2022年11月23日

替え玉受検から企業と大学の問題を考える

企業が行う採用試験のウェブテストを大学4年生の替え玉として受検したという電力会社の社員が逮捕された。

その男、ウェブテスト代行を掲げるサイトで「京都大学大学院卒/元外コン勤務/ウェブテ請負経験4年、1人で4000件以上、通過率95%以上・・・」と掲載していたが、外コンというのは外資系コンサルティングのことか。ウェブテとはウェブテストのことか。文字数の制限があるわけでもないのに妙に縮めて言うやつは、まず胡散くさい。

その容疑者の実績(?)は、4年間で4000件以上を替え玉したというからスゴイ。これだけ数をこなせば、間違いなくベテランだ。どうせテスト業者が作問する内容など似たり寄ったりだろうから、慣れてしまえば目をつむっていても解答できるに違いない。通過率95%は嘘じゃないかもしれない。

さらに驚いたのは、依頼した方の学生は企業23社のウェブテストを彼に替え玉させたこと。23社(あるいはそれ以上)も受けるんかい。たいへんだな〜。

企業での導入が始まって20年ほどになるらしい。今では上場企業の約8割がウェブテストを実施しているとか。

そして企業へのアンケートの結果によると、採用担当者の約6割がこの種のテストに関して不正行為の懸念があると回答しているが、彼らはSNS上にウェブ受検代行を謳うサイトが溢れているのも知っていながらそのやり方を延々と続けている。

テストを実施する理由を企業の担当者は、入社後の適切な配属のための貴重な情報などと言っているが、そうであれば採用後に行えばいい。

結局、問題を作成したり、その実施を請け負っている就職関連企業が儲けているだけのはなし。企業は恰好のカモになり、学生は不要で面倒な手間を負わされているのが実態だ。

人事部による4月の一括採用なんかやっているからだろうな。発想を変えて、人を必要としてる部署が人を募集する。「こんな奴が欲しい」ときちんと考えている現場担当者が候補者を選ぶようにすればいい。人事部門は面倒な手続き等のサポート業務を行う。そして採用後は、インターンとしてある一定期間その人物の働き方を見て、本採用の条件等を判断すればいい。

旧弊から抜け出せず、抜け出そうともせず、誰もがヘンだと感じながらぬるま湯から出ようとしない。採用する企業、採用されたい学生、その間で儲けようとする就職関連業者、学生につけ込むテスト代行者、どれもこれもだ。

えっ? 大学はどうなってるのかって? 

そうだね、そもそも企業がこうしたテストを大学卒業予定者に課すのは、大学の成績証明書の中身が社会で信用されていないから。

確かに大学の成績など信用できないのが、昔からの一般的な日本の現状だ。わが国の大学教育の構造的問題。そこを少しずつでも変えていかないことには始まらない。