『文藝春秋』の巻頭随筆に、「漫画家の母を見つめて」と題された文章が掲載されていた。筆者は、漫画家のヤマザキマリの息子だ。仕事はフリーランスカメラマンとなっている。
ヤマザキが、黒澤明が旧ソ連で制作した映画『デルス・ウザーラ』(1975年公開)に感動して息子にデルスと名付けたと読んだことがある。いい名前だ。
その彼が、母であるヤマザキマリと義理の父のベッピの間で両者を眺め、そのなかから忙しさなどにへこたれず仕事に邁進する母への尊敬の思いを書いている。
何と言っても掲載誌が文藝春秋だから、原稿はおそらくヤマザキマリが事前に読んでチェックしたのかどうかなどと妙なことを気にしながら読んだが、素直な文章は母親譲りなんだろう。
苦労人で、そして才能豊かな母親としてブレイディみかこも忘れてはいけない。「ブルー」という単語はどんな感情を意味するか、という国語の先生の質問に間違った答えを書いてしまったあと、ノートの右隅に「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」と落書きした彼女の息子もきっと面白い書き手になると思っている。