2019年7月15日

見習うべきひとつの男の生き方

ロバート・レッドフォード主演の「さらば愛しきアウトロー」を横浜のkinoシネマで観る。ここは初めて。小振りだがきれいで、落ちついて映画が観られるいい劇場だ。
映画の原題は The Old Man & the Gun。なんとなく彼の出世作であるButch Cassidy & Sundance Kid、邦題「明日に向かって撃て」にタイトルのスタイルが似ている。

この映画は、レッドフォードが役者としての引退作だと宣言して出演した作品。彼は現在82歳。これからはスクリーンに出ることはなく、監督や製作担当者として映画にかかわるのだろう。

そう言われて観れば、スクリーン上のレッドフォードもさすがに老いた感じは否めない。1936年生まれだもの。だけど人が年をとるのは当たり前で、共演しているダニー・グローバーは73歳、トム・ウェイツは70歳である。映画の中でレッドフォードが演じたフォレストがたまたま出会い、心引かれる女性を演じたシシー・スペイセクも70歳だ。ホントこの映画出演者の平均年齢は高い!
さて、彼が演じたフォレスト・タッカーは実際にアメリカにいたという銀行強盗。なんと65年間にわたり銀行強盗、逮捕、脱獄を繰り返してきた実在のアウトロー。ただ一度として人を傷つけることなく銀行強盗を行ってきた、伝説の人物である。
雑誌「ニューヨーカー」に書かれた彼のそうした逸話を読んだレッドフォードが、その映画化権を取っていた。そして今回、彼の主導のもとで製作されたのがこの映画である。
学生時代、「明日に向かって撃て」「追憶」「スティング」はいずれも高田馬場にある早稲田松竹で観た。当時、その映画館で繰り返し上映されていた覚えがある。それだけ当時の学生らに人気があったのかもしれない。
レッドフォードはその後ハリウッドで大成功を遂げる。しかし彼自身は、ハリウッドに与することをよしとせず、ユタの田舎でインディペンデントの映画作家を支援するためにサンダンス・インスティテュートを設立し、映画祭(サンダンス映画祭)を開くなどをしていた。
冒頭、「この映画はほとんど実話である」という字幕で始まる。そういえば「グリーンブック」もほとんど同じ字幕で始まったが、その時と同様に見終わった感想としては、やはり本当だろうかという思いは拭えない。アメリカ人でもない僕は、なるほどこんな話があったんだろうなという感じで理解するしかない。
レッドフォードが演じたフォレスト・タッカーは、根っからの自由人、というか何にもとらわれること好まないはみ出しものの男。映画の最終盤、彼はシシー・スペイセク演じるところの女性との暮らしに落ち着いたかに見えたが、ある日、ソファーでうたた寝する彼女に「買い物にいくが、何か欲しいものないか」と尋ね、そのまま街へ出かけて銀行強盗をしかける。そこで映画は終了するのだが、ちょっとそこは演出が過ぎた感じ。
ただ、タッカーのはみだし者、さすらい人ぶりはよく描かれていて、それはひょっとしたらレッドフォードがこれまで多く映画の中で見せてきた姿をここでもまた、最後の最後にスクリーンで見せつけたと理解した方がいいのかもしれない。
ずいぶん昔になるが、レッドフォードにある日本企業のCMへの出演を依頼したとき、彼の側からの返答はそのCMのディレクター(監督)を自分にやらせてくれるのであれば仕事を引き受けてもいいという内容だった。思いがけない返答に、我々やスポンサーはこれはきっと彼のサイドの断りの方便だろうと考え、彼のCMへの出演を諦めたことがあった。
そして間もなく、彼は自らが初監督した映画「普通の人々」でアカデミー監督賞を受賞する。