総務相の諮問機関である地方財政審議会が、経済産業省などが廃止を求める自動車取得税について廃止は不適当と主張する意見書を提出した。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20121022/k10015923961000.html
自動車を購入する際にかかる自動車取得税には、元来から消費税との二重課税になっているという批判がある。
2011年度の日本国内のクルマの総販売台数は421万台で、対前年度比で15%減少している。同様に総登録車台数は、17%の減少である。自動車業界などが自動車取得税の廃止を求めているのは当然だろう。
地方財政審議会から提出された意見書は「課税の根拠が異なることから、消費税との『二重課税』という指摘は当たらず、税制のグリーン化にも逆行するものであり、新たな関連税制の姿を示すことなく廃止することは不適当だ」として廃止に反対しているのだが、それが本当の理由なのか。それとも、それが地方自治体の貴重な(ということは徴収しやすい)財源だからなのか。後者が本当の理由で、前者のねじ曲がった理屈は建前の理由に見える。そもそも地方財政審議会は広く税制について考える集団ではなく、「地方財政」についての審議会だ。
ところで、理由内でキーワード的に使われている「税制のグリーン化」という言葉に首をかしげてしまった。税を課すことでクルマの販売を抑止することができ、それが地球環境にプラスに働く・・・ということを指しているのだろうか。
クルマの走行距離を抑制するためにガソリン税を操作するのならわかるけど。車の販売を抑える政策(つまり車の生産を抑える政策)がグリーン化(地球環境保護)のために必要なら、国内海外問わず、また自動車と言わずすべての製造業の活動を抑制しなければ理屈に合わないが、日本は本当にそれでいいのか。
また「新たな関連税制の姿を示すことなく廃止することは不適当だ」という主張の論理的整合性が分からない。当初から財源確保ありきの発想自体が貧困というものだろう。
世の中は変わってきているのだから、税に対する考え方も変えて行かなければ。ただ取れるところから取るではお粗末だ。前例主義的で硬直化している。
前例主義と言えば、日本の大学も負けていない。僕はこの春から米国にいるのだけど、まったく学内の動きが分からないのは帰国後の仕事に差し支えると考え、最小限の情報を得ておくために会議資料をこちらに送ってくれるように以前頼んだことがある。
その当時の事務長が下した結論は、「これまで慣例的にそうしたことはしていないから、送らない」というものだった。前例に倣って決めればよいのであれば、管理職は必要ない。
そうした組織では過去のことを知っているかどうかが管理職に問われる能力になってしまい、本来の能力や熱意があっても、若い連中や外部から新しくやって来た人たちは仕事がしずらい雰囲気と環境ができあがる。変革を謳うのなら、まずはそうした前例主義の発想を根本的に変えなければいけないと思うのだが、どうだろう。