2015年3月7日

「農」はこれからのキーワードである

今朝のFM NACK5「木村達也 ビジネスの森」の番組ゲストは、『ホームレス農園』(河出書房新社)の著者・小島希世子さん。


彼女は、神奈川県の藤沢と自分の出身地である熊本をベースに、「農」に関する取り組みをしている。その根本は、かなりシンプルだ。彼女曰く、「おいしい野菜をみんなに食べてもらうこと」「自分の手で野菜を作ること」そして「野菜作りを通じてさまざまな学びを得ること」である。

そのため農薬も化学肥料も使わない野菜やお米を熊本の提携農家で生産してもらい、ネットを通じて販売している。 また、彼女たちは体験農園を運営し、野菜作りの技術に関して講習を定期的に行いながら収穫までサポートする。

さらに興味深いのは、ホームレスの支援団体と協力し、仕事をもとめている人たちと農地はあるが人手がなくて放棄地になっている畑をつなぐことも行っている。正しくは、その対象にはホームレスに限らず、生活支援受給者やニートといった生活困窮者が含まれている。

彼女は同書の中で、「こだわって作るほど儲からない、農家の現実」を書いている。お米などの農作物は、いくらこだわって手間暇かけて作っても消費者へ届ける前の流通段階(農協や卸、各種の小売店)で「キロいくら」で計算される。そのため、収入を得るためにはとにかく大量生産しようとするインセンティブが働き、どうしても肥料や農薬をたくさん田畑にまくことになる。結果、味や安全性を犠牲にしてしまう。

頑張っていいものを作っても、不特定多数の生産者の作物と一緒にされて流通に流されるために、その努力が正当に評価されない。最終消費者から「おいしかった」の一言も聞くことがない。作ってる野菜などが穫れすぎた場合、出荷せずに廃棄処分することで生産調整しなければ儲けがマイナスになってしまう。つくづく農業は大変な仕事だと思う。

しかし、流れは少しずつだけど変わってきているように思う。消費者だって、ただ安ければ歓迎というお客ばかりではない。農薬や肥料を使用せず、種も遺伝子操作されていない「自然な」農作物を味わいたいと考える人たちが確実に増えて来ている。それに応えるための仕組みは、まだまだ部分的だけど。


スタジオで話をしていて思ったのは、彼女は本当に畑が好きだということ。例えば、どんないやな事があっても、畑に出て仕事をしているとすっきりと忘れてしまうとか。それは、土や作物は裏切らないということを知っているから。手をかければかけるほど、それだけ土は返してくれる。だから、社会の通常ルートから外れてしまった人たちのための就農支援プログラムを考え、彼らを会社や施設ではなく田んぼや畑に連れてきたのは正解である。

今朝の一曲は、カーペンターズ「遠い思い出」。原題は、Those Good Old Dreams。彼らが1981年にリリースしたアルバム、Made in America に収められている。