2023年3月12日

『逆転のトライアングル』

リューベン・オルストン監督の『逆転のトライアングル』には、自由奔放な意地悪さが溢れている。本年度のアカデミー賞作品賞の候補作のひとつである。

原題は「Triangle of Sadness」。額の眉間の皺がよった箇所をしめす美容・ファッション業界の用語らしい。日本語にすると「悲しみのトライアングル」か。もってまわった大仰なこの言い回しを映画タイトルに据えたところが、オルストンの意地悪さの第一歩 。

 
主人公のカップル、カールとヤヤはファッションモデルの男女で、上っ面の見せかけだけを飾った中身が限りなく空虚な世界を象徴する。

物語の展開は、パート1から3までの3幕で繰り広げられる。それぞれが「起」「承」「転」であり、最後の3分ほどで「結」をなす。パート1は主人公ふたりについてのこと、パート2は豪華客船に乗り合わせた大富豪などの俗物らと船上でのエピソード。パート3では、船が海賊に襲われ爆破され、カールとヤヤほか数名が無人島に流れ着いたあとの逆転劇となる。

映画は、登場人物のロシアの大富豪(オルガルヒ)や、武器製造会社のオーナーでこれまた大金持ちの英国人夫婦などを底意地悪くからかい、嘲っている。ここで彼らを笑うか、またどう笑うかで観ている方が試される。

最後の3分。ハッとさせられる。この展開はどこかで見たことがあるなと思ったら、1968年公開のフランクリン・シャフナー監督の「猿の惑星」(Planet of the Apes)だと気づいた。

監督のオルストンは、それをやりたくてこの映画を作ったんじゃないのかね。

この作品、笑える話題作ではあるが、作品賞はなさそう。