2019年9月23日

風と便り

鎌倉の川喜多映画記念館に侯孝賢(ホウ・シャオシェン)監督の『恋々風塵』を観に行く。

鎌倉駅の東口に出て、小町通りを鶴岡八幡宮方面に。普段ならさほど時間がかかる距離ではないはずなんだけど、連休なか日の日曜日とあって通りは人混みで賑わっている。時間の余裕を見込んで出てきてよかった。

 『恋々風塵』は1987年制作の映画。日本での劇場公開は1989年とクレジットされている。

1960年代の台湾、鉱山の村で兄妹のように育った2人の男女が主人公。緑あふれる台湾の自然の風景が美しい。慎ましいながらも、家族の繋がりがしっかりと保たれている村の人々の暮らしはおだやかで胸にしみてくる。

中学を卒業してともに台北に働きに出てきた2人。そのうち、彼が兵役に就き、その別れの間に2人は頻繁に手紙でやり取りをする。それが途絶え、時間が2人の間を引き裂くかのように彼女は彼を去って行く。その彼女が結婚相手として選んだのは、地元の郵便局で働く郵便配達人。

村の広場で映画の屋外上映会が開かれる。そのスクリーンが揺れ、はためく姿に風の姿が象徴的に映し出される。風がながれ、時が流れ、2人の関係も形を変えて流れて行った。

全体的にゆったりとした時間が映し出され、リリカルなアコースティックなギターの音が映像に溶け込んでいた。