有の状況に対処するため、通常の申請とは異なり、治験の途中であっても安全性と有効性が推定できれば申請できる「緊急承認制度」の活用が推奨され、それにそって準備していたはずが、それができなくなったからだ。
厚生労働省が、製薬会社に対して第1〜第3段階の通常の治験手続きを終わらせたのちに申請するよう求めたのである。
なぜ方針転換がなされたのか。関係者によると、厚労省の役人が「緊急承認制度」で承認したワクチンによって万が一副作用などの被害が出て訴えられたら自分らが困る(責任を問われ、出世が止まる)と思ったから、というもの。
だから、ワクチンの有効性や必要とする症例数といった指標を何度にもわたり変更した。試験の追加も製薬会社に課した。
国産ワクチンを開発することで国民の命や健康に寄与することより、自分らが訴えられるかもしれない訴訟リスクを最小化する、あるいはリスクの完全排除が優先されたわけだ。
これはまた別の意味で、日本の国力の衰退の典型例のひとつである。