2019年7月30日

時給300円で人は生きていけるか

吉本の芸人たちが待遇改善を求めて起ち上がり始めているという。例の闇営業から波及した芸人たちと彼らを管理する会社社長とのもめ事の延長だ。

1回の仕事のギャラが1円だったとか、一週間拘束されて仕事した報酬が一万円だったとか聞くと同情に気持は傾く。

ただ、なぜこれまで誰も本人たちが声を上げようとしてこなかったのか。こうしたきっかけがないと動き出せないのがちょっと情けない感じがする。

そもそもが会社に管理されて給料もらって、最低賃金保証されて・・・というのはあまり芸人らしくはない。社会からなんだかんだいってはみ出して、河原乞食とまではいわなくても、堅気の社会人であることに背を向けた連中が芸人だというのは、今ではおかしな発想なんだろうか。

以前は芸人を目指すということは、師匠を見つけてその弟子となって芸やその世界のしきたりを体で覚えながらやっと一人前の芸人になっていくという道筋がほとんどだったように思う。

それがいつの間にか「事務所」と呼ばれる会社の養成所を経てデビューし、マネジャーに世話を焼かれてテレビに出るのが芸人の生き方になった。吉本興業やジャニーズが代表格だ。そこには雇用主と被雇用者の関係があって、師弟関係はない。

テレビ局や制作会社なども大手の事務所を通して出演者をブッキングするのが楽で便利なので自分で新しいタレントを探して育てようとはしない。今の状況を作った最大の責任はテレビ局にあるというが僕の見立て。

ここでもまた流れがなく、水がどんよりと淀んでいたのだ。その深いところには汚泥がたまり、メタンガスが立ち上り、異臭を放っていた。それが今回のひょうんなことから水面に泡がひとつまたひとつと吹き出て、多くの人の知るところになった。