図書館で手に取ったあるマーケティングの本に目を通して、「こりゃマズいな」と思った。
著者はコンサルタントを生業としている人のようだが、その論調は海外の論文の研究成果を「エビデンス」として援用することで自分の主張を次々に述べている。
興味深い記述もあるのだが、いかんせん引用元になっている研究者が偏っている。またそれらの研究は、どれも限定された状況下での調査とその結果に過ぎない。
つまり、ある特定の場所(すべて日本以外)で、特定の製品あるいはカテゴリーのみを対象として、特定の期間のみのデータを取得してそれを分析して結論づけているものだ。
社会科学の分野での学術研究なので、まあだいたいそのような制限下であることを承知の上で実施して、とにかく結論を出さなきゃ論文にできないから、仕方ないと言えば仕方ない。
だからこそ、そこに書かれていることを実務に利用しようと考えたなら注意が必要。そこでは、読み手の知恵や経験と工夫が間違いなく問われることになる。
先の経営書で気になったのは、そこだ。〇〇大学の△△教授の研究によれば、という記述を並べることで著者は自分の考えはエビデンスベース(Evidence-based)だと一貫して主張するが、明らかに過度の一般化(Over-generalization)がなされていると言わざるを得ない。
海外のスーパーマーケットの店頭でシャンプーのブランドがどのように消費者から手に取られているかというロジックと、日本国内で消費者がどのように高級車を選択、購入するに至るかというロジックの違いを思い浮かべればいいだろう。
目くらましの「エビデンスベース」には気をつけなければいけない。