2012年4月30日

個人情報の流れ

時折自宅にセールスの電話がかかってくる。新聞購読の割引サービスや安い電気料金への移転を勧誘するものだ。今の所に引っ越してから間もない頃からかかってき始めたことを考えると、電話会社が僕の名前と電話番号を「売った」のだろう。

こちらが受話器を上げると、いきなりジェーンだとかスーザンだとか自分の名前を名乗るなり、もの凄い早口でこちらに言葉を挟ませる余裕もなくサービスの内容や、それがいかにお得で今だけのチャンスなので見逃す手はないとまくし立ててくる。おそらく成功率が決して高くない電話セールスを一日に何百件もやっているのだろう。

生身のオペレータではなく、こちらが受話器を取ると、機械に喋らせる企業もある。失礼と言えば失礼だが、この場合は機械アナウンスの終わりに選択肢が与えられ、「今後コンタクトが必要でない方は、○番を押してください」とくるものが多い。一応、オプトアウトができる仕組みにしてある。

今日のニューヨークタイムズ紙に「Following the Breadcrumbs on the Data-Sharing Trail」という記事があった。Breadcrumbs はパンくずのこと。

企業から個人情報が転売され、使用されることに不快感や不安感を持つのは米国人も同様である。Natashaという名の記者が、NatawshaやNafashaという風に名前や住所を少しずつ変えて6つの雑誌の定期購読を申し込んで、どこからどこへ自分の個人情報が流れるかをトラッキングした。その結果、他の雑誌、新聞、チャリティ、大統領選の選挙事務所などからそれぞれアプローチがあった。

一般的にはプライバシーをとても大切にする米国人たちも、企業による個人情報の扱われ方には日本人ほどは注意を向けていない。おおらかと言えばおおらかだ。不用なダイレクトメールや電話は煩わしいが、そのことでの直接的な実害はないからかもしれない。

しかし、このことはいずれ企業と顧客の信頼の問題につながっていく。どれだけ顧客をハッピーにできるか、不安感をなくせるか、という競争になった時、こうした問題は決して小さな事ではなくなるはずである。