タレントだった中居正広を巡る性暴力一連の問題で、フジテレビは同社の前社長と元専務だった二人対し計50億円の損害賠償を求めて提訴した。
50億円の根拠は、今年6月末までに被った損害額の総額が約453億円だったことにあるとしている。そうであれば、損害賠償請求額は今後のさらなる影響を加味して500億円ほどにしなくては理屈が立たない。
個人として支払えるかどうかではない。彼ら経営者は、経営責任を問われ損害賠償請求されたときに備えて専用の保険(役員賠償責任保険)に加入しているはずである。しかも、掛け金は企業持ちで。
見方によれば「マッチポンプ」みたいな感じだけどね。いや、もう経営者ではないから役員賠償責任保険の対象にはならないか。
すでにフジの親会社であるフジ・メディア・ホールディングスに対しては旧現経営陣に対して230億円あまりの賠償を求める株主代表訴訟が起こされている。一方、フジテレビに対しては株主代表訴訟が起こされないので、会社が原告となって提訴したのかね。
経営責任という観点から言えば、訴えの理由が「適切な対応を怠ったこと」なら、他の役員の責任も問われるべきだろう。そのあたりが釈然としない。
フジの件については、以前にも書いたかもしれないが、辣腕の番組プロデューサーだったことと組織の経営者としての能力は別だということ。そんな当たり前の考えが、この会社にはなかった。
言葉を換えれば、そうした当たり前の経営常識すらなくても、日本のテレビ局は成り立っているという事実に驚く。しかも上場企業ときている。
これもまた、新規参入がない規制業種の典型的腐敗の一例である。