今朝の日経新聞、その一面トップ記事に首を傾げた。
それは企業の経営計画を取り上げ、「数年単位の中期より10年以上の長期目線で経営に取り組む企業の方が、 利益の伸び率が大きいことが分かった」と書くのだがーー。
記事の書き手は根拠として2024年にあずさ監査法人が行った調査をあげている。日本企業を将来の計画への時間軸の長さで区分けし、1年、3年、6年と答えた企業より10年以上としている企業の方が業績(過去5年間の営業利益の平均伸び率)が良かった(前者が18%、後者が52%)と述べている。
相関関係である。
そこから、10年あるいはそれ以上という長期の目標を設定することで企業は高い業績をあげられると結論づける。目標を中期ではなく長期的に持つことによって、長期的な人材教育や投資が可能になるからだと説明しているが、そうか?
説明の因果関係が逆転してるのではないか。データの範囲内で解釈を試みるなら、幸いにして過去5年間の業績(営業利益の伸び率)が好調だったからこそ、長期的な目標設定をすることが可能な経営状態にあるというのが実態ではないのか。
一方、それほど儲かっていない企業は、まずは3カ年程度の収益目標をたて、それをどうきちんと実現させるかに注力せざるを得ないのが実状だろう。
営業利益の平均伸び率が52%だという企業群が、10年前から10年先を睨んだ長期計画でずっと経営を続けてきたことを示すことができなければ、論理的整合性はない。
記事を書いた記者は、経営者には長期的な視点こそが重要であり、長期的に人材教育を施し長期的な視点で将来へ投資する企業こそが成功する、と言いたいらしい。そして、最近では中期経営計画は廃止する企業が出始めているとしている。
しかしそれは、未来を確実に予見できればの話。これから10年先に市場がどうなっているか、顧客がどこにいるか、主要な競争相手がどこか、さらには世界経済はどうなっているかなど、そうした種々のことが明確に分かってれば超長期目標でやればよい。
だが、それはムリ。もしできるのなら、どうやって予見するのか教えて欲しい。超能力? あるいは生成AIが教えてくれるとでもいうのか。
思い込みと間違った推論をもとにしたこのような記事が、どうして大新聞の一面トップを飾ってしまうのだろう。