2023年3月3日

Google のレターと非正規雇用

グーグルの社員に、会社から「退職パッケージ」を伝えるメールが昨日送られた。

これは先般、同社のピチャイCEOが全世界で社員を12,000人削減する計画を公表したものに関係している。 

社員に届いたメールの内容は、彼らに直接的に退職を勧告するものではない。メールを読んだ者が早期に退職を申し出れば、これだけおトクだよという連絡(勧奨)である。

その内容は、さすがグーグルというか、きわめて手厚い。9ヵ月分の給与積み増しなど、提示された条件は以下のようなものだ。

〇通知期間:90日間の通知期間中(契約上の通知期間を含む)、給与が支払われます。2023年3月2日から5月31日まで、通常の給与支払いサイクルに従います。 

〇退職金:2023年のモデル給与(基本給)をベースに、勤続年数1年ごとに1カ月分の基本給(ただし、勤続年数3年未満の従業員は3カ月分の基本給を受け取る)+3カ月分の追加基本給を受け取ります。

〇早期署名支払い(Early Signing Payment):さらに本日から14日以内、つまり日本時間3月16日午前7時までに本契約に署名することを選択した場合、追加の支払いを受けることができます。早期署名支払いが適用される場合、9カ月分の基本給が一括で支払われ、パッケージの一部として扱われます。

〇休暇:勤務地の休暇規定に従って、未消化の休暇に対して支払われます。

〇健康保険(Healthcare):健康保険料として32万5000円(税別)を一括で支給します。

〇再就職支援:新しい職務や異なるチャレンジのために、6カ月間の専門的な再就職支援サービスを利用することが可能です。

〇移民サポート:労働許可証や一時的な移民資格をお持ちの方にとっては、特に厳しい状況であることを私たちは理解しています。あなたやあなたの家族の入国管理に関するアドバイスやサポートを受けることができます。

〇メンタルヘルスのサポート:本人および扶養家族は、引き続き従業員支援サービスを利用することができます。(雇用の)終了から6カ月間のプログラム。

〇ボーナス:該当する場合、2022年の賞与が支給されます。その80%はすでに支給されており、残りは3月に支給される予定です。

〇セールスボーナス:該当する場合、四半期の最終日に採用された場合は、セールスボーナスの支給を受けることができます。

〇クラウドセールスボーナス:該当する場合、解雇日まで支払われる目標ボーナスの日割り計算を受けることができます。

〇 GSU(株式報酬):該当する場合、90日の通知期間中にGSUの権利確定を行う。

実に至れり尽くせり、という内容になっている。

今回のレター配布を受けて、日本のグーグルの中に組合が新たにできたらしい。雇用の継続を目的に「違法な解雇は許さない」と会社側に対して主張している。

が、メディア上の情報を読む限り、社員側に同情する気にはまったくなれない。なぜなら、まずこれは早期退職を決めた際のパッケージ(追加的ベネフィット)について連絡しているわけで、辞めろといっているのではないこと。

社内では50人ほどが出来たての労働組合に加入したらしいが、泥縄とはこのことだろう。組合が必要と考えるなら、もとから組織し活動しておくべきだ。

また彼らは、日本の労働法で定められた解雇規制を盾に会社側の行為を不法であると訴えているのも違和感が強い。外資系であることでプレミアム分がのった報酬を得ておきながら、職を失うかもしれないとなると、いきなり「ここは日本だ」というのは説得力に欠ける。

彼らには残念だが、こうしたグーグルの社員にはまったく同情も共感もできない。外資企業で稼いでる人間に一番必要なものは、どこに行っても今以上のパフォーマンスを見せてやるぜ、という自信と本物の能力だろう。

メディアを集めて記者会見をする彼らは、自分たちが「天下のグーグル」社員だと思っているからやれるわけで、別にやっちゃいけないとは言わないが、何か勘違いしていないか自分の胸に手を当てて少し考えた方がいい。 

3月2日、厚労省で

コロナをきっかけに数え切れないほどの「非正規従業員」が全国で一方的な人減らしにあったことを思い出す。「非正規」というだけで法の網から抜け落ち、企業にとっての都合のいい調整弁としてバッサバッサと首を切られた。

もちろん、グーグルのような「おいしいパッケージ」なんてなかったろう。そうした人たちは、文字通り食い詰め、住むところを失ったり、子どもが就学をつづけられなくなったりした。

本来もっと社会から目を向けられ、きちんと救われるべきはそうした人たちであることを、これを機にわれわれは確認しておきたい。