2018年9月14日

ロックは海を見にいった

瀬戸内海の離島で飼っていた犬が、先日亡くなった。

14年前に保健所で保護されていたのを両親がもらってきた牡の雑種犬である。名前はロックといった。その前に飼っていた犬の名前がゴローだったので、五の次は六ということでのシンプルな命名だった。

そのままだったら殺処分されていたかもしれない犬だが、そんなことは本人は知る由もない。それがよかった。のびのびと育てられたが、両親に引き取られるまでどこかでずいぶん人から怖い目にあわされていたのか、妙に臆病で弱虫のところがあった。台風で雷がなると、鳴き止まなかったりしたのもそのせいに違いないと思っている。

年に数回しか帰郷しないのだが、そんな犬と妙に気があった、ような気がする。

ここ数年は年をとり、白内障を患い、目があまり見えなくなっていた。昼間散歩に連れて歩いた際には、川や堀に何度も落ちかかった。地面が良く見えてなかったのだろう。足を滑らせ、首輪につなげているリースで首つり状態になった。

耳も遠くなった。食欲は最後まであったものの、最近は散歩に行きたがらなくなっていたのは、目や耳が弱ったことに加え、足も衰えてきていたからだろう。 一日中、家の中で静かに過ごすことが多くなっていた。

そのロックが先日、玄関の網戸を鼻で開けて外に出ていった。そしてその日、いつまでたっても帰って来なかった。翌日、方々を探してみると、家から200メートルほど離れた浜辺で横になって死んでいた。

家からほとんど出たがらなくなっていたのに、なぜ海辺まで行ったのかは謎だ。

そういえば彼が若かった頃、散歩で海辺へ連れて行くとうれしくてしょうがないのか、何度も横っ飛びをして喜んでいた姿を思い出す。

自分の死期を悟り、残った力をふりしぼって最後に海を見に行った、あるいは海の匂いを嗅ぎに行ったのかもしれない。そしてそこで事切れたのか。死ぬところを飼い主に見せたくなかったのか。本当のところは分からない。