20代、30代が中心を占める社会人大学院生が自分らをどう見ているか、あるクラスで学生らへのアンケート項目に「あなたを示す言葉として、以下のどれが最もフィットしていると思いますか? 1つだけ選択してください」という設問を入れてみた。
結果、62人中58名の回答(回答率94%)で一番多かったのが「ビジネスパーソン」の27.6%。続いて「会社員」25.9%、「ビジネスマン」20.7%、「サラリーマン」8.6%、「ビジネスウーマン」6.9%の順だった。
自分のことを「ビジネスなんたら」と答えた人の割合は、都合55.2%で半数を超えている。これって一般社会といささか、いや、かなり違っているんじゃないかという印象を受けた。
そこで、組織で働く人を示す「会社員」「サラリーマンまたはOL」「ビジネスマンまたはビジネスウーマン」「ビジネスパーソン」がメディアでどのように使われているか、ためしに朝日新聞のデータベースを用いて2000年から2021年までの年度ごとの掲載頻度の割合を調べた。
上図は結果をグラフ化したもの。黄色い部分を指す「会社員」が9割を占める。企業組織で働く者の一般的名称は、会社員と推測してよさそうだ。
ただこれでは先の学生らが自分はそうだといった「ビジネスパーソン」の姿がまったく見えないので、「会社員」を除いて図にしてみたらこうなった。
「サラリーマンまたはOL」(グレー)が8割以上を占める。続いて「ビジネスマンまたはビジネスウーマン」(オレンジ)。ここ数年になってやっと「ビジネスパーソン」(青)がちょこっと現れてきた。日本語でも看護婦を看護師に、保母さんを保育士さんにというように性差を示さない用語に呼び変える流れのなかで、ビジネスマンがビジネスパーソンと呼ばれるようになってきたのだろう。
そもそもビジネスマンって何か。オックスフォード英語辞典によれば、businessman (businesswoman, business person) とは、a man(woman, person) who works in business, especially at a high levelとある。またケンブリッジ英語辞典では、some one who works in business, usually having an important job と示されている。
本来の意味は、「実業(ビジネス)に携わる人で、特に経営者層」である。
実態とイメージの乖離だ。