2014年9月13日

顧客に聞く、顧客を観る

今朝の「木村達也 ビジネスの森」のゲストは、先週に引き続き、大阪ガス行動観察研究所所長の松波さん。

はきはきと元気で、よーくしゃべる関西のおじさん(といっても僕より年下)。学生時代は建築を専攻したという、好奇心一杯で行動観察にはうってつけのキャラクターである。


マーケティングの仕事は、いろんな事を知ることからスタートする。顧客のこと、競合のこと、世の中の動向のこと。もちろん自分たちの製品や企業のことも。そうしたミクロとマクロの環境分析のベースとなる一つがマーケティング調査によって得るさまざまな情報である。

だから当然のごとく、マーケティングの講義でもマーケティング調査について説明をする。自分自身がいくつもの業種でブランドを中心とするマーケティングの責任者を務める中でその意味と重要性は実感し、理解しているつもりだ。

だがその一方で、常にそこにある「リアリティ感」にはすっきりとは行かない感触を感じていた。正しく云えば「リアリティ感のなさ」にであるが。

それらの元は、調査会社が行う調査設計自体の信頼性や結果の分析の正確さ、妥当性もあるが、そもそも顧客への聞き取りなどで集めたデータ自体が実態にそくしたものかどうかに疑問が付きまとう。

調査主体であり、顧客から情報を得たい企業の思いとそうしたことに興味も関心もない顧客。企業はいろいろと聞きたがるが、顧客は面倒に感じる。自分を被験者の身におけばそれはしごく当たり前のことだと理解できる。

分かっていながら、時には小難しい言い回しで彼らの頭を混乱させ、ストレスを与え、投げやりな気持を増幅させる。多くの調査には、こうした課題が付きまとっている。これぞといった解決法はない。

行動観察では、通常、対象は数名と少ないが、その対象にじっくり寄り添い、深いところで彼らが意識していない行動からその奥底に秘められている意識を読み取り解釈しようとする。

行動は正直である。言葉は容易にウソをつくが、行動は裏切らない。ただし、そこで何を見、何を感じ、何を連想し、どう解釈するかは、一筋縄ではいかない。広く深い知識に加えて、そこでは相手への共感力が求められる。

松波さんは自己実現に対して他己実現という言葉を使われていたが、観察者のなかに相手の役に立ちたい、何か支援してあげたいという気持ちがなければ、観察からいい発見はできない。

行動観察はきわめて科学的であろうとする一方で、人間くさく、文学的なのである。

今朝の番組で紹介した一曲は、ニール・ダイヤモンドの "I Am... I Said" 。


数多くのヒット作をもつ彼であるが、その代表曲の一つ "Sweet Caroline"は、暗殺されたJFKの長女キャロライン・ケネディ(現駐日大使)をイメージして1969年に書かれたものだ。