2025-03-01

大規模修繕が始まる

ひさしぶりに日本に帰国したら、斜め前に建つマンション全体が黒いネットで覆われていた。 

マンションの大規模修繕らしい。建物の周りに組まれた足場を行き来する職人たちの姿がネットを透かして見える。工事は、予定では3ヵ月かけておこなわれる。その間、なかに住んでいる人たちは、紗のかかった目隠しをされているようなもので、さぞ不快だろうと想像ししてしまう。

ところが、僕の住む集合住宅も大規模修繕に向けた話し合いが行われていて、来週あたりには管理業者の入札があるらしいことを知った。自身は部屋のオーナーではないので、何がどうなっているのかといった詳しい話が直接は届かず、知らなかった。そもそも外国にいたし。

予定だと、本年中に大規模改修の作業が始まることになりそうで、実に憂鬱な気分だ。始まると、騒音がうるさい、ホコリっぽい、洗濯物が干せない、中を覗かれる(気がする)。何と言っても部屋からの景観がなくなり、日差しが注がなくなる。ベランダに寝そべり本を読んだり酒を飲むことも出来なくなるのも辛い。

いいことは何一つ考えられない。そもそもマンションの大規模修繕ってのは、通常は外壁の洗浄と塗装が中心。つまり外面(そとづら)を塗り直すことで、建物を少しでもキレイに見せることに主眼が置かれている。歳とって顔の皺が増えたのを、これまで以上にファンデーションを厚く塗ることで皺やシミを隠すことと変わらない。

人間の体に例えるなら、その血管や神経に相当する給排水管や通信回線などを改修しなければ、日々の生活のクオリティには影響しないのだが。

外見だけの見栄えを良くすることで、マンションの資産価値の減少を保とうというのだろうが、その発想がどうにもみすぼらしくて嫌だ。そんなことが資産価値の向上に寄与するという社会の価値観がバカバカしい。

僕のように賃貸で住んでいる者にとっては、外壁がきれいになることに何も意味もない。それどころか、そのことで今払っている毎月の家賃でも引き上げられたら泣きっ面に蜂だ。

何とか計画を中止させる手立てはないものか、と考えているのだけど。