2022年7月30日

原動力の持ち方

先週、本年度上半期(第167回)の芥川賞および直木賞が決定した。芥川賞は高瀬隼子さんの『おいしいごはんが食べられますように』(群像1月号)だ。

 
その受賞作はまだ読んでいないが、来週あたり届くはずの月刊「文藝春秋」9月号で読めると思っている。

34歳の勤め人(事務職)である高瀬さんの受賞会見を見た。とても落ち着いていて、きちんとした方だ。小説執筆の原動力は「むかつき」だという。もちろん、単にむかついた感情の発露として小説を書いているのではなく、こうした言い方をしている。

むかつきからスタートしているが、「これってむかつくよね」という愚痴だけで終わりたくない。このむかつきにはこんな理由もある、こんな考え方の人もいる、と受け取ってもらえたら。
とても分かりやすくて納得感がある。正直な意見だと思う。

最近の風潮として、ムカつきや怒りの気持を表に出すことは、とりわけ若い連中にとっては恥ずかしいことだったり、みっともないことになっているように感じていた。

それを受けて、どうやって怒らない気持ちを持つかについてコツを語った本なんかがベストセラーになっていた。

でもそれって、つまんない我慢を自分に強いているようで違和感があった。

だから、むかつくことからスタートして小説を書いている高瀬さんには大きな拍手を送りたいと思っている。

そういえば、前回(第167回)芥川賞を『ブラックボックス』で受賞した砂川文次さんは、受賞会見でこんなスピーチをした。

海の向こうで戦争が起こっていて! くそみたいな政治家がたくさんいて! そういうものに怒りを感じながら書いていたような気もしますし、そうじゃない気もします。よく聞かれるんですけど、怒ってない気持ちがないわけないじゃないっすかあ! っという気持ちです。

そのほかにも、壇上で国際情勢や政治への怒りを絶叫した。

とみにわれわれの日常から真っ当な怒りやムカつきが(少なくとも表面では)消し去られているなか、表現者が正当な怒りをこうしたストレートな形で口にするのを見てほっとする。