2025-11-01

日本企業はアマゾンを模範とするか、他山の石とするか

アマゾンが1万4,000人の従業員を削減すると発表した。半端な数じゃない。業績は好調なのに、なぜ今アマゾンはそうした多数の人員整理をするのか、各方面から疑問の声があがったのも当然だ。

アマゾンの作業員で思い出すのは、映画「ノマドランド」(クロエ・ジャオ監督)で描かれた巨大倉庫で働く人たちだ。様々な理由から住む家を失ったり、家族と別れて暮らすようになった人たちが、ノマドのようにバンでアメリカ大陸を流れながら生きていく姿が描かれた映画で、アマゾンの倉庫は彼らの命綱ともいえる職場だった。 
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同社の社長、アンディ・ジェシーはCNNのインタビューに応え、今回の人員削減は金銭上の理由ではなく、アマゾンの企業文化のためだと説明していた。

彼によれば、アマゾンは以前よりもはるかに多くの人員を抱えるようになり、階層も増えていった。その結果、気づかないうちに(気づけよ!)実際に仕事をしている人たちの主体性が弱くなっきたからだと。
 
で、それを改めるためにに今回人員削減をするというが、それは本当だろうか。アマゾンの今四半期売上は前年同期比で10%増えて1,800億ドルに達している。

日本企業であれば、少なくともこうした好業績を上げている時期に大量の人員整理は行わない。ただし、それが企業経営として良いことなのかどうかという話はまた別だ。
 
僕は、アマゾンの経営者が言った人員削減が財務的な理由ではなく、アマゾンのカルチャーを保つためのものだという説明を信用はしていない。カルチャーという、取ってつけた理由はあっても一部だろう。

アメリカの企業の強さは、経営者がこうしたドラスティックな人員削減を臆さず行えるところにある。日本の多くの経営者は、こうはいかない。アマゾン経営者の今回の意思決定は、日本企業の温情主義ともいえる経営スタイルの是非を問いかけている。

日本の企業経営者は、アマゾンのこうした意思決定を模範とするのか、それとも他山の石とするのか。
 
もし日本企業が、一部のアメリカ企業のような強烈な競争力を身につけようとすると、今回のような意思決定をしていくこともまた必要となっていく。