米国で「マスコミ」という言葉を目にすることはない。本来の英語ではないから当然だが、その元になったマス・コミュニケーションという言葉すら、こちらで日常的に見聞きすることはあまりない。
日本で使われているマスコミにあたるのは、こちらではジャーナリズム、ジャーナリスト、ニューズ・レポート、メディア、ニューズ・メディア、あるいはプレスという言葉だ。一方、日本ではあまり目にしない言葉がジャーナリズムであり、ジャーナリストも芸能レポーターも一緒くたで「マスコミ」と呼ばれているのが日本の現状である。
米国にはジャーナリズムを専門に教える大学や大学院のコースがたくさんある。日本ではどうだ。ほとんどない。そうしたコースを修了したからといって優れたジャーナリストになれるわけではないが、日本のようにジャーナリズムに関しての基本的な知識やトレーニングすら踏んでいない者しかおらず、すべてメディアや通信社に就職してからのOJTというのはどうだろう。
結果、日本には「ジャーナリズム」も「ジャーナリスト」も不在で、それゆえミソもクソも「マスコミ」で一括りである。「マスコミ」と呼ぶ際に、その意図している対象を明確にして適切な用語を使うことからしか日本人の意識は変わらない。意図が先にあって言葉が選ばれているのではなく、不用意に(無意識に習慣的に)言葉を使うことから意図が曖昧なまま放置されている例だ。