2022年7月22日

文科省局長の有罪判決と大学ブランディング

すっかり忘れていた事件の判決を読み、当時の記憶を新たにした。

発生したのは、2018年の2月。4年前の大学入試の時期のこと。東京医科大学が、当時の文部科学省局長の息子に入試でゲタを履かせて合格させたという一件である。

そもそもの発端は、文科省が起案した「私立大学研究ブランディング事業」の募集に東京医大が選定されたくて、大学の理事長が文科省の局長に飲食の場で自分らが選ばれるための申請書の書き方を局長に教えてくれるように依頼したことから始まっている。

実に身も蓋もない話だが、さらにそれに輪を掛けたのが、その見返りとして文科省のその局長が、当時浪人中だった息子の入学を求め、便宜を受けたといういきさつだ。

私立大学の入試では、ある特定の学生の入学を優先するということはある。たとえば女性を優先するとか、地方出身者を優先するなど、多様な考えがあっていいと思う。

だが、世話になった文科省官僚の息子を見返りに合格させるのは、大学の専権事項にはならない。その元官僚は裁判期間中、自身の無実を一貫して主張していたらしいが、社会常識と照らし合わせればそれがどういうことかは明らかだろう。

この事件で皮肉だったのは、ことの発端が同省の「私立大学研究ブランディング事業」だったこと。名前を読むだけでも首を傾げて笑ってしまうような事業(*)だけど、それで名前を一気に全国に知らしめた医大理事長は立派というか阿呆というか。

* https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/shinkou/07021403/002/002/1379674.htm

文科省とそのプロジェクトに対して下心見え見えで参画を狙った医科大学。双方のトップが裏でそれぞれの利益しか考えてなかったところに問題の核心はあった。そもそもが、この官僚の浪人中の息子のためにこの事業が文科省で組まれたのかも知れないとすら思える。 

この事件があって以来、僕は初めて診察を受けるお医者さんには、少々失礼だと思いながらも問診の時に「先生は、どちらで医学を学ばれたのですか?」と聞くようにしている。

偏差値の高い医大の出身者だからといって、優秀で良い医者だとは思っていない。ただその時の彼(女)の返答の仕方は、その医師について多くを語ってくれるので大いに参考になる。