アマゾン・キンドルで本を読んでいるとき、指先でスクリーンをなぞり特定の箇所にマークを付けることができる。紙の本で横線を引いたり、アンダーラインを引く感覚だ。
2025-05-31
中国繁体字が表示される理由
2025-05-28
政治や行政にたかる心根は日本人共通か
関西のあるテレビ局が緊急調査と称して神戸・元町で県民100人に「兵庫県知事は辞任すべきかどうか」についてインタビューした。
結果は「続投すべき」が37人で「辞任すべき」が63人だった。調査結果と言っても代表性がなく統計的な意味はない。
だから、こんな意見もあるのか、といった参考程度なのだが、その中にちょっと気になったものがあった。
20代だという兵庫県立大学の卒業生が、「続投すべきで、僕らの世代からしたら若者への支援が充実していると感じる。自分らが直で受けた授業料の無償化が大きかったので、特に辞任っていう意見はない」とコメントしていた。
僕はこれを聞いて、実に厭な気持ちになった。
授業料を無償化してくれたことを理由に斎藤知事は辞任する必要はないと言っているが、これって国からの補助金を受け取っている農家がそれを理由に自民党の議員を支持するのと何ら変わらない。
政治にたかる心根は地方の高齢者だけでなく、20代の若者も同じなのだと改めて知る。
2025-05-27
事実か、認識か
内部告発をした元県民局長(昨年7月に自殺)の私的情報を元総務部長を通じて外部へ漏洩させた指示は、斎藤兵庫県知事(および元副知事)による可能性が高いと結論づけた調査報告書を第三者委員会が発表した。
それに対して、当事者の鉄面皮斎藤は「私としては、あらためて漏洩に関する指示はしていないという認識に変わりない」と語った。
どこまでもずる賢いなあ〜と感心する。「指示はしていない」と明言するのではなく、「指示はしていないという認識」についてしか語らない。
「指示はしていない」と言い切ったら、あとでウソがばれたときに言い訳ができない。だから、斎藤はあくまで「事実」ではなく「認識」にこだわり続ける。
つまり、これは「指示をした」という事実があることを含んでいるととれるのだが。
その時が来たら、この御仁、今度は「認識は事実に及ばず」とでも言い始めるのだろうか。
◉ 認識(にんしき):人間が何かを知覚し、理解し、判断する心の動き。つまり「主観的な理解」
◉ 事実(じじつ):人間の認識とは無関係に実際に起きている現象や状態。つまり「客観的な現実」
今回、漏洩させたと証言を変えた元総務部長は「職責として正当業務を行ったに過ぎない」と述べているが、それもまた納得できるものではない。
彼の言の変遷は事態の流れを読んで計算した結果なのだろうが、個人のプライバシーに関わる情報の漏洩はどうやっても違法なわけで、私は上(知事)から言われたからやっただけです、では済まされない。
上から言われようが、やっちゃいけないことはしなきゃいい。
この総務部長は自分が停職処分に処せられたことに対し、「審査請求及び執行停止の申し立てを行い、正当性を主張したい」ともコメントしたという。正当性という言葉に首をかしげる。
元部長さん、そうした手続きも結構だが、まずは社会の常識を頭にたたき込むことだ。
兵庫県庁から退職する職員が増えているとの報道があった。一般的に、県庁職員や市役所職員ほど定年まで辞めることがないサラリーマンはいないのだから、こうした状況はよくよくのことなんだろう。
上が逆ロールモデルばかりの組織では、そこにいては自分も腐っていってしまうと考えるのは無理もない。つくづく残念な組織である。
2025-05-24
DXのお手本
「誰がどこからいくらもらっているかが分からないと、是非も評価できない」と、議論の前提を提供することを目的に、一人の民間人が政治家の収支報告書のデータベースを構築した。https://political-finance-database.com/
政治家の名前を入れるだけで、受け取った企業献金の支払い元や金額などが分かる。企業名からの検索もできるし、寿司とか商品券といったキーワード検索も可能。一覧表で見ることができる。
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現状、国の対応はどうなっているか。報告書自体はネットで公開されてはいるが、紙をPDFにしてあるだけなので一覧性がない。これは調べる方からすると手間がかかり過ぎて致命的。
また、議員による報告書の提出先は、総務省と都道府県の選管に分かれているため、それぞれのサイトから探さなければならない。しかも、議員が複数の政治団体を持っている場合(そうしたケースが多い)、関係の団体名を調べるのだけでも大変である。
つまり形式的には政治家は報告書を提出し、それはサイト上で見ることはできるが、それらは利用価値が低く(というか、それを狙ったものとしか思えなくて)機能しているとは言いがたい。
それらへの不満や強い改善要求をもとに昨年末の政治資金規正法改正で、国もやっと2027年から報告書のデータベース化をすることが決まった。ただし、データベース化に取りかかるのが27年中だとすると、国民がそれを使えるのはもっと先ということになる。
今回、西田さんという人がデータベースを作成した。これならジャーナリストや研究者などはもちろん、一般の人たちも簡単に政治資金収支の内容を知ることができる。政治の議論が高まり、監視の目が強まると同時に本来あるべき政治に少しでも近づいていけるかもしれない。
以前ほど耳にすることはなくなったが、DX(デジタル・トランスフォーメーション)という言葉が盛んにささやかれた時期が合った。デジタルならではの特性を利用して効率性を急速に高めたり、問題解決に進むための考えだ。
DXというのであれば、これこそがそのお手本だ。
ただ、データベース構築に当たっては、もとのデータが紙(PDF)なのでそれを専用のOCRで読み込んで作成している。国や自治体は、さっさと議員の報告書の提出を紙ではなく、デジタルによるものにすべきだ。
なぜ今も政治家に紙で提出させているのか。デジタル庁は足下のそうした状況を当然知っていながら、見て見ぬふりをしてきた。政治家のご都合主義。
2025-05-23
地方自治と二元代表性について考える
ポレポレ東中野で「能登デモクラシー」を観て、自分が生まれ育ったちいさな町を思い出していた。高校を卒業してすぐそこを出てしまったので、実際にその町の行政や議会の中味が分かっていたわけではないが、なぜか「似てる」と感じたのである。
住んでた人たちの考え方や雰囲気が共通していた。典型的な地方の保守的な田舎町。役所の人間がなぜか分からないが偉そうにしていた。高校生から見ても理不尽なことが多く、不愉快だった。
今年のはじめ、ある新聞で同郷の漫画家の一条ゆかりが、その町についてこう書いていた。
この場所から逃げ出したいと思っていた。噂好きで、人と違うことをする人間を嫌う。何かについて「女だからダメ」と言う。そんな人の多い田舎が大嫌いだった。
彼女は僕より10歳ほど上だが、これを紙面で読んだとき、古い地元の仲間に会ったような気がした。
「能登デモクラシー」の舞台である穴水町は人口約7千人の小さな町。高齢化だけでなく、その高齢者の数も年々減少している。消滅が想定される町のひとつだ。
そんな町で、いや、そんな町だからか、代々の町長らは自分の利益のためのやりたい放題。 にもかかわらず、町議会の監視機能がまったく働いてない。行政と議会のあいだには惰性と忖度の関係しかない。
だが、それはこの町特有のものではない。僕の生まれた町も、あの町も、日本のどの町も似たようなものだ。その意味で、映画で描かれている穴水町は「日本の縮図」という言葉がぴったりくる。
カメラが捉えるのは、地元の80歳の男性とその家族。「このままでは町がなくなる」「何もしなければ、何も変わらない」と語り、手書きの新聞を発行しながら町の未来に警鐘を鳴らす。少しずつ理解者がふえてくるのが救いである。
この映画の監督は、地方局である石川テレビのディレクター。彼が、もとは地上波の番組として制作したものがベースになっている。
地方にあるメディアの矜恃というか、意地のようなものを感じる。今では多くの地方メディアがその存在感をなくしているなか、まだまだ頑張っているメディア人がいることが分かり少し嬉しい。
2025-05-22
2025-05-21
「コメを買ったことがない」 じゃあ、何を買ったことがあるのか
江藤拓農林水産大臣が政治資金パーティーでの演説のなかで「(私は)コメを買ったことがない。支援者がくれる。売るほどある」と調子放いて、結果、更迭された。
このおっさん、頭の悪さは一流だが、それにしても65歳になるまでどういう生き方をしてきたのだろう。
首相官邸のホームページに彼の紹介が載っていた。なんといっても大臣だからね。
おっさん、24歳で大学を卒業し、それから2年半後、衆議院議員である父親の秘書になっている。その間、なにをしてたんだろう。
今回の農水大臣の交替を、れいわ新選組の山本太郎が「マヌケな大臣が辞任しても、次のマヌケが大臣になるだけ」とコメントしていたがそうなった。
コメントと言えば、国民民主党の玉木ンタマ代表は、石破総理の脳薄い、いや農水大臣交代の決定を「判断が遅い印象は否めない」と評したが、おととい記者団に答えた話とずいぶん違う。
そのときは江藤大臣の進退問題に関して問われ、「辞めるような話ではない」と玉金玉は語っていた。
どっちやねん。
確固たる自説を持たず、その時その時で周りを見て言うことを変える嘘くささとご都合主義がこの男の本性のようだ。
2025-05-17
アメリカと中国はどちらか大きいか
本を読んでいたら、そのなかに米国と中国は国土の広さがほぼ同じだとあった。米国は日本なんかに比べて巨大な国土の国だとは思っていたが、まさか中国と同じくらい大きいとは思わなかった。
だが、調べたら確かにそうだった。
国土面積で比較すると米国の方が大きい! ただし、陸地だけの面積では中国の方がいくらかでかい。いずれにしても、どちらも巨大だ。
米国の人口は中国の4分の1以下。広大な国土に比べれば人口は少ない。豊富な自然資源もあり、豊かでいられるわけである。この国への移民を望む人々が多いのは当然だ。
そして世界最大の国土面積を持つのが、ロシア。米国の1.7倍である(日本の45倍)。ウクライナに手を出して、さらなる領土拡大なんかする必要性がまったくどこにあるのか。
2025-05-16
映画「リー・ミラー」
ケイト・ウィンスレットが『タイタニック』で世界的に知られたのは、彼女が22歳の時。それから27年。
映画の冒頭、雑誌「ヴォーグ」の元モデル、カバーガールとして一世を風靡し、その後「撮られる側」から「撮る側」に移った写真家リー・ミラーに扮するウィンスレットが、胸をはだけた姿で知り合いたちと寛ぐ姿が映る。
『タイタニック』で見せた裸体に比べれば、スタイルはかなり変わった。仕方のないことだ。それより、49歳とは思えないいい形の胸を惜しげなく晒すところに、彼女の覚悟のようなものを感じた。ウィンスレットは8年かけて、リー・ミラーについてリサーチしたという。
ミラーは従軍カメラマンとして第二次世界大戦の欧州戦線に赴き、数々のセンセーショナルな写真をものにした。大胆不敵な発想と行動。直情径行な性格でありながら、周囲への、特に虐げられる者への共感の眼差しを持つ複雑さ。とても魅力的だ。
ヒトラーが自殺し、終戦が間近になった頃、彼女はナチス強制収容所で目を覆わんばかりのホロコーストの悲惨な姿をカメラに収める。しかし、その多くは世の中には出なかった。インターネットなどない時代だ。編集者の判断で新聞や雑誌に写真が掲載されなければ、それらを人々が目にすることはない。
世の中が求めたのは、戦争の終わりと連合軍側が勝利したことを人々に伝える「希望に満ちた」写真や報道だったわけだ。それに強く苛立つミラー。
彼女はかつて、モデルやセレブリティとして輝くような光の中で生きていた。だからこそか、写真家となった彼女を引きつけたのは、人や世界の影の部分だった。
劇中、彼女が使っていたローライフレックスのカメラが気になった。カメラを顔の前に構えるのではなく、腰のレベルで構えて上からファインダーを覗いてピントやアングルを決める。そのあとは、被写体と普通に顔を合わせたままシャッターを押せるのがいい。
2025-05-13
AIでもう十分
家族に持たせていたauのケータイがなくなった。紛失した時の状況から考えて回収は不能。新機を買うことにした。料金プランを継続するためには4Gのガラケーしか選択肢はなかったが、それで十分だと考えた。
近くのauショップに行ったら、ネットで購入した方が2万円以上安いと言われ、それではとウェブで検索し手続きをしようとしたのだが、契約者である私が既にKDDIのユーザーではないことでネットで手続きが完了できない。
そこで、オンラインショップのスタッフの個別対応を申し込む。パソコン上に表示された一番早い空き時間でさえ2日後だった。スタッフ不足なのか。しかたなくその時間枠を予約し、当日は送付されてきたアクセス先URLで接続。
そこからその会社とのやり取りが始まったのだが、いやはや散々な目に遭った。KDDI指定のネット回線は途切れ途切れで(そもそも通信会社がなぜ顧客とのやり取りにわざわざネット回線を利用するのか分からない)、会話は埒があかない。
こちらの問いへの回答が一貫しておらず、突っこむとその場しのぎのテキトー 回答を寄こして逃げを打つ。挙げ句の果て、対応方法が分からないのか「今回のケースの場合、auショップ店頭でのお手続きとなります」とのたまった(別の担当者に替わってもらったら、オンラインで契約できた)。
いま思い出すだけでも腹が立つので思い出したくもないくらいだ。時間を浪費させられただけのそうした対応の相手をさせられ、つくづく考えさせられた。
詳細は措くが、それらの背景にある根本原因は主に3つ。まず、顧客対応プロセスの基本的設計がまずい。それに関連し、オペレーターの知識や技能が決定的に不足している。苦し紛れの誤案内が続く。そして組織内の連携というものがないうえに、他箇所にたらい回ししたがる無責任体質。
考えられる対応策はまず2つ。経営者の中にしっかりしたCCEO(Chief Customer Experience Office 最高顧客経験責任者)をおくこと。そしてやる気のないオペレーターに代わって顧客対応をまかなうAIを導入することである。
パソコン画面右下にしばしば出てくるオモチャのようなチャットボットでは駄目だが、ちゃんとした生成AIなら問題ない。AIに顧客の相手をさせた方が、顧客の立場からしてはるかに望ましい。
手続きの対応だから、決まっていることをその範囲で正確にやってくれればいい。記憶と計算ができればよいのだ。オペレーターの人間としての特性や裁量など必要なく、すべてアルゴリズムで処理できてしまう。しかも24時間利用可能なので、2日先の予約といったことも不要になる。
企業は人を採用する必要がなければ、教育することも勤怠管理もなんにも必要ない。経験的価値の提供が求められるような一部の分野を除いて、電話オペレーターによる顧客対応がじきに世の中からなくなっていくことは間違いないだろう。
2025-05-09
デザイン変更の目的
出張のためにフライトを予約する必要があり、JALのウェブサイトで席の検索を始めた。が、なかなか画面が切り替わらない。ネットワークのせいか。
仕方なく電話で確認しようと思い、JALカードを取り出した。電話を片手にカードの裏面を見たが・・・ない。予約センターの電話番号が記載されていない。以前のものにはあったはずだが。
それじゃあと、予約センターの番号を教えてもらうため、そこにあった株式会社JALカードの番号に電話した。自動応答メッセージの指示に沿って、カード番号16桁などを入力させられる。何ために必要なのか?と疑問に思いつつ。
電話に出たJALカードの社員に先ほど疑問に感じた件、つまりカードから予約センターの電話番号をなくした理由を訊いてみた。すると、カードのデザイン変更に伴ってはずしたという。
(株)JALカードという会社は、予約のための電話番号がない方がカードとして優れていると判断したようだ。その方がデザイン的に好ましいと考えているのだろうか。とっても不思議。
ANAカードを取り出し、見てみた。裏面には航空券予約のための0570で始まるものと03で始まる2つの電話番号がフツーに記されていた。そりゃそうだろうな。
2025-05-08
Skypeがサービスを廃止
海外にいるとき、電話はSkypeを使っていた。使い始めて13年になる。それが、今週の初めサービスが廃止されてしまった。
ネット環境さえあれば、どこにいても世界中の電話番号に簡単に電話をかけることができた。外国にいるときは常にWi-Fiルーターを携帯しているので、海外でも何のストレスもなかった。相手がスマホの電話帳に登録されてなくても、また特定の通信アプリの利用者でなくても構わない。そうした制限が何もなく使えたので便利だった。
通話料金は確か1分あたり2セントとか3セントで、ほとんどタダみたいな額。残高(Skypeクレジット)がなくなれば自動的にクレジットカードからチャージされていた。
海外を旅してまわるとき、ホテルや航空会社、レストラン、美術館などへその場その場で電話できたのはスカイプ電話があってのことだった。
またスカイプは発信元の電話番号を自由に設定することができたのが便利だったのだが、世界中で日本ともう1ヵ国だけがそれができなかった。国の通信に関する法律がそれを認めなかったのが理由。日本の総務省!
僕の場合、米国にいたときに現地で契約したので、現地で使っていたケータイ電話と同じ番号を発信元番号に設定していた。1-646-xxxxxxといったものだ。日本に帰ってきてからもそれは変わらなかったので、日本国内でどこへ電話しても米国の電話番号が発信者番号として通知されていた。
これはこれで使い方によってはメリットがあった。
だが、それも終了。馴染んだサービスが次々となくなっていくのは残念である。代わりになる通信手段を探さなければ。
2025-05-07
人を不用意に脅迫者呼ばわりしてはいけない
毎月、「かながわ県のたより」と題する県からの月報が配布される。普段そうしたものを読むことなどないのだが、GW中に古新聞をかたづけるついでにめくってみたらある記事が目に付いた。
その号の特集は「STOP! カスハラ!! かながわ宣言」。カスハラ(カスタマーハラスメント)はいけない、止めようという趣旨だが、目を通していて、あれっ!と思ったのは、そこで紹介されていたカスハラの事例だ。
さて、これのどこが<脅迫>なのだろう? わざわざ赤字で印刷されているところが<脅迫>にあたる、つまりカスハラだと指摘しているのだろうか。
何を「インターネットで流す」と言っているのかがはっきりしなければ、判断はつかない。その日の電車が遅延したこと、そのため接続先の最終便に間に合わなくてタクシーを使ったこと、その後、タクシー代を電鉄会社に請求したが「負担できない」と相手の会社から言われたこと。
これらは事実であり、そのことを誰に話そうが、ネットで書こうが問題はない。プライバシーの侵害や中傷誹謗ではない。もちろん<脅迫>などと言われる筋合いはない。
「ネットに流す」と言われるだけでビビり、そのことを「脅迫」と受け取り、「カスハラ」だと騒ぐのは馬鹿げてる。
そうしたビビり企業は、何かやましいことがあるからと見られてしまうものだ。
もしネット上の内容が事実に反していればそれを指摘し、毅然と訂正を求めればいい。内容が中傷や誹謗であれば法的措置を執る。それらは面倒だけど、いまの社会的環境の下では避けられないコストだ。
「社長もよく知ってるぞ」というこの客の発言を<脅迫>だと断じるのもどうなのか。この場合、電鉄会社が自分たちの判断が適切だと思うのであれば、そのことを会社の社長であろうが誰であろうが伝えられたって構わないだろうに。
全般的に言って、顧客からのこうした要求をスグに<脅迫>とか、<カスハラ>と決めつけたがる精神構造の方が大いに問題だ。このようなやり方で客を安易に<脅迫者>と呼ぶのは、人権上の問題すらある。
これでは、顧客と企業の良好な関係性構築など望むべくもない。
タクシー代の支払いは拒否されてしかるべきだが、電車の遅延による乗客の損害(タクシー代など)は免責されていることをきちんと説明はしたのだろうか(鉄道事業法だか鉄道営業法に定められているはず)。「タクシー代は負担できない」とただ繰り返すだけでは相手は納得せず、顧客対応としては明らかにお粗末だ。
同紙(かながわ県のたより)で県知事の黒岩裕治氏(あのバナナ黒岩だ)が、県庁内の4割がカスハラの被害にあっていると書いていた。それ、誰がどうやってそれを測定したのか? 職員が「被害を受けた」というケースを個々に調べて客観的に判断したのか。しちゃいないだろう、アンケートへの回答数をもとに言っているだけに違いない。
意図的かどうか分からないが、同紙はカスハラを特集テーマにしていながら、カスハラの定義が紙面のどこにも示されていない。
ネットで調べたたら、神奈川県は県庁サイト上でカスハラを次のように定義していた。それは、「県民等からの言動のうち、業務の性質その他の事情に照らして社会通念上許容される範囲を超えたものであって、職員の就業環境が害されるもの」。
https://www.pref.kanagawa.jp/docs/bd4/20250319.html
きわめて抽象度が高い。
参考まで東京都と厚労省のカスハラ定義を見てみる。
東京都の定義
「カスタマーハラスメントとは、①顧客等から就業者に対し、② その業務に関して行われる著しい迷惑行為であって、③就業環境を害するものをいう」
これら①から③までのすべての要素をみたすものがカスタマーハラスメント(東京都カスタマー・ハラスメント防止条例)(令和6年発令)
②について:
著しい迷惑行為とは、「暴行、脅迫その他の違法な行為又は正当な理由がない過度な要求、暴言その他の不当な行為をいう」と規定している。
③について:
「就業環境を害する」とは、顧客等による著しい迷惑行為により、人格又は尊厳を侵害されるなど、就業者が身体的又は精神的に苦痛を与えられ、就業環境が不快なものと なったため、就業者が業務を遂行する上で看過できない程度の支障が生じることをいう。
具体例として挙げられているカスハラ行為例:
・暴言・暴力・威嚇行為
・土下座の強要や人格否定的な発言
・長時間の拘束や同内容の繰り返し要求
・社会通念を逸脱した過剰なサービス要求
・SNS等での誹謗中傷による従業員の精神的圧迫
厚労省の定義
厚生労働省は、「カスタマーハラスメントを明確に定義することはできません」としたうえで「顧客からのクレーム・言動のうち、当該クレーム・言動の要求の内容の妥当性に照らして、当該要求を実現するための手段・態様が態様が社会通念上不相当なものであって、当該手段・態様により、労働者の就業環境が害されるもの」がカスタマーハラスメントと考えられるとしている。
いずれの定義に照らし合わせても、神奈川県庁が指摘した先の乗客の例は、脅迫やカスハラには該当しないことが分かる。
神奈川県の知事室は、県内442万世帯にこうした問題のある記事を掲載した「県のたより」を配布し、県民を「牽制」しているつもりなのだろうが、これは大いなる税金のムダ使いとしか思えない。
そういえば、こんなことがあった。2023年10月、東京23区のある区で区立小学校の改築計画を巡って区役所が地域住民に対して説明会を開いた。その際、住民からの質問や要望が途切れることなく出て、会議がずいぶん長引いた。後日、そのことを区の幹部が「カスハラ」とほのめかす発言をした。
役所は、とにかく「自分たちが迷惑」と感じたことはカスハラにしてしまいたいようだ。
2025-05-06
何を学ぶか、どう学ぶか
「リスキリング」という、最近メディアでときおり目にする意味曖昧な用語についてビジネスマン(この場合、女性も含む)に訊いてみた。問いは、
「リスキリング」に関心はありますか、ありませんか? 関心をお持ちの場合は、どういったリスキリングに取り組みたいと思っていますか?
である。
回答者100人の中で「関心がある」と答えたのは約1割。残り9割は「関心はない」だった。後者の方が多いだろうと推測していたが、これほど差が大きいとは思ってなかった。
「関心がある」とする人たちが、では何に取り組みたいと思っているかと言えば、「語学」、「英語」(これも語学だが)、「プログラミング」 、「投資」、「お金に関係すること」、「資格取得」、「専門知識」、「新しい知識」、「業務に関係すること」、「楽器」。
どう捉えるかだが、これらの中でビジネスマンのスキルに関するものは、語学とプログラミングくらいで、あとは漠然と「何か学ばなくちゃ」という自分の中の問題意識や趣味に近いものだ。
これが現状のよう。
2025-05-03
さて日本人は、どこまで無感覚でいられるか
5月2日付のロンドン発の記事だが、アイルランドのデータ監視機関であるデータ保護委員会(DPC)は、欧州連合(EU)の一般データ保護規則(GDPR)に違反したとしてTikTokに5億3,000万ユーロ(約870億円)の罰金を科した。
https://www.theguardian.com/technology/2025/may/02/tiktok-fined-530m-for-failing-to-protect-user-data-from-chinese-state
この罰金はEUがGDPRを施行してから最大級の金額と言われている。
なぜアイルランドかというと、ダブリンに本拠地を置くDPCが欧州経済領域(EEA:EU加盟27カ国に加え、アイスランド、リヒテンシュタイン、ノルウェーを含む)におけるTikTokの規制を担っているからであり、今回、TikTokがユーザーの個人データを不適切に中国に移転していたと判断したのだ。
TikTokは「中国政府から欧州ユーザーのデータ提供要求を受けたことはなく、提供したこともない」と主張しているが、アイルランド当局によればTikTokは最近になって一部データが中国国内のサーバーに保存されていたことを認めている。
EUがGDPR(General Data Protection Regulation)を施行したのは2018年5月だから、すでに7年前になる。EU域内のすべての個人に対するデータ保護とプライバシーの強化を目的としたもので、規制内容は日本はもちろん、米国などよりはるかに厳しい。
GDPRが適用されているEU域内ですらこうなのだから、データ保護やプライバシー規制について法規制対策が現況に追いついていないわが国ではどうなのか。
TikTok利用者のデータは、ほぼ間違いなく中国に流れているとみていいだろう。そんなこと自分は気にしない、という向きは勝手だが。