皇族のお嬢さんが結婚し、早々に二人でニューヨークへ渡ったとか。
人ごとながら、よかったと思う。
ニューヨークは楽しいよ。彼の方はマンハッタンにあるロースクールに通っていたらしいから、現地での生活の仕方も分かってるだろうしね。
とにかくNYではみんな勝手に、自由に生きている。それが当たり前、それが自然に行われている。どこかの国のように、つまんないことであれこれヘンな口を挟む人はいない。いても、それは一部の特殊なヘンな人たちだから放っておけば済む。
日本を脱出して、今はさぞ清々した気分に違いない。
皇族のお嬢さんが結婚し、早々に二人でニューヨークへ渡ったとか。
人ごとながら、よかったと思う。
ニューヨークは楽しいよ。彼の方はマンハッタンにあるロースクールに通っていたらしいから、現地での生活の仕方も分かってるだろうしね。
とにかくNYではみんな勝手に、自由に生きている。それが当たり前、それが自然に行われている。どこかの国のように、つまんないことであれこれヘンな口を挟む人はいない。いても、それは一部の特殊なヘンな人たちだから放っておけば済む。
日本を脱出して、今はさぞ清々した気分に違いない。
あの『ナニワ金融道』で一世を風靡した異色の漫画家、青木雄二が『僕が最後に言い残したかったこと』(小学館)のなかでこんなことを語っているのを見つけた。
僕が思うに、間違いなくマルクスは復活してくる。多分、最初は西ヨーロッパで、その動きが出てくるでしょう。だけど、さっきも言ったように、日本で最初に復活しても不思議ではない。(中略) 非常にゆっくりと少しずつ、社会主義体制への動きが活発になるはずや。僕は多分、エコロジー関係の問題に絡んでマルクス主義の復活が始まるような気がするで。
青木がこれを語ったのは2003年のこと。斎藤幸平『人新生の「資本論」』(集英社)に先立つこと17年だ。
『リスペクト』は、「ソウルの女王」ことアレサ・フランクリンを描いた作品。3年前に亡くなったアレサをジェニファー・ハドソンが演じているが、とにかく歌唱がすごい。
牧師の娘に生まれ、教会でゴスペルとともに育ったアレサが「神」について歌い、語るとき、無神論者のぼくも一瞬、神の存在を信じたくなったほど。声のちから、歌のちからを今一度思い起こさせられた。
マーティン・ルーサー・キング・ジュニアとの交流や、60年代のアメリカの公民権運動のなかで彼が暗殺されたときのことなども紹介されているのは、BLMの流れが米国で定着してきたことの表れか。
劇中、アレサの父親(デトロイトの有力な牧師)をフォレスト・ウィッテイカーが演じていたが、彼がマーティン・ルーサー・キングJr. が殺されたあと、「多く(の黒人牧師)が彼の後がまを狙っている」と言ったのが妙に記憶に残った。
そうした黒人を巡る当時の世相も織り込みながらということなのだろうが、とにかくそうした時代変革の背景もあってか、60年代から70年代には素晴らしい音楽がたくさん作られたのが分かる。
映画のタイトルにもなった「Respect」は、元のオーティス・レディング版とはまったく印象が違うアレサ版ともいえるもの。 フリーダム♪ フリーダム♪ とシャウトするアレサのオリジナルの「Think」。そしてキャロル・キング作の「Natural Woman」など、どの歌唱も素晴らしい。
この映画では、強権的だった父親やマネージャーとして彼女を支配し続けた夫など、多くの男たちからの束縛と抑圧から一人の人間として解き放たれたいと願う一人の黒人女性が描かれている。
ひと月半ほど前になるが、国連の専門機関のひとつWIPO(世界知的所有権機関)がグローバル・イノベーション・インデックス2021年版を発表した。以下がその上位10ヵ国だ。
今年もスイスが1位。日本のお隣の韓国は5位に入っている。米国とアジアからランクインした韓国とシンガポールを除いた7ヵ国は、すべて欧州勢だ。中国は12位。日本はその後塵を拝して13位となっている。
https://www.wipo.int/pressroom/ja/articles/2021/article_0008.html |
このランキングがどれだけのことを語っているかという点はあるが、どうも日本は「イノベーション、イノベーション」と誰も彼もが叫ぶ割に、肝心のイノベーションが生まれていない。一体、何が問題なんだろう。
明治維新から150年経っても日本人にタキシードが似合わないように、イノベーションも本来的に日本人に似合わないのか。
『文藝春秋』の巻頭随筆に、「漫画家の母を見つめて」と題された文章が掲載されていた。筆者は、漫画家のヤマザキマリの息子だ。仕事はフリーランスカメラマンとなっている。
ヤマザキが、黒澤明が旧ソ連で制作した映画『デルス・ウザーラ』(1975年公開)に感動して息子にデルスと名付けたと読んだことがある。いい名前だ。
その彼が、母であるヤマザキマリと義理の父のベッピの間で両者を眺め、そのなかから忙しさなどにへこたれず仕事に邁進する母への尊敬の思いを書いている。
何と言っても掲載誌が文藝春秋だから、原稿はおそらくヤマザキマリが事前に読んでチェックしたのかどうかなどと妙なことを気にしながら読んだが、素直な文章は母親譲りなんだろう。
苦労人で、そして才能豊かな母親としてブレイディみかこも忘れてはいけない。「ブルー」という単語はどんな感情を意味するか、という国語の先生の質問に間違った答えを書いてしまったあと、ノートの右隅に「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」と落書きした彼女の息子もきっと面白い書き手になると思っている。
またぞろ、ヘンなカタカナ言葉を新聞などで目にするようになった。<リスキリング>という言葉だ。技術、技能を表す英語の名詞 skill がもとになっている。
新聞などで「リスキリング(学び直し)」と書かれているが、どうして「学び直し」じゃダメなのか。
その例としてよく紹介されるのが、米アマゾンの事例だ。同社は、2025年までに米アマゾンの従業員10万人に対しリスキリングすると発表した。一人当たり約75万円の教育投資を行うことで、非技術系人材を技術職に移行させる「アマゾン・テクニカル・アカデミー」、IT系エンジニアがAI等の高度スキルを獲得するための「マシン・ラーニング・ユニバーシティ」などを実施するとしている。
米アマゾン一社だけでも750億円の金が動くわけだから、それを目当てにリスキリングの旗を振り始めた有象無象が現れるわけだ。
日本では、日立製作所が国内グループ企業の全社員約16万人を対象にDX基礎教育を実施すると発表している。
教育関連企業やコンサルティング会社を中心に、「社長さん! リスキリングに乗り遅れてますよ、おたく」といったセールス・トークが方々でなされているのだろうが、何がどうなればリスキリングとやらが「できた」状態になるのか何も語られておらず、さっぱり分からないのが現状だ。
リスキリングを触れ回っている連中は、どうも「オオカミが来た!」と叫び、ナイーブな日本人を惑わしているだけのように見える。
企業にとって大切なことは、そうした流言飛語と見紛う扇動に容易に乗せられないこと。360度の情報を集めて状況を判断し、自分の頭で何をやるべきか考えること。それができない人たちは、またしてもカモにされて終わるだけである。
だいたいが、事情通を気取ってこうしたカタカナ言葉を振り回す連中にろくな奴はいない。
リスキリング(学び直し)に乗せられようとしている経営者は、まずはリシンキング(考え直し)した方がよいと思うよ、ほんと。
衆院選の結果、465人の当選者が決定した。それら議員の男女比率は、男性82%に対して女性は18%。年代で見ると、70〜80歳台がまだ9%いる一方で、20〜30歳台はわずか5%しかいない。20代で当選した候補は一人だけだった。
そんな今回の選挙結果を受け、経団連の会長(住友化学社長)は自民党の絶対安定と政策の継続を歓迎したとか。日本の経済界は表層ではいろいろ言っても、結局は社会の変革など何も求めていないのが分かる。
先週のこと、地下鉄東西線の大手町駅に「行幸地下ワクチン接種会場はこちら」という表示を持って立っている人がいた。40代半ばくらいの男性で、首から都職員のIDカードをぶら下げている。
何だろ?と思い、それってどこにあるんですか?と訪ねると、丸の内側の地下一帯だという。地下鉄大手町駅は八重洲口だから、東京駅の反対側だ。そこに現在大規模接種会場を設置し、いまなら予約なしでワクチン接種を受けられるという。
僕自身は接種済みなので直接の関係はないが、横浜市に住んでいる学生で自治体による接種をまだ受けられていないと言っていた学生のことを思い出した。なぜ彼が予約をまだ取れないのかよく分からないところがあるのだが、いずれにせよ未接種のままでは周囲にも迷惑をかけることになる。
そこで、会場表示のプラカードを持って立っている都職員に、都外の人間でも受けられるのか尋ねたところ、都内在住か、あるいは都内に勤務じゃないとダメだという。じゃあ、都内の大学に通学している学生はどうなのか聞いたら「さあ」と。分からないらしい。
当然、その場で都庁に電話を入れるなりして確認してくれると思ったら、あっさり「ホームページかなにかで調べてください」と言われてしまった。
大勢の市民が行き交うところにプラカード持って立ってるのだから、もともとそのくらいの情報は持っているのが当然だと思うのだけど。
「自分で調べて」と言うのなら、40男が立っている必要はない。東京都職員の給料は高いんだから。学生バイトに任せなさい。
時折雨が降った日曜日だった。昼過ぎに投票会場になっている近くの小学校に行くと、思いもよらず長蛇の列。
「最後尾はこちら」のプラカードを持っている女性に、どのくらいかかるか訊いてみたら20分ほどだろうとの返答。会場の体育館から学校の門まで投票に訪れた人たちがずーと並んでいた。
何か読み物を持って来ればよかったと思ったこともあって、出直すことにした。そして夕方、雨が止んだのを見て、再度投票所に出かけた。列の様子は昼間とほぼ同じ、長蛇の列である。
こんなの初めてだが、それだけ有権者が高い投票意識を持っているのなら結構なことと自分に言い聞かせた。
夜8時から開票が始まり、テレビ局はどこも開票速報を報じる選挙特番を流している。なかでも面白いのが、爆笑問題の太田が政治家とやり取りしていたTBSの番組だ。
自民党の二階前幹事長に「人相が悪いんですけど怒ってますか?」と切り込み、「いつまで政治家続けるつもりですか?」と突っ込みをかまし、二階を「お前失礼だよ!」と怒らせてたので、おもわず笑ってしまった。
テレビの報道番組で、経済学者の野口悠紀雄さんが日本はもう先進国ではなく、衰退途上国だと語っていた。僕自身、10年前の3・11以来ずっと感じていたことだ。各種のデータもそのことを示している。
たとえば経済成長率、平均給与の伸び率、株価、国の競争力、科学技術分野の研究業績、ジェンダーギャップ指数など、日本の相対的位置づけは明らかに低迷を続けている。
日本は1975年の第1回からG7会議の加盟国だが、いずれG7のメンバーから外されても不思議ではない。主要先進国から衰退途上国へポジションが変わったのだから。
もともと英語もできず、原稿がなければスピーチすらできないこの国の首相がG7の会合に参加しても存在感などなかった。いてもいなくても同じだったから、他国の代表は日本がそこから消えても誰も気にしないだろう。
明日、衆議院議員総選挙が行われるが、どうやってもコップの中の嵐だ。20年後のこの国の姿を描いてみせる政治家がいない。
元FBの社員、フランシス・ホーゲンさんがCBS「60 Minutes」のインタビューに続き、米国上院の公聴会で証言した。
どういった経緯で彼女がここまで立ち上がらなければならなくなったのか知らないが、たぶん社内でいくら声を上げ自分たちの誤りを正そうとしても、埒があかなかったからだろう。
利益を最大化するためには平気でウソをつくことを厭わず、醜悪なものが目前にあるのに見ない振りをし、知らぬ存ぜぬで見え透いたきれいごとを口走るバッカーザーグ、いやザッカーバーグへの鉄槌だ。
駅前のM銀行で貸金庫を契約した。間違いなく来る大型地震への備えのひとつだ。
最初、電話で利用を申し込むと、審査があるのでまず一度来店してくれと言われた。銀行の担当者が相手の人物を<見る>らしい。面倒だが仕方なく銀行通帳と身分証明書をポケットに出向いたら、まだ学校を出たばかりと窺える若い女性行員から横柄としか思えない極めて事務的な対応を受けた。
客にとって効率的に手続きが進む事務的対応ならまだしも、時間を約束して店を訪ねたにもかかわらず何も準備しておらず、こちらが行ってから必要書類などを1つずつ揃えていく。客が目の前で待っているのだけど、眼中にないみたいだ。意識は、おそらく会社の先輩と上司に向かっている。
こうしたどこを見ているか分からない若い行員の「眼力」を試すために、わざわざ店まで客を呼びつけるなよ。
紙を1枚渡され、名前、住所、連絡先、携帯番号、勤務先名、勤務先での役職、勤務先住所などを記入させられる。で、「一週間ほどで審査結果が出ます」と告げられた。その結果が出なければ次の手続きは進まない。
10日ほどして審査に通ったという連絡があり、再度予約をして銀行の店舗を訪ねた(どうして銀行はいまだに窓口が午後3時までなのか?)。今回が正規の利用申込で、何枚もの書類に個人情報を記入させられる。すべての書類に口座開設時に届出したハンコを捺印していく。
手元の書類に判を押しながら「オタクではDXっての、何かやってるの?」 と聞いてみると、入行3年目というお客さま相談課のS林君は「本社ではいろいろ始めているみたいです」と。
「ハンコ、無くなりそう?」と尋ねると、「無理でしょうね」と彼。「こんなことお客さんにいつまでもやらせていると、そのうち誰も銀行使わなくなって、代わりに日々の決済なんかヤフーとか楽天でみんな済ますようになるよ」と言ったら、彼は「そうでしょうね(分かってるじゃない!)、でも僕が働いているうちは大丈夫だと思います(エエッ!)」だって。
入社3年目がこれだから、銀行幹部のおじさんたちの頭の中は推して知るべし。銀行はなくなっても仕方ないけど、貸金庫の中身はなくさないように。
自宅のすぐ近くに大手コンビニチェーンの店があって、重宝している。
今日は、大学からの帰宅途中にビールを買いに立ち寄った。時間は夜の11時を過ぎていた。お客さんは僕の他には若いカップルがひと組だけ。アイスクリームのケースをのぞいている。
僕が精算カウンターに行くと、奥で揚げ物を作っていたA達君が出てきた。「いらっしゃいませ」「こんばんは」といつものように挨拶をかわす。
支払いをしながら「朝9時まで?」、と以前彼から聞いたことのある仕事明けの時間を尋ねると、「はい ・・・ 実は今日はお昼からずっとなんです」
「えっ! 何時間の勤務になるの?」と訊ねたら、下を向いて指を折って数え始め「20時間です」とこちらを向いた。
「ずっと一人で?」、「はい、ワンオペです」と彼。午後1時から働き始め、翌朝の9時まで一人でコンビニのすべての業務を行うという。
その間、代わりのスタッフはいないから、食事も落ち着いてとれない。トイレもゆっくりすますことはできない。お客さんがいないときは体を休ませるようにしていると言ったけど、横になって眠ることはできないはずだ。
とにかく人手が足りないらしい。彼はアルバイトなのだが、端で見ていても真面目でよく働くから店主から都合良くシフトを頼られてしまうのかもしれない。
「大丈夫ですよ、もう慣れてますから。37時間働いたこともありますから」と話してくれた。
そうやってまで働く彼には彼の事情があるのかもしれないと思いつつも、コンビニエンス(便利)ストアってもうここまで営業しなくてもいいと思わないでいられない気持になった。そもそも労働基準法に違反している。
ある時期まで、夜間にそのコンビニに行くとオーナーらしき50代後半の男性が店番をしていたが、最近は見なくなった。 何かあったのかもしれないし、ただ疲れただけなのかもしれない。
どちらにしても、もうコンビニの24時間営業もA達君も限界にきている。なんとかならないものか。
この頃見る広告は、CMも印刷媒体もウェブもどれもこれもつまらなくなったと思ってたけど、優れたアイデアといいスタッフを集めてちゃんと作ればこんなイカシタCMができる。
夕食後、テレビのニュースを見ながら、実際は聞きながら、いつものように本を読んでいた。
『拡張するキュレーション』という新書を片手でめくり、155ページに掲載されてるバンクシーの「風船と少女」に目が行ったとき、テレビでバンクシーのまさに同じ作品がオークションで141億円の値がついたというニュース映像が画面に現れた。
この本でバンクシーのことが記されているのはこの前後の数ページで、「風船と少女」が掲載されているのはこのページのみ。
びっくり⁉️ 完璧なシンクロニシティだ。
2021年のノーベル物理学賞をプリンストン大学の真鍋淑郎博士が受賞した。
彼は大学院修了後に日本の気象庁に入ろうとしたが採用されず、アメリカの気象局に就職した。その後、アメリカで地球温暖化対策につながる気候変動の予測モデルを開発し、今回、ドイツの研究者とともにノーベル物理学賞を受賞した。
真鍋さんは、受賞後のインタビューで日本に帰りたくないと語った。「日本に戻りたくない理由の一つは、周囲に同調して生きる能力がないからです」と冗談めかしたが、その本音をわれわれは考えなければいけない。
彼は帰りたくない理由として、「日本では人々はいつも他人を邪魔しないように気遣っています。とても調和的な関係を作っています」と述べ、一方アメリカでは「自分のしたいようにできます。他人がどう感じるかにも気にする必要がありません」と比較して語った。
「米国では、他人の気持ちを気にする必要がありません。私も他人の気持ちを傷つけたくはありませんが、私は他の人のことを気にすることが得意ではない。アメリカでの暮らしは素晴らしいと思っています。おそらく、私のような研究者にとっては。好きな研究を何でもできるからです」とし、「私はまわりと協調して生きることができない。それが日本に帰りたくない理由の一つです」と明言した。
90歳になる真鍋さんは、ご自身が米国籍を取られたこともあり、もう日本については諦めているのかもしれない。
ノーベル賞を受賞した碩学のこの発言の内容だが、その後国内でこのことはほとんど議論されていないように思う。半世紀以上も海外から日本を眺めてきた科学者のこの「観察」をないがしろにすることは、日本全体がガラパゴス化をさらに深めることにつながる。
本当は、彼のこの発言はとても重いはずなんだけど。
真鍋淑郎さん |
閲覧数(サイトへのアクセス)を不当に水増しして、それで不当な広告費をだまし取る広告詐欺(「アドフラウ」と呼ばれている)の被害が以前にまして深刻化している。
今日の新聞が社会面において7段抜きで報じた。
ひとつの理由として、広告主(企業)側の姿勢が指摘されている。自分たちの広告がどういったサイト(メディア)に掲載されているかという質への関心にまして、どれだけ安い単価でより多く配信されるかを重視しているがために足下を掬われているということ。つまり、広告主側のマーケティング意識の欠如だ。
もうひとつは、そうした広告主の考えを逆手にとったネット広告業界側の不正行為の継続である。典型的な例は、とにかくアクセス数を増やすことを目的にしたボットを使った不適切で無意味なサイトへの重点的アクセスだ。
いつまで経ってもこうした不正がなくらならないだけでなく増加する要因としては、根本がおかしくなっているネット広告業界の構造的な問題がある。
2000年を過ぎてから、企業による広告媒体の利用が従来のマスメディアからネット利用へと大きく変化してきたが、そろそろ現状の問題の深刻さに気づいた広告主は本格的な再考を始めている。
コロナ感染者数の一応の減少によって緊急事態宣言が解かれ、人の動きが増してきたように思う。
酒を提供できなかった飲食店でもやっと食事と一緒に飲めるようになった。アルコール提供の自粛、閉店時間午後8時の要請、そうしたことが実際に感染拡大防止にどれだけ役に立ったのか、僕は強く疑っている。
結果オーライで、感染者数が減ったのだから良かった正しかったんじゃないかというのではダメ。
そろそろ、また旅行業界が政府に泣きつき始めた。Go To トラベルを早く再開しろと。
多くの人々の気持の中には、出かけたい、旅行したい、という思いがふつふつと甦ってきているはず。それにただ弾みを付けるためだけに、一部の企業や関係者にだけ恩恵が向かう政策に多額の税金をこれ以上流し込むべきではない。
旅行や移動を制限されていたから、人々は旅行しなかった。その制約がなくなれば、放っておいても人は旅行という行動をとるのは間違いない。それに、さらに税金で自分らを潤せというのは欲が深すぎるんじゃないの。
消費者の行動の抑制で厳しいビジネス環境で耐えることを強いられたのは、なにもホテルや旅館、交通機関だけじゃない。
音楽、演劇、ダンスなどのライブ・エンターテイメントは、公演の場をずっと失っていた。病院は、一般患者の通院や健康診断の受診数が減少して収益を確保するのが大変だったはず。
もちろん飲食店もだ。僕が贔屓にしている近くの日本料理店は、先月末で緊急事態宣言が解除されるまで、この1年間で営業できた(店を開店した)のは3週間にも満たなかったと言っていた。
ある大手ホテル&リゾートの経営者が、インバウンドが期待できないのだから早々にまたGo To をやってくれなければ困る、と恥ずかしげもなく主張してたが、自分たちのことだけでなく少し広い目で社会を見たらどうだ。
先に述べた通り、人々の気持ちの中には旅行をしたいという感情と欲求がわいているのは間違いないのだから、旅行ビジネスに携わる人たちは、ただ政府に補助金政策で後押ししてくれと訴えるのではなく、業界挙げて旅や旅行の愉しさや本来の喜びを国民に伝える工夫をしたらどうだ。
自分で頭を使うことをせず、いきなり「補助金ちょーだい」というところが、日本の旅館業界のレベルの低さを象徴している。
そのうち、業界からも国交省を中心とした政府関係者からもまた「インバウンド」の合唱が始まることだろう。
インバウンドについて、先日、作家の北方謙三さんがこう書いていた。
インバウンドとは、どういう意味なのかな。もし外国人旅行者のことを言うのなら、そのまま日本語で言った方が、はるかに分かりやすくないか。(中略)日本語で言えないので、インバウンドなどと言ったりするのだろう。インバウンドが外国人旅行者だとしたら、それほど日本人にとって不都合な人たちになるのか。いやだなあ。私は、ほんとうにいやだよ。
その通り、本当にいやだね。「インバウンド」はひとつの例で、そのほかにも流行り言葉を自分で吟味することなくそのままカタカナで表現して、括弧のなかで日本語で説明するなど、各メディアの見識のなさが目立つこの頃だ。
言語脳科学を専門とする東大の先生が、情報を記録するツールと記憶に関しての実験を行った。
学生を手帳群(手書き)、タブレット群(電子ペン入力)、スマホ群(フリック入力)の3群に分けて、記憶力の差を図ることを目的にある課題に取り組ませた。
その結果として、記憶を想起する際の脳の活動をMRIで測定してみたところ、手帳に手書きしたグループが他の2グループに比べて「豊富で深い記憶情報を取り出せる」ことが明らかになった。
その理由として上げられているのは、紙には思い出すための「手がかり」が多いということ。手帳のどのあたりのページのどのあたりの場所に書いたか、何色のボールペンで書いたか、丸で囲ったかどうかなど、空間情報や色の形の情報が記憶に残るから。
ダブレットに電子ペンを使って記録しても同様かと思うかも知れないが、タブレットではどのあたりのページといった物的な感覚はあまり備えていない。
いまだに記録にはノートと手帳が手放せない僕としては、これまでそうじゃないかと思っていたことが、まだ1つの実験結果だけだけどこうして実証されたことに少しほっとしてる。