3年ほど前に学生たちとゼミ合宿で中国の深圳を訪れた折、現地のBYD(EVの大手企業)のショールームを見る機会があり、その時まず思ったのは製品(EVカー)のバリエーションの多さだった。今思えば、そこに彼らの並々ならぬ本気度が現れていたのだと気づく。
日本の公共交通機関でエコカーの導入が急速化しているが、その中核を占めているのがその中国BYD製のEVバスである。
日本は、経済産業省が先導してEVバスではなく水素バスの開発に舵を切ってきた。バス製造メーカー各社は開発を急いでいるようだが、実現できていない。結果、戦略が完全に裏目に出た。
経産省が2017年に説明した水素基本戦略では、2020年までに100台、30年までに1200台程度の導入とある。水素は燃料充填の時間が短くて済み、航続距離が長い点が優位だと説明されていた。
しかし、水素は調達コストが高く、燃料供給のインフラ整備にも時間を要するなど、EVの充電設備設置の方が現時点ではコスト面でも時間の面でも優れている。
結果、水素バスは思わく倒れとなり、世界中で中国メーカー製のEVバスが席巻している現状になった。わが国においてもそうだ。
技術力の差というより、発想力(長期的な戦略思考)の差の表れの典型例だ。