ルキノ・ビスコンティが1971年に撮った映画『ベニスに死す』に出演したビョルン・アンドレセンが先日、70歳で亡くなった。
ダーク・ボガード主演のその映画に彼が出演したのは15歳の時。ビスコンティにスカウトされたらしい。
当時、彼につけられたキャッチフレーズが「世界で一番美しい少年」。ボガードが演ずるアッシェンバッハという名の老作曲家を虜にする美少年という役どころから、そう設定されたのだろう。
映画公開当時、僕はいなかの中学生。世界なんか知らない。だから、それを聞いて「へぇ〜」と思ったものだ。その後、彼は明治だか森永のチョコレートのCMにも出ていたような記憶がある。
今回、彼の死を伝える報道のなかでもその「世界一美しい」はしっかり付いて回っていた。
世界一美しいかどうかなんてまったく主観の問題なのに、当時の映画関係者の誰かがつけたそのフレーズは半世紀以上も根強く残ってたわけだ。
つくづくイメージというものの粘着性の強さに驚く。一度ついたイメージは簡単には剥がせない、剥がれないのである。
彼はそのせいかどうか、その後アルコール中毒やうつ病に悩まされたらしい。年を経ていったあとも、どこへ行っても「世界で一番美しい少年」という目で見られたら、精神がどうにかなるのは分かる気がする。

